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株式会社ワークスアプリケーションズ 空間デザイン

株式会社ワークスアプリケーションズ 空間デザイン

プロジェクト概要

大手企業向けソフトウェアメーカーであるワークスアプリケーションズ(以下WAP)は、事業拡大・人員増加を背景に、社内コミュニケーションの活性化を目的にした空間デザインプロジェクトをロフトワークとバッタネイションと3社でスタートしました。

執務スペースの現状を把握するための長期リサーチから始まり、3社でディスカッションを重ねコンセプトから丁寧に作り上げていきました。ポイントは「執務スペースとは違う機能を持ち緊張とリラックスのメリハリがつく空間」「多様な働き方にフィットした個人/チームが集中できる空間」「偶発的なコミュニケーションも生み出す空間」でした。

  • 支援内容
    ・執務スペースの長期リサーチ
    ・空間コンセプト策定
    ・空間デザイン/設計
    ・インテリアデザイン
    ・照明デザイン/設計
  • プロジェクト体制
    ・クライアント:株式会社ワークスアプリケーションズ
    ・ロフトワーク プロジェクトマネージャー:棚橋弘季石川由佳子
    ・ロフトワーク クリエイティブディレクター:青木大地
    ・空間デザイン/コミュニケーション設計/インテリアディレクション:バッタネイション

プロセス/クリエイティブ

リサーチ

国内外のオフィス空間のケーススタディはもちろん、実際にWAPオフィスに出向き数ヶ月間、社員の働き方を行動観察して定性・定量的なデータを集め、WAP社員の働き方のスタイルにあったオフィス空間をデザインするためのリサーチを実施しました。

リサーチの結果、現状のオフィス空間が働くシーンに合わせたメリハリがつけにくい空間であること、そして部署やチームごとに配置された執務スペースでは、偶発的なコミュニケーションが発生しづらい状況であることがわかりました。

コンセプト策定

社員の働き方や仕事の内容が多様かつ、勤務形態もフレックスで仕事のコアタイムが様々です。当初執務スペース全体を改善するプランを描いてましたが、リサーチの結果、始業から終業まで、ワークタイム全部をカバーする空間を作ろうという発想から、より濃度が高くて短い時間でコミュニケーションが活性化できる空間と機能を作るプランへとシフトしていきました。

そこで描いたプランが、人が集まりコミュニケーションを生み出す「マグネットスポット」という考え方。執務スペースとは切り離した空間を作り、人を引き寄せるための様々な機能を持たせコミュニケーションのハブとして「バリスタ」を開発しました。

空間デザイン/設計

空間・家具撮影:岩本良介

空間デザイン、各種什器のデザインやディレクションはバッタネイションが担当。個人・チームの程よい集中とコミュニケーションが生まれるよう、余裕をもった動線設計やゾーニング、集中のグラデーションをつけるため高さをアレンジした椅子やテーブル、照明計画など細部までWAP社員の働き方に合わせて調整してもらいました。

短時間の集中したい作業や雑談のための、背の高いテーブルと椅子

ソファはリラックスを促すためあえて目線を床近くまで落とした/テーブルの脚は飛騨の木と組み木を使ったデザイン

執務スペースとはメリハリをつけるため照明照度なども細かく調整した

メンバーと振り返るプロジェクト

約1年に渡って、ワークスアプリケーショズ(以下WAP)、バッタネイション、ロフトワーク(以下LW)で伴走しながら作った新しい働き方を提案する空間「バリスタ」。

WAPでプロジェクトの舵とりを担った豊田修弘さん、「バリスタ」の運用など幅広く担当している八木寛子さん、バッタネイションの岩沢仁さん・卓さん、ロフトワークの石川由佳子が、「バリスタ」のオープンから1ヶ月経ち、改めて自分たちが創ったスペースに集まって当時を振り返りました。

社内コミュニケーションをさらに活性化させる「マグネットスポット」とは?

ワークスアプリケーションズ Partner 豊田修弘さん


── 今回のプロジェクトは、どのような背景からスタートしたんでしょうか?


豊田(WAP):
珍しいとは思うんですが、弊社は仕事中の雑談を推奨していて、ワイワイと賑わっているのが好まれる文化があるんです。社員数が少ない頃は、1フロアにすべての製品担当がいて、誰がどこに座っていてどんな仕事を担っているか把握できていました。社員同士での立ち話しや喫茶店に出て話し合うような、カジュアルなコミュニケーションも多くて。

しかし、事業が急激に大きくなって、東京オフィスに勤める社員が3000名を超えてくるようになると、そういう文化がだんだん薄まっている実感がありました。その中で、コミュニケーションのロスというコストが発生しているのでは、という課題が出てきました。組織として大きくなると、“隣”のチームであっても距離は物理的に遠くなる。そうすると、雑談による交流は必然的に少なくなってしまいますよね。


── なるほど。社員の人数が多くなったり、事業規模が拡大していく過程で社内コミュニケーションのあり方について課題を感じる企業は多いですよね。


石川(LW):
我々メンバーも、初期のヒアリングで伺っていたように、活発なコミュニケーションが生み出せる空間と仕組みを作りたいと思っていました。

中でもCEOの牧野さんや豊田さんたちが目をつけたのが「喫煙スペース」でしたよね。喫煙スペースは人を引き寄せる一種の"マグネットスポット"のような機能を持っていて、そこで生まれるコミュニケーションが仕事を進めるうえでも意外と大切な要素だったりして。そんな「喫煙スペース」をひとつのインスピレーションに、どうやったら人を惹きつける空間 ──マグネットスポットを作れるのかがプロジェクトのポイントでしたね。

豊田(WAP):そうですね。喫煙所に行くとたくさんの情報を得られたりするじゃないですか。そういう機能は昔から気になっていましたね。じゃあその機能を持った場を、タバコを吸わない人たちにも開こうとするとどんな形があるのかな?と考えていたんです。

多様な働き方にマッチさせた空間と、人を惹きつける"コーヒー"の役割

バッタネイション 代表取締役 岩沢仁さん(写真右)


── WAPのみなさんが持っていた社内コミュニケーションの課題を受けて、ロフトワークはバッタネイションのお二人とどんなアプローチから空間づくりを始めたんですか?


石川:
数ヶ月は執務エリアの使われ方や、社員同士のコミュニケーションを実際にオフィスに伺ってリサーチしました。リサーチの内容は、センシング技術を用いた、社員の行動観察と働いている人たちへのインタビューです。多様な属性の人にインタビューをしながら今の働き方の課題や、改善したいポイントを洗い出していきました。


岩沢仁(バッタネイション):
僕たちも実際にオフィスに足を運んで、各フロアを細かく観察していました。席次表をもらって、どのエリアにどんな仕事をしている人たちがいるのかを確認しながら、すべてのフロアを回っていて。その中で、各フロアが持っている印象とか、雰囲気、機能みたいなものを我々のイメージと像合わせしていく作業をしましたね。

「ここは会話が多いエリアだ」とか「ここは黙々と作業をする人が集まるエリアだ」とか、フロアごとに働き方が全然違っていたので、今回作る空間の要素になりそうなポイントを抽出していきました。

ロフトワーク クリエイティブディレクター 石川由佳子


石川:
長期間に渡って働き方を観察して行く中で、いくつかの課題が顕在化してきました。

そのひとつは、もともと豊田さんたちの課題としてもあったことですが、組織やチームなど構成単位が細かく分かれて、大きくなるに連れ、横のつながりやふとした出会いから生まれるコミュニケーションが発生しづらくなっていたことです。

バッタネイション 取締役 岩沢卓さん


岩沢卓(バッタネイション):
当初私たちは、執務スペース全体をレイアウトの工夫で変えて、コミュニケーションを活性化させようとしていました。扱う製品やチームごとに分かれていた島を、人の動線やパーテーションの配置でアレンジして、マグネットスポットを意図的に執務空間の内と外の両方に生み出す設計を考えていたんです。

でもロフトワークのメンバーとリサーチを重ねていく過程で、社員の働き方や仕事の内容が多様だし、勤務形態もフレックスだから人によってコアタイムが全然違うことが分かりました。だからフロアに対してレイアウトの改善だけでは、コミュニケーションの問題は解決しないだろうなと気づいたんです。

その結果、執務スペースの外にマグネットスポットを置き、そこに人を呼び寄せることで他階の人たちとのコミュニケーションも生み出す空間をつくるプランにしました。

石川:始業から終業まで、ワークタイム全部をカバーする空間を作ろうという発想から、より濃度が高くて短い時間でコミュニケーションが活性化できる空間と機能を作ろうと、リサーチとインタビューを踏まえてだんだんシフトしていったんですよね。

「短時間」という要素にフォーカスをして、カジュアルなコミュニケーションから短時間の個人・チームで集中できる空間作り。働き方のメリハリを生み出せる空間作りをしましょうと、最終的にはプロジェクトメンバーのコンセンサスも出来ていきました。


── 執務スペースとは違う場所に、いろいろな使い方を許容する別の空間を作る。そうすることでまさに「喫煙スペース」のような人が集いコミュニケーションが生まれる空間「バリスタ」を作ったわけですね。コーヒーカウンターの役割も大きいですよね。


「バリスタ」内のコーヒーカウンターは、他フロアからも人が集まるひとつの仕掛けとなっている(撮影:岩本良介


石川:
コーヒーの役割は大きいですね!もともとはチャレンジドオペレーションセンター(COP)という、障がいをお持ちの方々が働く部署が担っていたカフェ運営の取り組みを、このスペースに組み込みました。「バリスタ」のコーヒースタンドで、美味しいコーヒーがいつでも飲めるようになったことで、人を集めるマグネットスポットとしてとても大切な役割を担っています。

チャレンジドオペレーションセンターでコーヒープログラムを担当する桝口裕美さん(写真左)、金輪里美さん(写真右)

桝口(WAP):業務を担当しているスタッフも、お店をやっている感覚でプロ意識を持って取り組んでいますし、みんなに心地よく利用してもらおうという意識が高まっていると思います。


金輪(WAP):
「バリスタ」で提供するコーヒーは、今では1日平均200人近い社員が利用しています。このコーヒープログラムを作ったのはWAPの卒業生である粕谷哲さん(現在はカフェコンサルタント)で、バリスタの世界チャンピオンでもあるんです。彼には定期的に打ち合わせをして、味など品質をしっかりチェックしています。オープンしてから800人くらいの社員にアンケートを取りましたが、9割以上の方々からコーヒーがあるおかげでリフレッシュ出来たと回答があって、良い役割になっていて嬉しいです。

"メリハリ"をつけるための空間づくりのポイント

── やはりコーヒーが良いトリガーになって、この「バリスタ」が人が集まるマグネットスポットとなっているんですね。ちなみに、カジュアルなコミュニケーションや個人/チームの集中を促す仕掛けとして、空間デザインのどんなところにこだわったんですか?


岩沢仁:
ひとつは「高さ」です。今座っているソファは低い位置にあるので、安心して長時間くつろぐことができる。ハイチェアになると逆に短時間集中するのに向いていて、ちょっとした雑談や作業をする人が使うようになっています。

「バリスタ」に入ってくる人は、今自分がここで何をするのか(集中して仕事をしたいのか/仲間と雑談したいのか...etc)が明確にあって席を選ぶはずだから、もともと執務スペースにはない機能を持たせた空間を「高さ」で差をつけて選びやすくしました。

この日の取材はゆったりと座れるソファで行った

雑談や集中した作業をするには中央の長いデスク、まとまった時間を取ってじっくり議論したい時は奥の丸テーブルが最適

椅子も用途に合わせていくつか種類を分けている


岩沢卓:
あとはメリハリをつけるために、物理的に仕切るのではなくて、調光によって執務スペースとの強弱をつけています。日中でも少し暗く落ち着いた感じですが、各所に配置した照明や手元の照明で個人個人にはしっかりとした明るさが確保される設計になっています。

レイアウトは、かなり余裕を持ったゾーニングになっています。作業をしている人の後ろから「何してるんですか?」と声をかけても、周りの人の気にならないようなゆとりを持った動線設計にしています。声のかけやすい距離感を意識して、コミュニケーションが積極的に生まれるような空間を作るように気をつけました。

ソファにもひと工夫施されており、ひざ掛けや背もたれにも気軽に座れる設計になっている


── 「バリスタ」のオープンから1ヶ月ほど経ちましたが、社員の方々の反響はいかがですか?

ワークスアプリケーションズ 人事総務Div. GOS Dept. 八木 寛子さん


八木(WAP):
社内からの反応はとても良いです。普段、特に午後からは席がほとんど埋まってしまうくらい利用されています。「バリスタ」の使われ方も様々で、休憩、雑談、作業だけでなく、部活動のように夜に集まって使っている社員もいます。

豊田:たとえばあそこでも(奥の方を指差しながら)マネジャーとチームメンバーが、ざっくばらんに開発のアイデアを雑談しているんです。

「バリスタ」を皮切りにして、だんだん社内コミュニケーションが変わっていけば良いなと思っています。今後も、頻繁なコミュニケーションが生まれる空間と仕組みを、工夫しながら引き続き作っていきたいと思っています。


── 今後も楽しみですね!今日はありがとうございました。

株式会社ワークスアプリケーションズとのパートナーシップ

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