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新たな出会いで繋ぐ、精密技術の新たな可能性

戦後は時計・カメラ・オルゴールを中心に発展し、「東洋のスイス」と言われた諏訪。近年は高精度な産業用機械や自動車関連部品といった時代に合わせた転換を図り、精密機器の製造で培った超微細加工技術と“ものづくりのDNA”が脈々と受け継がれています。

そんな諏訪地域を「技術の里」 としてブランディングし、 継続的に外部企業、人材の呼びこみを目指して諏訪デザインプロジェクトはスタートしました。

ロフトワークは諏訪デザインプロジェクトの企画運営を務め、クリエイティブ人材を中心としたプロジェクトチームを立ち上げ、諏訪市に拠点を置く事業者をサポート。

その第一弾として、「曲げる」「磨く」「光る」の3つのストーリーで伝える諏訪の技術をJapan Minute in Suwa Cityと銘打ち、地域が持つ技術力を広く伝えるためのコト作りを実施しました。

プロジェクト概要

  • 支援内容
    プロジェクト実施プランの企画・立案
    事業者公募の実施 / 実現化支援 / 事業プロモーション
  • アプローチ
    地域資源の発掘。事業者の選定
    外部専門家とともに現地に赴き、事業者を訪問。応募に繋がる事業者を発掘。市内事業者に向けて公募を行い、本プロジェクトの主体事業者となる3社を選定。

    プロジェクトチームによる事業者のプロデュース
    プロジェクトチームを形成し、事業者3社を中心に技術や製品、中間商材や素材、の新たな活用方法など可能性を探る。

    イベントを開催して諏訪ブランドの可能性を引き出す
    クリエイターやエンジニアを招きイベントを開催。諏訪市の事業者の技術や製品を軸に、新しい商品・サービスのアイデアを募る。

    Webサイトなどによる情報発信
    WebサイトやSNSなどを活用して情報を発信、事業者3社の活動、イベントの情報などプロジェクトの進行をリアルタイムに発信。
  • 体制
    ・クライアント:諏訪市 経済部 産業連携推進室
    ・寺島 和雄さん 岩波 恵一郎さん
    ・プロジェクト責任者:諏訪 光洋
    ・プロデューサー:柏木 鉄也
    ・プロジェクトマネージャー/クリエイティブディレクター:秋元 友彦
    ・クリエイティブディレクター:金指 了
    ・アシスタントディレクター:山田 麗音 / 松田 絵里
  • パートナー
    有限会社バッタ☆ネイション
    代表取締役 空間デザイナー 岩沢 仁

    合同会社シーラカンス食堂
    代表 デザイナー 小林 新也

プロジェクトのプロセス

地域資源の発掘。事業者の選定

諏訪市の文化歴史、産業の背景を理解し、深い魅力を”外部の視点”から再発見するべく、プロジェクトメンバーが諏訪市を訪問。精密工業事業者の工場、歴史文化施設を視察、活かすべき資源「モノ」「技術」は何かを調査を行いました。プロジェクトメンバーには、ブランディング・デザインなどの専門人材をアサインしています。

その後、諏訪市内業者に向けて募集要項を告知。プロジェクトの対象となるアイテム、技術を選定しました。審査は現地視察に参加したプロジェクトチームで行い、「曲げる」「光る」「磨く」をキーワードとした3事業者が決定しました。

事業者のプロデュース

公募により選出された3事業者を対象に、その技術やサービスにあわせてどのような展開をすべきかを検証。プロジェクトチームが事業者と共同で、商材改良や開発、PRツールの作成などを行いました。

それぞれの事業者は三者三様の異なるプロジェクトが展開されました。

有限会社バッタ☆ネイションの岩沢仁さん(左)、株式会社ミクロ発條の小島拓也さん(右)

事業者名:株式会社ミクロ発條 『曲げるSUWA』

髪の毛よりも細い世界最小のばね(外径0.072mm)の製造など“微細なバネ”の加工を得意とする株式会社ミクロ発條と「クリエイティブの力を使って、クライアントの思想や業務内容を体感できるコミュニケーションデザイン」をテーマに、さまざまな空間や家具・什器のデザイン、映像制作を得意とする有限会社バッタ☆ネイションの岩沢仁さんが組んだプロジェクト。目的は、すでにある技術や製品をより広め、プロモーション活動に必要となるプロダクトの開発。

バネの製造過程を見せるアート作品というアイデアから始まり、最終的には、目を凝らすと超微細バネがびっしりつまった文具に。極小バネを驚きがある形で紹介するためのプロトタイプとして「バネばかり」が完成。商談の場では既に試用がはじまっています。

株式会社ロフトワークの秋元友彦(左)、株式会社nittohの春日教宏さん(右)

事業者名:株式会社nittoh 『光るSUWA』

光学メーカーである株式会社nittohと世界的クリエイターである戸田正寿氏が開発したフレームレスで全面が均一に光り、かつ薄さと軽さを備えたLED発光板「Lightface」の新たな可能性を、株式会社ロフトワークが持つクリエイターネットワークを駆使し探っていくプロジェクト。地域産業とクリエイティブを融合させ、国内外問わずマーケットの獲得を目指すプロジェクトを中心に、行政、コミュニティ、空間に関連する業務を担当しているロフトワークの秋元が担当。

諏訪ブランドのさらなる可能性を検証するために、東京でエンジニア・クリエイター・企業担当者を対象にしたハッカソンを開催。さまざまな素材を「光る絵画」に生まれ変わらせるアートピースであるLED発光板「Lightface」を実際に見て、触れて、感じてもらい、生まれるアイデアを形にすることで、「Lightface」の新たな魅力を引き出すことに挑戦しました。過程や結果は、公式Webサイトから発信しています。

合同会社シーラカンス食堂の小林新也さん(左)、株式会社松一の松澤正明さん(右)

事業者名:株式会社松一 『磨くSUWA』

微細切削加工や磨きに関する高い技術力を持つ株式会社松一とプロダクトデザイナー兼ブランドプロデューサー小林新也さんが「磨き」の技術を使った新たなプロジェクトに挑戦。技術や製品の価値を再定義し、その技術や製品の前後にあるストーリーを織り交ぜながら情報発信に活かせるツール制作を実施。

大手企業の下請けや、OEMの仕事をメインとするため、自社事例を公開できない。という課題に対し、自社製品のプロトタイプを開発したプロジェクトは、 松一の工場や研究所の視察からはじまりました。さらに、代表の松澤さんの通う大学院での研究の見学、小林さんの地元である兵庫県小野市での刃物の職人との出会いを経て、「鏡面加工した面同士がくっつく驚き」をヒントに「くっつくキューブ」というアイデアのプロトタイプを制作しました。

諏訪ブランドの可能性を引き出すイベントを開催

諏訪ブランドのさらなる可能性を検証するために、東京で開催したLightFace ハッカソンに加え、完成したプロトタイプを渋谷ヒカリエで開催された、JAPAN BRAND FESTIVAL Exhibition-Touch-(※1)で展示出展しました。また経済産業省とロフトワークによるMORETHAN PROJECT(※2)でも、JAPAN MINUTE in Suwa Cityの取り組みを紹介しました。


※1 ジャパンブランドの未来を担うすべての人に開かれた体験型のイベント。Exhibition-Touch-は2017年3月1日(水)〜5日(日)の日程で開催されました。JAPAN BRAND FESTIVAL

※2 世界を狙う中小企業×プロデュースチームの力で「今」の日本の魅力を世界へもっと発信し、世界のマーケットへ展開を目指すプロジェクト。 More Than Project

Webサイトによる情報発信

プロジェクトの過程を発信するWebサイトを企画制作。プロジェクトの進捗のレポートだけでなく、開催したイベント情報や諏訪の魅力を独自の切り口で発信しています。 JAPAN MINUTE in Suwa City

各プロジェクトで、プロセスを記事し、情報をオープンにしながらアーカイブしています。

プロジェクトメンバーのコメントと成果

曲げるSUWA

株式会社ミクロ発條
小島 拓也さん

僕らは工業系だから、どうしても「バネを作る技術をどう見せるか?」という方向に考えが向かいますが、岩沢さんの場合「バネを面白く見せるにはどうしたらいいか?」というところからスタートする。だから、バネが自分でピョンピョン跳ねたり、形を変えたりとかそういう表現になる。

もう発想がまるっきり違い、打ち合わせではいつもとは全然違う脳が働いていました(笑)。楽しかったです。

光るSUWA

株式会社nittoh
春日 教宏さん

クリエイターのみなさんの自由な発想に、とても刺激を受けました。しかも、Lightfaceの新しい可能性を引き出すため夜を徹して作業をしてくれた方がこんなにいると知り、製造元として大変感激しています」

磨くSUWA

株式会社松一
松澤 正明さん

小林さんとのお仕事では「松一に足りないものは何か?」と根本の部分から一緒に考えはじめて、そこに小林さんの感性や情報、デザインをプラスしながら、ああしようこうしようという議論を経て、その結果アウトプットが出てくるという感じを受けました。

アウトプットに至る思考プロセスも含めて一緒に作り上げてくれるので、すごく楽しかったし、納得もできるし、勉強にもなりました。ひと粒で何度もおいしいみたいな(笑)、そんな印象を持ちました。

有限会社バッタ☆ネイション代表
岩沢 仁さん

当初、ミクロ発条さんと、僕が面白いと思う視点は違いました。「僕の面白い」を伝えるのは苦労しつつも楽しかったですね。その差を無くす為にプロトタイプした物を持っていったり、その場でスケッチすると、だんだんと「共通のモノ」が見えてきました。

「面白いかも!」の共有ができた瞬間は楽しいし嬉しいですね。違うアイデアが出てきて、面白さを重ねていけるのもプロジェクトだからこそだなと思いました。

株式会社ロフトワーク
秋元 友彦

Lightfaceは既に商材が完成されている事からも、商材をどう変えるかではなく、どう見せるか、どう生かすかということに着目していました。

その視点で見てもハッカソンを選択したのは正解だったなと感じています。

違った展開もみてみたいと感じているので、参加対象や場所などを変えてやってみたいですね。

合同会社シーラカンス食堂
小林 新也さん

ものごとの表面的な部分だけではなくて、根本の部分から「一体何が足りないんだろう?」と考えていくのは、今回に限らず僕が仕事をする上でいつも大事にしていることです。

取り組みは一旦ここで区切りとなりますが、個人的にはいつか自分の企画する商品を松一さんに具現化してもらって、それをダブルネームで売っていきたいなあと考えています。

成果

曲げるSUWA
新規プロダクト、「バネばかり」の製作。

光るSUWA
ハッカソンの開催。ハッカソン受賞チームと商品化に向けて協議中。

磨くSUWA
新規プロダクト「キューブ」の制作
他県の企業とのコラボレーション

お客様の声

諏訪市経済部 産業連携推進室
寺島 和雄

諏訪のものづくりとクリエイティブが出会うことで、化学反応を起こしたい。

そのためには、国内外のクリエイティブネットワークを持つ事業者とのコラボレーションが必要だと考え、ロフトワークを訪ねました。なんと代表の名前が諏訪さん。ここにも運命的な出会いを感じました。官民連携体制を取るためのいくつかのハードルを乗り越え、SUWAデザインプロジェクトがスタートしました。
諏訪市の魅力を知っていただくために、高度なものづくり技術のみならず、観光スポットから場末のスナックまで、ディープな世界を体験する中で、私たちが思ってもいないような新しい発想や、地元の事業者との信頼関係も生まれました。これからもワクワクするプロジェクトが待っています。

行政には人事異動があります。現在私は教育委員会へ異動となりましたが、諏訪市は、「ものづくりでひとづくり」を掲げております。またどこかで接点が生まれることを願って。大変お世話になりました。

 

諏訪市経済部 産業連携推進室
岩波 恵一郎

諏訪湖、霧ヶ峰などの自然、諏訪大社や醸造などの文化、主要産業には「東洋のスイス」と言われたものづくり。行政的には売り出すポイントがいくつもありますが、なかなか特徴ある発信ができずにいました。

諏訪のものづくりを象徴する“微細さ・精密さ”。わかる人には深く響きますが、ほとんどの人にとってはわかりづらい内容です。だからこそ、「技術の再定義」によって、自社の技術がどう相手に伝わっているのか、相手が受け取る価値はどこにあるのかを考えることはとても多くの発見がありました。

プロジェクトも単にデザイナーさんと新商品やパンフレット、ホームページを作るものではありません。大切なのはその過程でした。今回はそこをしっかりと伝えていただいたことで、それぞれ何を考え、どんな思いがぶつかっているか、そこから生まれる新たな繋がりを感じていただけると思います。今年はどんなワクワクする発見をすることができるのか。
ガンガン行きましょう!

制作チーム

このサービスに関するお問い合わせ

Tomohiko Akimoto


二本栁 友彦

ポジション
プロジェクトマネージャーとしてプロジェクトに参加。 プロジェクト全体の設計と進行管理、予算管理、クライアント(諏訪市)とのコミュニケーションを担当。クリエイターとして株式会社nittohとの企画を行った。

コメント
とにかく試行錯誤をし続けたプロジェクトでした。最初に渡されたバトンはto BにPRするためのプロダクト開発でした。でも、本当にそれで諏訪市の魅力を伝えることができるんだろうか、届けるための方法を考えずに物だけ作ることに意味があるんだろうか。 最初のハードルは、物を作ることが大前提だったところに、物を前提とせずにPRに特化しましょうという話をすることでした。結構、最後まで物をつくるということにこだわっていた感じはありましたが、結果的に踏み切ってくれた諏訪市の担当のお二人には感謝しています。結構ここで通らなければ結果が大きく違っていた気がしています。

運用の期間では、できるだけクリエイターと事業者の関係性に委ねようとしてきましたが、そこも入るべきところと、任せるべきところの見極めが難しく、最初はなかなか予定が合わなかったり、長期で日本を離れてしまうなどの状況にやきもきしたし、距離感に悩み続けていました。結果的にいい方向に向かうことはできましたが、もっとうまくやれたのではないかという後悔の念は残っていますね。

一つ確実な成果といえるのは、参加したみなさんが笑顔だったことにつきます。いろいろあったけど、やってよかった。来年開催するときは、自分たちの経験を伝えたいと言ってくれた皆さんの言葉に、最後まで悩み続けて、これは本当に正解だったのかと思い続けてきたことが、よかったんだなと思えて、ほっとしました。

ただ、まだまだやれることはあるし、改善の方向性はチームのメンバーと話ながらつくっていきたいと思っています。また、昨年はMORE THANなどの他のプロジェクトと重ねることで幅を広げてきましたが、次は諏訪市を中心とした地域で取り組む方々との連携でスケールを大きくしていくことにも取り組んでみたいです。

金指 了

クリエイティブディレクター
金指 了

ポジション
ディレクターとしてプロジェクトに参加。 Webサイトの制作、運用(コンテンツ制作等)、事業者とのコミュニケーション、クリエイターとのコラボレーション、ハッカソン運営など

コメント
初年度ということもあり、ワクワクと不安が半分ずつ、道無き道をプロジェクトメンバー全員で探りながら進んだプロジェクトでした。しかも、一緒に取り組んだ諏訪市の3つの事業者で異なるため、3つの道を行ったり来たり。だけど、目指すところは一緒。三社三様の技術、製品、アプローチとともにこの1年走って来たなと感じています。

特にロフトワークがパートナーとして実施した、株式会社nittohのLightfaceを題材にしたハッカソンは運営スタッフ、株式会社nittohの担当者とエンジニア、参加者、諏訪市という関係者全員が高い熱量を持って取り組むことができました。嬉しかったのは、ハッカソンのプレゼン前日に株式会社nittohの担当者である篠原さんがFabCafe MTRLに来ていただき、夜遅くまで参加者のサポートをしてくれたこと。その篠原さんがハッカソン当日の光景を見て「感動して泣きそう」という言葉をかけてくれたこと。また、株式会社nittohのLightFaceのエンジニア7人全員がプレゼンを聞きに来て、熱心にメモを取っていたこと。ハッカソンが終わった後も参加クリエイターと株式会社nittohの関係が続いていること。意図してデザインしたこともあるけれど、多くが関係者の「熱量」によって生み出されたこと。そこに触れることができたのはとても嬉しかったし、準備期間はとても忙しかったけど、本当によかったと思った瞬間でした。

Webサイトでのコンテンツ制作、情報発信についてはまだまだ改善の余地はあると思っています。企画やコンテンツがない中でのスタートだったこともあり、プロジェクトの進捗は可視化できましたが、もっとより多くの人が見たくなる、読みたくなるような仕掛けや企画は次年度のチャレンジポイントです。