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mitsu_suwa

代表取締役社長
諏訪 光洋

Web戦略会議セミナー 事前座談会

「第1回 ビジネス成果をあげるためのWeb戦略」 前編

ロフトワークは、パッケージソフトウェアの販売および、技術サポート、コンサルティングなどを手掛ける株式会社アシストとの共催で、「Web戦略会議」セミナーを順次開催してゆきます。

今、Webが経営の中で占める価値が大きく変化してきています。どの企業も、オフィシャルサイトを持ったり、キャンペーンをサイト上で行ったりと、実際にWebを“作る”ことは、スタンダード化しつつあります。しかし、ソーシャルメディアなど、容易に導入できるツールが増えた分、それを取捨選択することが必要とされてきています。つまりこれからは、Webを“考える”ことができる企業と、できない企業で収益や将来性に大きな差が生まれる時代なのです。

この“考える”Webへのシフトの中においては、Webを広告や宣伝などの事業部のツールとしてだけでなく、企業経営全体の中で活用し、各事業目標をいかに達成するかという視点で戦略・投資をする必要があります。しかしそのためには、一体何から考え、何をすべきなのでしょうか? その疑問に答えるべく、「Web担当者Forum」の編集長である株式会社インプレスジネスメディアの安田英久氏、株式会社アシストの中田文紀子氏、株式会社ロフトワーク 代表取締役 諏訪光洋の3者による座談会を実施(以下、敬称略)。意見交換を行いました。

そもそもWeb戦略は、可能なのか。

諏訪: まず全体として言えることは「Web戦略」という視点で戦略を作っている会社はまだまだ少ないということです。これまではマーケティング戦略の部分戦略、あるいは情報システム戦略の部分戦略として年間、あるいはシステム投資がされてきた企業がほとんどです。マーケティング戦略の一貫としてSEOを重視し効果を出している企業はありますが、企業としてコミュニケーション戦略全体をつくり、その上でWEB戦略をどうするか視点でWebへ投資をし組織をつくっている企業は限られています。

安田: 組織運営を教科書的にみると、まず「理念」があり、理念を受けて「戦略」を定め、その戦略をもとに「戦術」を考えますよね。最上位にある「理念」は、その企業が目指す方向性やたどり着きたいところといった高次概念で、最後の「戦術」は具体的な手段。で、今回テーマになっている「戦略」は、長期的なプランといったところでしょうか。ですから、「Web戦略」というのは、「企業にとってのWebの位置づけの長期的なプラン」だと言い換えることができます。しかし、そう考えると、現在のWebや企業を取り巻く状況で、そもそも長期的な視点で「Web戦略」を策定するというのは、現実的なものなのか、少し疑問が生じるのです。 というのも、Webの世界は変化が非常に早く、その変化を受けて生じる消費者の行動の変化もスピードが速いですよね。実際、3年前にはFacebookがこんなに伸びているとはだれも想像していなかったし、5年後にFacebookがどうなっているのかすら、誰にも予測できない。むしろ予測することすら無駄というか。そんな状態で、たとえば5年スパン10年スパンの長期戦略を適切に策定できるものなのでしょうか?

諏訪: そうですね、たしかにそれはそうだと思います。だからといって「戦略はいらない」となると、システムや組織への投資ができない。どちらも1年ではなく少なくとも3年くらいのスパンでは考えなくちゃいけない。Web戦略を考えるプロセスは投資のそれとイコールですよ。極端な事を言うと短期的なプロモーションとSEOという「戦術」を繰り返すことが「WEBマーケティング」になっちゃっていた企業が多くて、それでもなんとかなっていた状態が続いていたんです。Webの展開はここ10年すさまじかったし、下手な戦略をつくって大規模なシステム投資をして失敗しちゃう企業も少なく無かったから「結果として」その効果が見える短期的な戦術を繰り返す方がよかった企業も多いかもしれない。
しかし、たとえば2010年はFlashの没落年。トヨタのウェブサイトからFlashが消え、Flashを使ったプロモーションサイトがガクッと減った年です。それはただのデザインの表層的な問題ではなくて、Flashに対応しないiPhoneが勃興し、モバイルを含めたもっと大きな戦場になってきたことの現れなんですけどね。AppleTVやGoogleTVも増える。安いスレート端末も家庭に増える。ソーシャルサービスを通じてサービスや物を買う消費者は増える一方。マーケティング戦略、情報システム戦略という企業の組織ごとの戦略ではなくコミュニケーション戦略全体のもと、トリプルメディア戦略を。その下のオウンドメディア戦略、ソーシャルメディア戦略、ペイドメディア戦略を考えないと、いびつになるし投資を失敗してしまう。コミュニケーション戦略の失敗は企業の命運を左右します。

戦略がないことが当たり前になった時代に、改めて戦略を問う意味

安田: 実際のところ、「Web戦略」をちゃんと作るって難しいですよね。Webは重要なメディアですが、とはいえ、あくまでも企業がステークホルダーとコミュニケーションするためのチャンネルの1つに過ぎません。言ってみれば、「企業が何かを達成するための手段の1つとしてWebがある」状態ですよね。ですので、たとえば「マーケティング戦略の中でWebをどう活用するか」というような切り口なら理解できる。Webというツールをどう使うかの話ですからね。でも、5年後すら見えない状況で、企業戦略全体にWebをどう関わらせていくのかの道筋を明確に作るって大変ですよね。 そのためには、我々は何をすべきなんでしょうか?

諏訪: 確かにマーケティング文脈だと議論しやすい。「インバウンド」「売上」というわかりやすい指標があるし成熟もしているから。組織も出来ている。でもそれをもうひとつ上の「コミュニケーション戦略」として議論してゆくフェーズに来ているんだと思うんです。“やらなくちゃいけない”ことがソーシャルメディア中心に多い。TwitterやFacebook、業種によってはFourSquareやソーシャルCRMもあるでしょう。ここは人や組織に投資をしなくちゃいけない。一方でモバイルやテレビへの対応はシステム投資が欠かせない。自社サービスをつくる企業も増えるでしょう。どちらも3年単位で考えないと。
そこでひとつ提案できることは、まずやらなきゃいけないことや投資したい事、事業部からの「やって」っていう要望を全部リスト化することだと思うんです。これはプロジェクトポートフォリオマネジメントというCIOが担う標準的な手法の基本です。なんか聞くと当たり前に思うじゃないですか?でもこれが意外とやられてない。投資すべきプロジェクトの一覧がないんです。人とお金というリソースが有限ですから、やるべきことをまず確定できる、あるいは確定するべき役員に見せて判断してもらえることがWeb戦略を踏み出す第一歩です。

執筆者

mitsu_suwa

代表取締役社長諏訪 光洋

1971年米国サンディエゴ生まれ。
慶応大学総合政策学部(SFC)を卒業後、JapanTimes社が設立したFMラジオ局「InterFM」(FMインターウェーブ株式会社)立ち上げに参画。クリエイティブ業務を経た後、同局最初のクリエイティブディレクターへ就任。1997年渡米。School of Visual Arts Digital Arts専攻を経て、NYでデザイナーとして活動。2000年にロフトワークを起業。

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