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諏訪光洋

代表取締役社長
諏訪 光洋

ロフトワーク・日立情報共催セミナー
「不測の事態にも対応する企業のWebサイト・情報発信体制を考える」事前座談会

今回の震災で、インターネットは企業活動の報告、安否確認、支援活動など情報発信に大きく貢献しました。そして震災時、一時止まったかに見えた企業活動でしたが、オンラインで製品やサポート等の情報を次々に出して流通させるという、もうひとつの企業活動が活発化していました。

災害が大規模になるほど、企業活動が通常通り行われているのかどうかなど基本的な情報をはじめ、通信状況や物流、サービスサポート、支社や工場の状況などについて、取引先のパートナー、サービスや商品を、利用するユーザや消費者などに向けて迅速にWebで発信していかなければなりません。

座談会ではキヤノンマーケティングジャパングループの全サイトを統括するWebマスターであるキヤノンマーケティングジャパン株式会社 増井達巳氏、データセンターや企業サイト構築を支援する株式会社日立情報システムズ 小野寺和則氏、Web制作会社の株式会社ロフトワーク 諏訪光洋が、緊急時における有効な企業サイトの在り方をはじめ実際の震災時に気づいたこと、行動したことなどを振り返りました。

緊急時の情報発信は コンプライアンスがボトルネックに?

諏訪光洋(以下、諏訪): 今回の大震災では東京電力は結果的に情報発信でかなりのロスをしました。それは企業イメージ自体の失墜を、さらに助長してしまった。情報の出し方で、こんなことになってしまうのかというのが、僕の中ではすごく恐ろしいと感じています。

では、東京電力のコンプライアンスがしっかりしていなかったのでしょうか?そんなわけはない。逆にしっかりしすぎていたがために、いろんなことが後手に回ってしまったのかもしれません。天災の予測はつかないですし、あらゆることに対応することは不可能です。それでも、企業には情報を正確に発信していく義務があります。有事の際、企業からの情報発信はどうあるべきなのでしょうか?

増井達巳氏(以下、増井): 今回、弊社だけでなく、他社のWeb担当と話していて、共通しているのは、社内のコミュニケーションロスがボトルネックになるリスクがあったという点です。インフラも生きており、情報発信を行う体制も稼働していたにも関わらず、発信内容がなかなか決まらなかったり、情報発信が遅くなったりしたのは、緊急時の社内コミュニケーションがうまく訓練されていなかったことに原因があったと感じました。

諏訪: コミュニケーションと情報は、本来、その会社が出す製品よりも鮮度が重要だったりするものです。製品はサプライチェーンマネジメントの最適化によって、できるだけ早く届けようとされてきました。しかし情報は承認過程の複雑化などで、どんどん冗長化されていくという現象が見受けられます。

なぜ企業は、情報だけが鮮度が落ちやすいような対処を今までしてきたのでしょう?サプライチェーンを整えていくのと同じで、情報もできるだけ早く届けるにはどうしたらいいのかを考えるのが重要だと思います。

問題の原因は社内のコミュニケーションロスと権限委譲

小野寺和則氏(以下、小野寺): 震災の時に、当社の製品サイトは素早い対応をすることが出来ました。理由は、営業が自律的に動けた部分があったからだと思います。とにかく伝えたい情報を、気づいた者がどんどん出してゆけるようにしないと、お客様の求めているスピードに全く応えることができないと思います。

増井: 企業から出す情報が遅れる理由のひとつは、社内に権限を委ねられたライターがいないことが挙げられると思います。たとえば震災直後のお見舞いにしても、対策本部から情報が出てこないと、誰も自発的にライターとしての機能を発揮しない。これは、普段からコミュニケーション部門がライター機能より編集機能に重きを置いているために陥った落とし穴でした。

今回は、Web担当者が他社サイトなどを見ながら自発的にライター機能を果たし、お見舞い文を掲載しましたが、本来、有事の情報発信の際に先頭に立って動かなければいけない本社のコミュニケーション部門は、普段から自立的に情報発信する訓練を受けておくことが重要であることを痛感しました。

もちろん弊社もBCP(有事の際の事業継続計画)が策定されていて、シミュレーションも行っています。ただし、BCPが「有事の際にどのようなプロセスをとるか」に重点が置かれていると、プロセスに組み込まれている1人が出社できないだけで情報発信活動が止まってしまいます。重要なのは、BCP発動時のプロセスに加え、権限委譲のパターンを想定しておくことです。

緊急時の情報発信は、権限委譲プランの整備を

諏訪: コミュニケーションロスや、権限委譲に関する問題について私は緊急時における、“オプトイン(事前許諾のもと、遂行されること)”と“オプトアウト(事前許諾無しで遂行されること)”の規約を事前に決めておいたほうがいいと考えています。つまり、緊急時に掲載すべき情報があったとして、そのプロセスが社員の不在などで損なわれている場合、とにかく上げられるものはオプトアウトで上げてしまい、チェック担当が見てNGであれば、後にブロックをかけるというフローです。こうすることで、とにかく情報は出ます。Web業界の中には、オプトイン・オプトアウトの概念とともに、そういうことができる技術、ノウハウをすでに持っているところがあります。

増井: “権限の委譲”が速やかに行われることは重要ですね。弊社でも出すべき情報が多くなるのにあわせて、震災対応のポータルページを作りました。震災直後は、本来のレギュレーションに則り、時系列で情報を発信していましたが、支援情報、サポート情報、イベントの中止や計画停電の影響などが発生順にばらばら出てくると、お客さまにとっては情報が探しにくい状態になります。

そこで、情報のカテゴリ分けをすることにしましたが、今度はカテゴリの表示順位をどうするかという問題が出てくる。たとえば、義援金などの支援情報と、被災地に今必要なサポート情報や緊急速報のどちらの表示順を優先すべきかを至急決めなければなりません。平常時にはできる冷静な判断が、緊急時にはできなかったり、企業主語の判断になってしまう状況が生じ得るのです。弊社では顧客主語の指針がぶれないよう、Web担当者に被災地の視点であったり、被災地のサポートをしている現場の事業所のひとたちの目線で順位づけするよう指示しました。

また、私は今回の震災時に、時系列的に何が起こり、会社としては何をしたかの記録をとるよう指示しました。再び災害が起こったとき、デザイナーとウェブディレクターとSE、という3つカテゴリーで、今回より素早く的確な判断に基づき情報発信ができるよう課題を洗いだしておくためです。

小野寺: 緊急時におけるデータセンターの環境も再定義されそうです。我々はデータセンターのビジネスをやっているので特に顕著でしたが、この震災を機にセンターをどこに持つか、あるいは海外にも持つべきなのかというような相談はすごく増えました。実際検討に入られているお客様もいます。今回の震災をきっかけに、センターを分けて危機分散する「ディザスター・リカバリー」というソリューションも、以前は金融関係からのニーズが多かったのですが、やはり製造流通のお客様からもお問い合わせが増えています。

この震災から学んだことと今後の課題

増井: 今回、多くの企業が他社の動向を見て、情報を上げるタイミングや、お見舞い文に全面切り替えしたキービジュアルを、いつ平常時の状態に戻すのかなどのタイミングを判断していたと思います。一方で、サントリーのように震災関連情報を配信しながらも,経済活性化も大事というポリシーを決め、他社に先駆け自発的に平常時のコンテンツに戻した企業もあります。有事の際に、素早い意思決定で、先見的な動きをすればするほど、Webの価値は上がります。逆に、他社動向を見て二番手三番手でやっていけば、リスクは軽減されるかもしれませんが、Webサイトや企業の価値は一定以上に評価されることはないと思います。ですから、迅速かつ自発的に判断し、有用な情報発信できるような体制、つまり権限委譲が明確でライター機能を十分発揮できる体制があるといいなと思いますね。

小野寺: データセンターをコアビジネスとしている日立情報システムズでは、われわれが扱っているCMSというソリューションとデータセンターの融合し、いわゆるSaaSサービスとして提供していくことが今後課題となっています。そして、それは不測の事態を含め、世の中のニーズになりつつある。この機会にその対応を加速させていくべきだと感じています。

諏訪: 弊社は、業務を行うためのツール関係がほぼクラウドに乗っている状態だったこともあり、出社ができない状態でも、自宅でもかなり自由に仕事ができました。

ただ、情報発信に関しては、有事の際、企業側で何かを作りたいと思っても、どこに依頼をすればいいかがわからない。そういうとき、我々が持つWebの制作能力が生きてくるということを、適切な人に発信できなかったことは課題です。
Webが強いというのは分かったので、有事の際も積極的に企業の情報発信を支援したいと思います。おそらく企業は今回の震災で多くを学び、独自の権限で情報を出すということに少しずつ変わっていくと思いますし、良いクリエイティブがいっしょに出せればいいなと思います。

6月1日開催セミナー 不測の事態にも対応する企業のWebサイト・情報発信体制を考える

日立情報システムズとロフトワークは、6月1日「不測の事態にも対応する企業の情報発信体制を考える」を開催します。
セミナーでは、社内情報システムのクラウド化と、社内Twitterの有効活用により、緊急時のプレゼンス確認および自宅勤務を可能にした体制づくりも含めて、有事における情報発信について考えていきたいと思います。

執筆者

諏訪光洋

代表取締役社長諏訪 光洋

1971年米国サンディエゴ生まれ。
慶応大学総合政策学部(SFC)を卒業後、JapanTimes社が設立したFMラジオ局「InterFM」(FMインターウェーブ株式会社)立ち上げに参画。クリエイティブ業務を経た後、同局最初のクリエイティブディレクターへ就任。1997年渡米。School of Visual Arts Digital Arts専攻を経て、NYでデザイナーとして活動。2000年にロフトワークを起業。

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