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諏訪光洋

代表取締役社長
諏訪 光洋

60周年を迎えた東映が考える ソーシャルメディアよりも大事なこと

ソーシャルメディア抜きのマーケティングなどありえないとばかりに語られる昨今。twitterやfacebookなど、続々と登場するツールの導入への潮流に対し、冷静な目を持つ企業では自社のビジネス戦略をコンテキストにそって適切なメディアで伝えることの重要性に気付き始めています。一時ほどの力はないとはいえ、数10万人、数100万人規模の消費者に認知してもらうには、まだまだマスメディアの圧倒的な影響力を無視するわけにはいきません。その一方で、直接的なコミュニケーションを行うことができるソーシャルメディアは、コアなファンとの関係を築くことができます。

今回は、6/23に開催するセミナーを前に、今年創立60周年を迎えた映画会社、東映株式会社にて経営戦略に携わる松本拓也氏に、弊社代表取締役の諏訪光洋が今の時代をどのようにとらえ、どのような戦略を立てているのか、お話を伺いました。

「どんなメッセージを発するか」という原点に立ち戻る

諏訪光洋(以下、諏訪):世界中の映画産業がここ数年でドラスティックに変わっている状況を、どのようにとらえているのでしょうか?

松本拓也氏(以下、松本):極論を言ってしまうと、技術の歩みには流されるままについていくしかないと思っています。今の時代、映画もテレビドラマもスポンサーや関係各社との協業で制作しています。シネマコンプレックスへの移行や、ネット配信の台頭など市場の転換は起きていますが、弊社だけでイニシアチブをとって対応していけることはないんですね。

逆に言えば、東映独自のスタンスを示していかなければ、これからの時代に生き残ってはいけない。ひとつには、“より迅速なデジタル化への対応”として、関係会社のシネコンである『T-joy』でのデジタル上映環境の整備や、2010年に東京撮影所内に設立した東映デジタルセンターが上げられます。もうひとつが、映画やテレビドラマを、これからも創り続けて行くということです。今年、創立60周年の節目にあたってシンボルロゴを制作した際、そこに「“創る”チカラ」という言葉を加えたのも、東映はモノを創る会社であるというメッセージを内外に伝えるためです。東映というと、今は特撮やアニメーションで知られていますが、元々は時代劇や任侠・ヤクザ映画を作ってきた会社です。人気の仮面ライダーやプリキュアシリーズにも、そのエッセンスは含まれています。これらを60周年という節目で再び掘り起こし、内外、特に内側にいる若い人間に伝えていきたいと考えています。

ソーシャルメディア活用はやればいいというものではない

諏訪:御社ではトリプルメディアをどのように捉え、活用しているのでしょうか?

松本:振り返ってみると、結果的にヒットにつながっているのは、自分たちが心血を注いで作ったものであって、そこにソーシャルによる広がりが大きく貢献したという実感を得られるところまではいっていません。宣伝効果だけを見ると、ソーシャルよりもマスメディアの方がまだまだ効果が高い。私見ですが、ソーシャルメディアはイベントやキャンペーンへの集客効果は期待できますが、全国一律の今の映画興行の形態にはうまくマッチしていないのでは。ただ、お客様との距離が近い、単館系の興行などではソーシャルは有効だと思います。(映画専門のクーポン共同購入サイトの)「ドリパス」などで、劇場が培ってきた客層と、上映作品のイメージが合う時にクーポンが成立しているのも、わかりやすい例です。

TwitterやFacebookも、今は全体的に器に追いかけられている感じがします。情報出しのツールとして、早く遠くまで届きますが、そもそも興味がない人には届きません。ソーシャルメディアの持つコミュニケーションの価値を有効に生かして、企業価値を高めようと思うならば、拙速なプロモーション効果だけを追わず、これから濃く長い戦略が必要になると思います。一概にCMSなどのシステムにもいえることですが、目的の手段としてツールを追いかけてはいけないと思います。ツールを導入すると確かに楽です。しかし、ツールを使って何を伝えたいんだ?とまずは突き詰めなくてはいけません。目的は人任せではなく、自分たちで作らなくてはいけないのです。

諏訪:ロフトワークでも企業のオウンドメディア制作の支援をしていますが、極力運用やコンテンツ制作はお客様ご自身にお願いしています。もちろん制作のサポートはさせて頂きますが、コアなメッセージはやはりお客様自身に作りだして頂く必要があると感じています。

松本:長い目を持って会社のことを考えようという気持ちを持つ人を、内部に作ることが一番大変です。広報やオウンドメディアをやろうとしているに、常に会社目標や上層部メッセージといった後ろ盾があるわけではないと思うのです。でも、自分たちの会社を何とかしなきゃいけないと、うっかり取り憑かれるように思ってしまった人が、予算を取ったり、文章を書いたりして頑張るわけですよね。

諏訪:よい文章家を雇い、育てよというのは国内だけではなく、海外でも言われています。アメリカにプロジェクトマネジメントやCRMツールの開発・提供を行っている37signalsという会社が発行していたPDFで、人材採用において、ほとんど同スキルの2人候補がいるならばより文章に長けた人を採ると言っています。以前ならば言葉で伝えていたものが、今はテキストで書きそれをどんどん伝播させていくことに価値が生まれているからです。

松本:Facebookこそ、自分の言葉で、生きたメッセージを書かないと成り立たないものです。そもそも、広報とは自分の会社を編集することです。自社のサイトをいろんな事業部からの広告出稿で成り立っている雑誌のようなものと考えた場合、当然広告だけでは雑誌は成り立たないわけで、オリジナルのコンテンツを含めながら、全体をどう編集するか方針を考えなくてはなりません。次のステップを考えながら、企業としてどう全体のコンセンサスを取るのかを考えなくてはならないのです。

今再び求められるコンテクストの創出

諏訪:コンテクストを作ってこられた東映さんならではの深いお話ですね。

松本:実は、東映のブランドイメージはファンと一緒に作ってきたものだったりします。東映に関する本も、名画座でのリバイバル上映も、外部のファンの方にやっていただいていることで、東映側からはこれまで充分な働きかけができていなかったと思います。これからの企業は外部でコンテクストを作る人との結びつきを持たなくてはならないと感じています。手間もかかるし、効果も大きくないし…と営利部門が嫌がることを(笑)間に立ってやるのが広報なのではないでしょうか。

諏訪:今、ガートナーのBuzzwordのハイプサイクルの一番左にあるのが、「コンテクスト」です。昔は当たり前だったコンテクストが、twitterなど一過性のコミュニケーションツールの登場により、徹底的にコンテクストレスなコミュニケーションになってきました。Facebookが登場してきたように、器は今後も出てくるわけで、そこでコンテクストの重要性は強まるでしょう。

企業の持つコンテクストの視点から考えてみる

諏訪:東映のロイヤリティやお客さんとのエンゲージメントはどのように考えていますか?

松本:まずは面白いものを一生懸命作るしかない。モノを作る側として、お客さんの満足を追求していくこと。それを1個1個積み上げていくしかありません。そのために内側の意識をどう作るか。ディズニーやアップルのように外に対して強いメッセージを発することのできる会社は、中に向けても非常に強力なコンテクストの筋が通っていると感じています。

また、弊社がfacebookに踏み切った理由の一つに、海外への展開があります。東映には映画村や時代劇など日本独自のコンテンツが沢山あります。“Kamen Rider”をご存知でない海外の方も、“Samurai,Ninja,Geisha”ならよく知っている(笑)。これから海外に向けてのブランディングの核をこうしたコンテンツにおきながら、ソーシャルメディアを積極的に使っていきたいですね。

諏訪:今回のセミナーでは視点を変えて、企業の持つコンテクストから考えたお話を皆さんからいただきます。ソーシャルメディアの話となるとつい器の話になりがちですが、コンテクストについて悩んでいる企業は多いはず。企業の悩んでいる担当者の方にとっては、ハッとなる内容になるのではないでしょうか。ぜひ海外への展開についての話も伺いたいですね。

6月23日開催セミナー ツール活用から、コンテキスト伝達の時代へ
「BtoC企業の戦略的トリプルメディア活用」

アシスト×ロフトワークセミナー・シリーズ「Web戦略会議」。第3回目 となる今回は、ツール活用から、コンテキスト伝達の時代へ「BtoC企業の戦略的トリプルメディア活用」 と題し、改めて企業ブランディングについて考察いたします。

執筆者

諏訪光洋

代表取締役社長諏訪 光洋

1971年米国サンディエゴ生まれ。
慶応大学総合政策学部(SFC)を卒業後、JapanTimes社が設立したFMラジオ局「InterFM」(FMインターウェーブ株式会社)立ち上げに参画。クリエイティブ業務を経た後、同局最初のクリエイティブディレクターへ就任。1997年渡米。School of Visual Arts Digital Arts専攻を経て、NYでデザイナーとして活動。2000年にロフトワークを起業。

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