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mitsu_suwa

代表取締役社長
諏訪 光洋

ソーシャルセンシングラボ 環境NGO/NPOとの賢い付き合い方とは

——ある日、「環境に対する取り組みが足りない」と言われたらどうしますか?

糾弾せよ!

自らを木に括りつけて森の伐採に反対する人々。ゴムボートに乗りタンカーや捕鯨船に向け自爆的に活動を行う映像。毛皮や化学の工場内部を盗撮したダイジェスト映画。

環境保護とその系譜に連なるNGOやNPOにはそんなセンセーショナルなイメージがつきまとう。もちろん環境保護は大切だし自分の人生をそんなにピュアな活動に捧げられる人に畏敬の気持ちもある。すごいよね。でも一方で「センセーショナル」が彼等の限られた手法であることはわかっているけれども、それに対し「怖い」という気持ちも持つ人も多いはずだ。少なくとも僕はそうだ。

ソーシャルセンシングラボという取り組み

11年6月22日に日本総研が主催する「ソーシャルセンシングラボ」という会合に出席した。ソーシャルセンシングラボは無印良品の「くらしの良品研究所」を手がけてきた土谷貞雄氏と日本総研でコミュニケーションの研究を 専門にするコンサルタントの井上岳一氏との出会いから始まった取り組み。

Facebookやエンゲージメントなど企業が外部との「つながり」の強化や見直しを求められている中、企業はどうすれば内部それに外部に向けたソーシャルな「センス(感じる心)」を強化し、社会環境の変化に即応できる生き生きした組織になるのか、を考える研究会だ。

コンサベーション・インターナショナル

今回話を伺ったのは武田薬品のCSRを手がける金田晃一氏とコンサベーション・インターナショナルの日本代表をしている日比保史氏。武田薬品は大企業のCSRの世界では非常に有名な企業。そしてコンサベーション・インターナショナルは生物多様性を保護する事を目的に活動をする世界的NGOだ。

日比氏曰く自然保護活動を行うNPOやNGOは決して企業の敵ではなく話せばわかる...わけではなく、やっぱり企業人からすると「非合理的で」「エキセントリック」(あくまで企業側の論理からするとね)な人や組織はそれなりに多いらしい。

バービーがケンにフラれた日

"BARBIE It's Over"で画像検索や映像検索をしてみて欲しい。これはあの「バービー」をつくっている玩具大手マテルのカリフォルニア郊外の本社でグリーンピースがゲリラ的に行った活動の結果だ。不機嫌な表情のケン(バービーの恋人)が「バービー(君とは)もう終わりだ。森林活動を行うような子とはデートできない。」という内容の事が本社ビルに掲げられた垂れ幕には描かれている。

"BARBIE It's Over" Webサイト

原因はバービーのパッケージに使われている「紙」だ。この紙がインドネシアの熱帯雨林の違法伐採によってつくられている、という事を原因にグリーンピースは今回のアクションを起こした。マテル社が森林伐採を行っているわけではない。マテル社の紙の仕入れ先のインドネシアの企業が「悪名高い」違法な森林伐採を行っており、それを考慮せずに購入した事を問題視されているのだ。

マテル社はロイターに宛て紙資源についてはグリーンピースとは「継続的な対話をしてる」と反論。広報を担当しているジュールズ・アンドレス氏は「われわれが対話の窓口をもっているにもかかわらず、(グリーンピースによる)このような挑発的な行動は驚きだし、残念だ」と述べた。
これを読んだ人の少なからずは「実際に違法伐採を行っている企業を糾弾するべきでは」と思うだろう。少なくとも僕はそう思う。購入しただけでこうして本社ビルに忍び込み垂れ幕を出すのはやっぱりちょっと「やりすぎ」なんじゃないだろうか。(※1)

でも現実問題こういったNGOは存在するし力は増す一方だ。彼らから目を背けて耳を閉ざしても問題を解決しない。

糾弾から逃げるのではなく対話をする事で解決を

だったら逃げずに向き合って対話をし対策を行わなくてはならない。ヘンリー・フォードは「障害がおそろしいものに見えるのは目標から目を離すからだ」と言った。今や情報は世界を駆け巡りあっという間に企業のイメージを失墜させる。こういった「思わぬ所」で足をすくわれてきた日本企業のニュースはこの最近でも数多く見ているはずだ。

しかし難しいのが「一体誰がどうやって?」という問題だろう。日本はマーケティング活動を中心とした大手広告代理店の力が歴史的に強く「PR会社」の力は大きくない。欧米には環境問題を専門にしたPR会社やエンゲージメントを担うPR会社が存在し、NGO/NPO、PR会社、そして事業会社との間で人材が、そしてそれにともなってアイデアやイメージが流動している。

前述の武田薬品のCSRを手がける金田晃一氏はまさにこのような人だ。日本に限らない大企業の数々の広報職、米国政府で働いたキャリアなど多様なキャリアを持ちその知見を持って現在は武田薬品のCSRを担っている。しかしこのような人材はなかなかいないし登用する事も難しいだろう。

日比氏曰く「多くの企業は話をするときに腰がびっくりするくらい引けている」。一方で実際にはNGOの少なからずは企業との対話を「望んでいる」らしい。環境NGO/NPOの目標は自らが大切にしている(そしてそれに対し多くの場合、多くの人は異論は無いはずだ)モラルに賛同してもらい、協力してもらう事だ。糾弾や対決が目標の組織はごく一部しか存在しない。そういった「好戦的で」「他者の意見を聞かない」NPO/NGOもあるかもしれないが、それは企業の世界だって同じだろう。

日本のNGO/NPOの方がもっと企業や社会とのコラボレーションのメニューを増やしてくれればとも思う。でもどのNGO/NPOも企業と比べると組織のリソースに限界がある。やはり企業の方から環境NGO/NPOに歩み寄り、対話を始める方が現実的だ。

対話から生まれたアウトプットをWEBで情報発信する事が企業の「知恵」を生む

総会屋対策をしていた総務部長と環境NGO/NPOが対話をしても何も生まれない(実際にそういうケースは少なく無いらしい)。鍵を握るのはWEBを使った「アウトプット」だ。例えばCSRや広報の責任者が中心になって企業の中で「環境問題にどう取り組むべきかコンサベーション・インターナショナルと考える」という委員会とブログをつくり情報発信をしていったらどうだろう。1000人以上の企業なら環境問題に強い関心のある社員は何十人もいるだろう。環境保護NGO/NPOを怖がらず、前向きに意欲的に取り組む人がある一定のルールをもって情報を発信していくのはどうだろう。

例えばこんなルールを考えてみた。
[環境問題をNGOと考えるブログ:情報発信のルール(仮)]

・過去と現在の経営に対し否定的な発言はしない。
・常に未来志向で肯定的に考えアイデアを出す。
・新しいサービスや商品を考えてみる。
・小さな事でも実際に行動してみる。
・他の業界での成功事例を調べ、自社に転用出来ないか考えてみる

増える未来に向けた情報発信

フィリップ・コトラー氏は『マーケティング3.0』の中で、「顧客の心に訴えるべきものは何か」という問いで、マーケティング1.0の時代は「顧客の為に何をやってきたか(What we do)」を、2.0の時代にはコンセプトを、そしてマーケティング3.0の時代、つまりこれからは「次に何を行なうか(What will you do next)」を伝えよと述べている。土谷氏が手がけて来ている「くらしの良品研究所」は日本でも代表的な取り組みだろう。

未来に向けた取り組みを考えるには自社だけでは限界がある。奇しくもコンサベーション・インターナショナルの目的は「生物多様性」の確保だが、企業の「知識」も今後は多様性が求められるということだ。

ドラッカー氏は述べる。「知識は、本の中にはない。本の中にあるものは情報である。知識とはそれらの情報を仕事や成果に結びつける能力である」と。環境保護活動の専門家であるNGO/NPOとWEBの情報発信を通じて人的な繋がりが生まれればその企業は環境保護に関して非常に高い「知恵」を持つという事だ。

そういう取り組みを行なう企業は着実に増えているし、今後ますますさかんになっていくだろう。いい事だし、楽しみだよね。

(補足)

※1
日比氏より、グリーンピースその他多くのNGOが、既に伐採問題を起こしている企業に対してはかなり前からいろいろな取り組みをしていること。そして実際に違法伐採を行っている企業を糾弾すべきであるのは確かだけれども、先進国(ビジネス上のパワーを持つ側)の企業が事実を知りつつもそのような原料を使い続けることの環境・社会への不利益。つまり、原料を使う側にもそれ相応の責任があること。以上2点のご指摘を受けたので追記をします。

コンサベーション・インターナショナル 日比保史氏

ちなみに日比氏はこんな方 →
この写真だとバリバリの自然保護活動家に見えますが、
東京の会議室でお会いしたら素敵なイケメン(死語)です。

執筆者

mitsu_suwa

代表取締役社長諏訪 光洋

1971年米国サンディエゴ生まれ。
慶応大学総合政策学部(SFC)を卒業後、JapanTimes社が設立したFMラジオ局「InterFM」(FMインターウェーブ株式会社)立ち上げに参画。クリエイティブ業務を経た後、同局最初のクリエイティブディレクターへ就任。1997年渡米。School of Visual Arts Digital Arts専攻を経て、NYでデザイナーとして活動。2000年にロフトワークを起業。

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