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mitsu_suwa

代表取締役社長
諏訪 光洋

BtoCに学ぶBtoBマーケティングのこれから 良品計画とフィレンツェの街並みに見出す共通点とは

ターゲットも目的も異なるBtoCサイトとBtoBサイト。しかし、ソーシャルメディアの台頭を背景に、組織と個との境がなくなりつつある昨今、BtoCにおいてもBtoBにおいても改めてWeb戦略のあり方が問われ始めています。そこで、両者の間にある共通点と相違点を整理し、双方にとってより最適なアプローチを探ろうというのが、「第7回次世代サイトを考えるNextWebセミナー」(2011年9月22日開催)の趣旨。

2011年9月2日、セミナー開催を前に実施した事前座談会では、株式会社日立情報システムズの藤代直樹氏をモデレーターに、当日のスピーカーを務める株式会社良品計画 奥谷孝司氏、株式会社日立情報システムズ 鹿島泰介氏、株式会社ロフトワーク 諏訪光洋の3者が集結。BtoBおよびBtoCの2つの視点から、これまでのWebマーケティングを振り返るとともに、そこにある課題や可能性について語り合いました。

時間軸を大事にしたコミュニケーションが生み出す“未来に向けた安心”

-BtoCとBtoBでは当然ビジネスモデルが異なるわけですが、みなさんWebサイトに関してはどのように捉えられていますか?

奥谷孝司氏(以下、奥谷):1つ共通していると思うのは、お客様との時間を共有できるようなプラットフォームが必要だということ。単純に買ってもらえれば勝ち!ではないし、納品したら終わり!でもない。だから我々は、今この瞬間だけではなく、過去も見るし、未来も見ます。たとえば、買ってどうだったか?という話にも耳を傾けますし、お客様と一緒に未来を見てものづくりもします。

少なくとも我々は、ECサイトを立ち上げてから10年間、この考えを根底に持ち続けてきました。もちろん、軌道に乗るまでは時間もかかりました。でも、その間に何をしてきたかというと、時間軸を大事にしながらお客様とコミュニケーションしてきたわけです。今でこそソーシャルメディアの時代になってきましたけど、我々からすると、やっと来たかという印象ですね。

株式会社良品計画 奥谷孝司氏

諏訪光洋(以下、諏訪):実は私、無印良品のヘビーユーザーなんですが、毎年毎年、着実に買いやすくなっているし、Webサイトもどんどん使いやすくなっていて、コンテンツも面白い。そもそも未来のことを話している会社って滅多にないんですよ。今おっしゃられたことを聞いて納得です。探せばもっと安いものや凝ったデザインのものもあるはずなのに、なぜ無印良品を選ぶかといえば、“連続性”から来る信頼なんです。

顧客にとって、商品やサービスが永続的に提供されるかどうかは重要です。BtoBの世界でも、たとえば業務に使っていたSaaSが突然サービスをやめちゃうとか、急に料金を5倍に上げますと言われたら困るでしょう?毎年素材やデザインが少しずつ変わっても必ず同じものが買える。つまり、未来に向けて安心できる。それが無印良品というブランドへの信頼です。

鹿島泰介氏(以下、鹿島):まさにストーリーテリングですね。ファンづくりのプロセスがしっかりしているからこそ、心に響くものづくりがあり、それを伝える画面があり、お客様がクリックするという美しい流れが出来ている。マーケティングで一番重要なのはプロセスだと思います。買って、楽しんで、さらに最後のクローズする部分をどうするか。我々ベンダーで言うと、バージョンアップし続けられるかどうか。決して簡単ではなく苦しい部分でもあるのですが、そこを乗り切ることが、ビジネスを世の中に定着させる力になっていくのでしょう。

良品計画とフィレンツェの街並みに共通する「持続させるためのシナリオ」

-時間軸を大事にしたコミュニケーションを実践する上で、Web制作側で具体的に心がけていることなどありますか?

奥谷: 我々はお客様の声に耳を傾け、フィードバックを受けたら、それをどう還元できるかを考える。100聞いて100全部は出来ないけど、1つでも2つでも応えていこうという姿勢でやっています。買ってもらえれば勝ち!という考え方では進化はありません。これはWeb制作においても同じこと。お客様の求めているものも伴走型へと変化してきているわけですから、1つ終わると「はい、さようなら」「次、何しましょう?」という納品型ではなく、長いスパンで一緒に考えていける伴走型のパートナーと仕事をしたいと考えています。

株式会社日立情報システムズ 鹿島泰介氏

鹿島: お話を聞いていて、フィレンツェを思い出しました。フィレンツェの家々の屋根は俯瞰するとオレンジ。でも、グーっと近づくと実は瓦の色はまちまちなんです。なぜ?とイタリア人に尋ねたところ、500年も1000年も持つ街並みで、瓦が割れたからといって同じ色で揃えるのは難しいでしょと・・・。職人も、工房も、産出される泥も変わるからです。なるほど、と思いましたね。そこには持続させるためのシナリオがあるわけです。

無印良品の商品もこれと同じ。パッと見て、なんとなく無印良品だなとわかる。それぞれに事業をきちんとわかっている人たちが作るから、全体として見たとき、すべてがある枠の中に納まっている。だから美しいし、それが“無印良品らしさ”を生み出しているのでしょう。当社もぜひそのようなイメージインテグレーションを目指したいですね。

ソーシャルメディアの一番の強みは関係性を可視化できること

株式会社日立情報システムズ 藤代直樹氏

-ミクロとマクロの両方から捉えるという意味では、Webマーケティングにおいても、Web全体でどうするかと、各メディアをどう活用するかという2つの視点があります。特にソーシャルメディアとの付き合い方に、悩まれている方は多いようですね。

奥谷: ソーシャルメディアは、ミクロの部分を伝えるのに有効だと感じています。たとえば140文字に乗せて、我々はこんなこともやっているんだよと、少しずつ少しずつボールを投げていける。そうすると、爆発的に売れている商品でなくても、お客様の琴線にパッと触れて、翌日の売上がポッと上がったりするわけです。無印良品というタイムラインをどこかに流し続けて、お客様にとってのライフタイムバリューがあれば、必ずつながると思います。

BtoBでも、たとえばよくある事例紹介なんかで、実際に動いているプロセスを可視化できたりしたら、もっと面白いのではないでしょうか。A社とのプロジェクトはここまで進んでいます。今、こんな問題が・・・といったことまで見せてしまうとか(笑)。

鹿島: それが出来たらいいですね。10年前ならカタログを持ってドアを叩き、話をすれば聞いてもらえました。今はセキュリティが二重三重になり、同じやり方が通用しません。その代わり、ドアノッカーの役割をWebが担うようになっています。ただ、BtoCに限らずBtoBでも、そこには人間としてハートを打つ何かが必要です。そういう点で、Facebookなどのパワーは見ていて本当にすごいと思います。こうしたソーシャルメディアはお客様をファンにするトリガーになるのではないでしょうか。

株式会社ロフトワーク 諏訪光洋

諏訪: FacebookやTwitterの強みは、関係性を可視化できる点でしょうね。可視化されることで、出てきたことを速やかにキャッチアップできるし、より強いつながりが持てる。最近ソーシャルCRMという分野が注目を集めつつあるのを見ると、BtoCだけでなく、BtoBでも関係性を重視する方向に動いていると思います。見積りを出したとか、このタスクを終えたといったプロセスではなく、顧客との対話を見える化し、その中の関係性をトラックする。BtoBの世界も、実は進化しているんです。

奥谷: 震災の影響もあってか、当たり前のようにつながっていることが改めて大事になってきていて、Webの世界でも、人とのつながりを重視したマーケティングが求められているような気がします。ただ、注意したいのは、つながりという価値は人数ではないということ。新しいコンテンツを作って5人しか「いいね!」を押してくれなかったとしても、5人が押してくれたことを喜ぶべきです。そこにおける絆とリアクション率を高めることができれば、ソーシャルメディアとして意味があるし、役立つんだと思います。

これからのマーケティングに求められる新たな接点の創出

-最後に、今後のWebマーケティングについて、みなさんの展望をお聞かせください。

鹿島: インターネットでどこまでできるかは未知数ですが、究極のところ、三次元の世界が実現したら面白い。実際に触れたり、においがあったり、味があったり・・・。そこまで行くと、商品やサービスも劇的に変化するでしょうね。

奥谷: 我々の場合は、お店に行けば触れたり、感じたりすることができて、そこに新たな発見や非日常があります。会員になってメールを受けている人って、やっぱりお店に行くためにメールを見てくれているわけです。お店に来て、接客を受けて、「わかりました。じゃぁネットで買います」でもいい。ネットで購入することをお店が担保してくれているとしたら、どんどん店舗送客すべきだし、そこで意思決定しなくてもいいと思うんです。結局、これも時間という話になるんですが、お店に行く時間とネットをする時間の両方を行き来してもらうことが大切。お店があるがゆえの強みですね。

諏訪: ロフトワークという会社は、クリエイターネットワークの「loftwork.com」や、クリエイティブの教え合いネットワークである「OpenCU」など、関係性の可視化によってビジネスをしているところがあります。我々が今模索しているのは、CRMの仕組みをどこまで可視化できるかということ。新たな接点を創出するためにも、動的なCRMとかFacebook的なものをプラットフォームにして、もっと人に軸足を移していきたいとい思っています。

奥谷: 私もCRMの進化には期待したいですね。たとえば、日本のコールセンターがコストセンターになってしまうのも、対話が可視化できていないから。受けた質問をオープンにしなければ、何度も同じ質問が来て当然です。コールセンターのようなところにこそ、お客様のニーズを取り込むチャンスが転がっている。そこに目を向けないことには売上アップも望めないでしょう。

9月22日開催セミナー NextWebセミナー 第7回
BtoB・BtoCサイトの次世代Webマーケティング -取り入れるべき共通点、切り分けるべき相違点

執筆者

mitsu_suwa

代表取締役社長諏訪 光洋

1971年米国サンディエゴ生まれ。
慶応大学総合政策学部(SFC)を卒業後、JapanTimes社が設立したFMラジオ局「InterFM」(FMインターウェーブ株式会社)立ち上げに参画。クリエイティブ業務を経た後、同局最初のクリエイティブディレクターへ就任。1997年渡米。School of Visual Arts Digital Arts専攻を経て、NYでデザイナーとして活動。2000年にロフトワークを起業。

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