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Column コラム

伊藤穰一、林千晶 対談

Chiaki Hayashi

共同創業者、代表取締役
林 千晶

伊藤穰一×林千晶 対談2013
予測しない、実践する、今想像できないことをしたい。[後編]

MITメディアラボのイベントでプレゼンテーションをする伊藤さん Photo by Chiaki Hayashi

「なんとか2.0」は全然新しくない

前編より続き)

:じゃあ、ユニーク、インパクト、マジック。最後のマジックは、どういう思いを込めて、つけましたか?


伊藤:よく言われがちな、デザイン2.0とか、「なんとか2.0」っていうのは、ぜんぜんマジックじゃないのね。ただ「何かの延長」みたいでしょう。マジックはやっぱり、バイオノミックス(bionomics)とか、FabCafeだとか。新しいストーリー、新しい夢。



※1 バイオノミックス: 生物学と経済学をミックスした学問。経済を時計のような「予測可能な機械」として捉えた正統派経済学を根底から問い直し、経済を「変化し進化する生態系」として捉えている

※2 FabCafe(ファブカフェ): 2012年3月に誕生した「デジタルものづくりカフェ」。Fabは、FabLication(ものづくり)とFabulous(愉快な、素晴らしい)の2つの意味が込められている言葉で、MIT ニール・ガーシェンフェルド教授が提唱した「ものづくり革命」のコンセプト。パーソナル・ファブリケーション、デジタル・ファブリケーションの実践の場として、世界中20カ国以上50カ所以上に市民工房「FabLab」が拡がっている。FabCafeは、FabLab Japanとロフトワークが出会って生まれた新しい形態のクリエイティブスペースで、国内外から注目されている。



:延長ではない。インクリメンタル(incremental:徐々に増やしていくこと)ではないってことだよね。


伊藤:そう、だから、マジックをつけないといけないんだ。ユニークとインパクトだけだったらダメ。


:うーん、インパクトはわかるけれど、ユニークって、難しい言葉だよね。定義はね。


伊藤:いや、シンプルだよ。「他でやってない」。で、「他でできない」


:……他でできない。


伊藤:「他でやらない。他でできない。他でやってない」。みんながやっていることを一生懸命競争してインパクトを求めるのと、誰もやってないところでインパクトを求めるのと、ぜんぜん方向性として違うんだよね。


:なるほどね。それにマジックという言葉が最後につくことで、なんかこう、「ワオ!」という驚きも付与されるのかな。


伊藤:マジックは、ストーリーとしておもしろくないと意味がない。それは、時にアート的な要素だったり、デザイン的な要素だったりするね。


:なるほど。


伊藤:っていうわけで、マジックが大事。ハハハ、ゆるいね(笑)でも、マジックって、あんまり説明するとマジックじゃなくなっちゃうからこのあたりで。

これから大きくなるべき?

:じゃあ、そんなロフトワークに投資して、いかがですか?


伊藤:ハッピーです!


:やったー(笑)時価総額じゃなくて別のバリューってことかな。でも投資してもらって、なんにも返してないんだけど、返すつもりもないんだけど、フフフフ。


伊藤:いいんだよ、返しても。(笑)


:え、本当!? でもほら、投資家として成功しているJoiに、お金で返してもね。「使い切れないお金がもう、つもりつもっちゃって、根腐れしてんだよねー」ってなるかなーと思って(笑)。


伊藤:大丈夫。ハハハ(笑)。


:ともかく、Joiとこんな風に様々なプロジェクトや活動を一緒にしたり、そのおかげでロフトワークの幅が拡がったり……というのは、投資してもらってからはじまったことだよね。実感として、投資してもらうのって、関係が始まるうれしいきっかけだなー、と。


伊藤:なるほどね。


:でも、投資してもらった直後は、株主総会にJoiが来なくって、「今どこですか?」って連絡したら、「いや日本にいませんけど」って言われたこともあったね。株主総会の案内は出してたんだけど、忙しすぎて伝わらなくて……。で、なんかみんながしょぼーんとして株主総会をやったことがある(笑)。懐かしい。


伊藤:そのあと事務所をシェアしてたこともあったね。


:あった、あった。いろんなことがあったね。 あっ、じゃあ株主に質問です! ロフトワークはちなみにこれから……(小声で)おっきく、なるのでしょうか。あんまり大きくしなくていいよね……?


伊藤:うん。


:よかった。

やりたいことは、今、想像できないこと

伊藤さんの自宅にて Photo by Chiaki Hayashi

:じゃあ、最後の質問。これからやろうと思うことは何?


伊藤:メディアラボで?


:いや、人生で。


伊藤:それはね、「今やってること」と「今は想像できないこと」。


:それは、「今はやれてないけど、これからやってみたいこと」はないってこと?


伊藤:だって、毎日やりたいことをやっているから。 何かやらたい、と思ったら、やっちゃう。だから、やりたいと思っていて、やってないことって、溜まらないんだよね。


:だから、あえてやりたいことは、「今、想像できないこと」なんだね。


伊藤: そう。想像できたらやってるから。


:そうか。Joiらしいね。


伊藤:ハッハッハ(笑)。


:でも、小さいことで、今やりたくて、まだやってないことは? それか、もうすぐやろうとしていることは?


伊藤:ハハハ。なんだろうね……。あ、洞窟ダイビング! 狭いところに入っていくやつ。


:わあ、怖そうだよね、ちょっと。


伊藤:メキシコとか、バハマとか。世界にはいっぱい、洞窟ダイビングできる場所がある。探検隊みたいなチームがどんどん見つけてて。


洞窟ダイビングの写真を検索しはじめる伊藤さん

伊藤:あとフリーダイビングもいいよね。酸素ボンベを使わないで潜るの。人間の体って、トレーニングを受けると、体の中心だけ機能させて、心拍数もぐっと下げて、水中に3分くらい平気で潜れるようになるんだ。


:人間の可能性を人間の脳が制約してしまっているということだよね。そしてそのリミッターを外すことで、もっと新しいこと、見たことのない世界に挑戦できるようにチューニングする……。それって、まさにJoiがMITメディアラボでやろうとしていることだ!


ということで、ダイビングの話もちゃんとJoiの「今」と「未来」につながりましたね(笑)。よし、これからも、「今、想像できないこと」を一緒にやっていこう!


対談は、所長室とレストランで収録しました

執筆者

Chiaki Hayashi

共同創業者、代表取締役林 千晶

1971年生、アラブ首長国育ち。2000年にロフトワークを起業。Webデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティデザイン、空間デザインなど、ロフトワークが手がけるプロジェクトは年間530件を超える。書籍『シェアをデザインする』『Webプロジェクトマネジメント標準』『グローバル・プロジェクトマネジメント』などを執筆。2015年4月、森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す「株式会社飛騨の森でクマは踊る」を設立、代表取締役社長に就任。

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