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Column コラム

SXSWデビューを成功させる5つのポイント、それとエッセンス

mitsu_suwa

代表取締役社長
諏訪 光洋

SXSWデビューを成功させる5つのポイント、それとエッセンス

"South by South West"、それはアメリカテキサス州オースティンで音楽・映画・インタラクティブ、3つのジャンルで10日間にわたり毎年3月に開催される世界最大級のエンターテイメントイベント・カンファレンス。

SXSWの巨大なレセプションブース。お祭りの始まり!

ヒッチコックの映画 "North by Northwest(北北西に進路を取れ)"をもじってつけられたSXSWはもともとは「音楽」からスタートした。カンヌのMIDEMと同様だけど、ミュージックフェスと音楽業界のカンファレンスからスタートしたイベントにWEBやクリエイティブ業界が「合流」をする事でデザイナーやハッカー達が参加し、コンシューマー向けのWEBサービスやアプリがデビューし、元々いる音楽業界や音楽や映画が好きなコンシューマーも集まり毎年拡大しつづけています。

2002年のSXSWでノラ・ジョーンズがスターバックスでライブをしその後全米デビューへ。Twitter, Foursquare, Pinterestなど、SXSWによって大ブレークのきっかけをつかんだと言われる大御所WEBサービスの数々。2011年には井口尊仁さんがセカイカメラをセンセーショナルに世界デビューさせた、など伝説にことかかないのがSXSW。

SXSW2013に出展した、ポップ・アップ FabCafe。レーザーカッター、3Dプリンタを持ち込み、コーヒーも提供。

そのSXSW 2013にロフトワーク/FabCafeとして出展。FabCafeのグローバルパートナー探し、そして"Factory.org"という新しい"モノヅクリプラットフォーム"のデビューを通して感じたSXSWデビューで大切だった5つのポイントと今回の活動をレポートします。※A

1.ホテル、ホテル、ホテル

いきなり小さな話だけど大切な話。SXSWで何よりも最初に不足するのはホテル。開催3ヶ月前、前年12月時点でも市内のホテルはほとんどが一杯。※B

町中がお祭り騒ぎのオースティンで、良いホテルを確保するのは大変だ

SXSWの情報が入って来て「やっぱり行きたいかも!」と思うのは大体そのくらいのタイミングなのだけど迷っているとあっという間に1ヶ月たっちゃって結局諦めちゃう理由のひとつが「ホテルが確保できない」から。僕らは1月、つまり開催2ヶ月前の時点で運良く会場から5分のHampton Innの部屋をみつける事ができ皆から「どーやったんだ!」と驚かれたくらいホテルが不足しがち。実際メンバーの部屋は見つけられなかった(みんなごめんね)。

ただし!車で20分ほど郊外に出ればホテルだけではなく部屋を貸すサービス(※C) なども含め、楽さや快適さをちょっと横においておけば実際のところ泊まるところは見つけられます。ご安心を。ただ後述もするけどSXSWの昼開催されるオフィシャルイベントやカンファレンスはSXSWという巨大お祭りのごく一部。オースティンの街中、と夕方から夜にかけての楽しさとハッピーな雰囲気はSXSWの魅力と価値の大切なポイント。だから楽しく全力でSXSWに参加するためにもオースティンのダウンタウンに拠点を確保できると◎です。

昼のカンファレンスも楽しいけれど、夜のお祭りムードも全力で楽しみたい。近場の宿は大事!

そもそもSXSWの参加フィーは結構高い!オフィシャルイベントを見たり参加することができる「オフィシャルパス」。このオフィシャルパスが最低でも1人700ドル。この700ドルはインタラクティブ・ミュージック・フィルム3ジャンルどれか1つのパス。そして申し込みが遅くなればなるほど高くなっていき最後には1000ドルにまで値が上がっていく(!)。ちなみにインタラクティブ・ミュージック・フィルム、10日間全てを見ることができる3つ通しのパスは1150~1600ドルだから1ジャンル分買うよりお得感がある。でもそもそも高いよね。

こうして参加パス自体が申し込む時期によって随分価格が違うしホテルの問題も考えると半年くらい前に参加を決定できる「計画性のある人」は随分安く快適に参加が出来るはず。出遅れた人は僕みたいにチケットをとりつつ頑張ってネットを徘徊してホテルを確保しよう。ちなみにAustinの街中でタクシーを捕まえる事は至難の業。だから郊外などダウンタウン以外にホテルを借りるならレンタカーを借りることを忘れずに!

2. お祭りで営業..それって野暮じゃない?

このページを読んでいる人は「インタラクティブ」に興味がある人が多いと思う。 インタラクティブ>ミュージック>フィルム(映画)と内容とキャラクターが変わっていく全10日間のSXSW、さまざまなイベントが開催される一方でトレードショー会場では100を超えるブースが出展し、SXSWのお祭りのもうひとつの顔であるビジネスマッチングが行われます。

遊び心いっぱい!気合いの入ったブースはこんな感じ

でも皆がハッピーな「お祭り」でしかめっつらしてビジネスを本気解説する「ザ・ビジネスマッチング」ブースをつくっても素通りされちゃうし「つくり笑顔のキャンペーンガール」を沢山配置をしてもオースティンの街中にあふれる本当の笑顔とでは分の悪い勝負。

あんまり気合いの入っていないブースはこんな感じ。大事なのは立派なブースだけじゃない。

だからトレードショーのプロの業者に頼んだスタイリッシュなグラフィック、そしてトレーニングされた数人のコンパニオンがいるような日本でよく見る「普通のブース」では、よっぽど奇抜な商品やサービスが無いとガラガラ。ちなみに「テクノロジー」「広告」など業界色が強いブースよりも最終的にはコンシューマー向けとなるサービス/プロダクト色の強いブースが多い印象です。

ゲリラ的にパフォーマンスがはじまることも!目立つこと、楽しいことに人が集まる。

ちなみに出展の為にはどのくらいコストがかかるのか?僕らが出展したブースの大きさは「ダブル」という名前の通り、基本ブースの2倍の広さ。幅6m奥行き2mの大きさをインタラクティブの期間のみ借りて$4,800(色々あって随分おまけしてもらった)。この4800ドルには1人分のプレミアムパス(インタラクティブ・ミュージック・フィルム全て10日間見ることができるパス(見れなかったけど..))、プラス2人分のブースで働く人用のパス(Worker Pass)もついてきます。ワーカーパスはカンファレンスやライブなど他のオフィシャルイベントに参加は出来ないのだけど、単なる参加フィー(パス)とくらべると結構お得な感じ?

ぼくらFabCafeのブースサイズは「ダブル」。持ち込んだグッズ+手作業で設営!

トレードショーのブースは世界中から参加した大小100近く。僕らは日本からコルクボードとレーザーカッターでつくった「グローバルファクトリーマップ」を4人がかりでえっちらおっちら手で持ち込み手作業で組み立てた"Fab"(でちょっと不器用な)ブースをデザイン。素人設営ながらも頭を悩まし工夫をしながらブースを設営していきました。

手づくりブース設営中。FabCafe Tokyo COOの川井君と、FabCafe Taipei 設立中のTim、そしてぼくと林千晶で頑張った

世界中の人がどんなものをつくっているのか、どんなアイデアを持っているのかっていう世界地図をつくるプロジェクトでありサービスがFactory.org。そのFactory.orgをコルクボードを使ってリアルに参加できる仕組みとともにFabCafeとしてスペシャルなコーヒーとFAB体験を提供する「参加型」ブースのアイデアが受け入れられ自画自賛だけど大人気!100以上あるブースの中でも5本指に入る人気のブースになりました。※D

FabCafeブースに取材殺到!

そう、大切なのはSXSWというお祭り特有の「一緒に楽しむ」という特性をどうやってデザインするか。お祭りに来ている人に「営業」するよりも自分達自身もお祭りにしちゃう、そういうブースや企画をしている企業には沢山のファンが生まれる。SXSWはそういうイベントだと思う。

ひっきりなしに人がやってくるFabCafeブース。世界中にFabCafeをつくる仲間が欲しい!という当初の目的はばっちり達成できた

ちなみにグローバルファクトリーマップをつくってみてわかったのは本当に世界中の人がSXSWに参加をしていること。意外な事にアジアからの参加者は少なめですが、米国はもちろん、南米、ヨーロッパ、中東など世界中の人がグローバルマップに参加してくれました。

3.刺激的なインプット

カンファレンスに出席すると貴重なスピーチやセッションを聞く事が出来るのはSXSWも同様。でも5万人を超えるSXSWだからこそ聞けるインプットも沢山ある。

2013年のキーノートは起業家のイーロン・マスク氏を"Makers"の著者であるクリス・アンダーソンがインタビューするセッション。

イーロン・マスク氏は決済サービスのグローバルスタンダード"Paypal"、世界最初のプレミアムな電気自動車メーカー"テスラモーターズ"、そして独自ロケットの開発・打ち上げを行う宇宙ベンチャー"スペースX"全てを立ち上げ、成功させている全米のヒーロー。

イーロン・マスク氏の経歴を聞くといかにもアグレッシブなカリスマを想像してしまうのだけどシャイな笑顔が印象深い物静かで誠実な話し方。対談の中で最も盛り上がったのが"スペースX"で開発している実験ロケット「グラスホッパー」のムービーを披露した時。

「打ち上がった~…とおもったら降りて来た!」という衝撃(笑)。そしてこのプロジェクトはNASAを代替するものではなくNASAが最大顧客でありパートナーだ、というコメント。ここらへんが米国っぽいよね。

印象深い話は色々あるけど、そのうちのひとつは会場からの質疑応答。
"What's the biggest mistake you've ever made?"
(あなた(イーロン)の最大の間違いは何ですか?)

" I've made lots of mistakes. Some are pretty big. "
「沢山の間違いを僕はしてきている、本当に大きな間違いも」
"The biggest mistake in general is to put too much of a weight on someone's talent and not there personality. I think it matters whether someone has a good heart. And I've made the mistake of thinking it's just about the brain."
「でも本当に大きな間違いは個性や人格ではなく能力に重きをおきすぎてしまう事。頭脳で判断した間違いは単に頭脳の間違い。優しさや善良さを持っている事こそが大切だと思う」

会場から長く温かい拍手がおこった素敵な瞬間、そういうインプットは長く身体に残って参加した皆を未来に向かわせるんじゃないかなと思う。

4.オースティンの街中がハッピー!

日中はブースの運営で大忙し。キーノートスピーチ以外はあんまりオフィシャルイベントに参加出来ず… ※E
でも心配無用!SXSWの楽しさは有名人のスピーチやビジネスの出会いだけではなく、むしろオースティン街中のお祭りにこそあります。Evernote,HypeMachineなど元気な企業はオフィシャルスペースを出て、街中のレストラン・カフェ・バーを借りさまざまなイベント※Fを開催してました。

どのお店も貸切イベントで満員!ピアノバーのパーティ、楽しかったなあ

僕らもダウンタウンでパーティを開催!パーティのタイトルは「Go To The Moon」。1962年、オースティンのあるテキサス州でJFケネディ大統領による有名なスピーチ"The Moon Speech"からコンセプトをもらいました。

この"The Moon Speech"はソ連が初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げを成功させてから、宇宙開発においてアメリカがソ連に悉く後塵を拝しアメリカ中が「どよーん」としていた時に"We choose to go to the moon.(我々は月に行く事を選んだ)"というセリフとともに「我々は負けない」という決意を表した有名なスピーチです。

"Go to the Moon"パーティを開催

僕らも「月に行く!」くらいの気持ちをもって未来に進もう、ということで参加者の皆に"Moon Speech"をしてもらう"Go to the Moon"パーティを開催しました。

パーティは土壇場でSEIKO社がスポンサードに名乗りをあげてもらった上、さらにMIT Media Lab所長のJoiが審査委員長に。ムーンスピーチには僕がデザインを指向するきっかけでもあり尊敬してやまないデザイン業界の雄、Frog Designも参加。参加をしてもらった沢山の人に「今回参加したSXSWのパーティの中でも一番よかったよ!」と言ってもらえました。

Frog Design、マイケルのムーンスピーチ。素晴らしいプレゼンテーション!

僕らのパーティだけではなく、オースティン街中いたるところでオフィシャル、アンオフィシャルなパーティやイベントが開かれています。街中には沢山のライブが開かれ、レベルの高いバンドも沢山。音楽好きならオフィシャルなパスを持っていなくても十分楽しめるんじゃないかな。

なぜか縄跳び。なんだけどそれだけで楽しそうな。

5.仲間

初SXSW参加にして、ブースだけではなくオースティンダウンタウンでのパーティまで開催する「欲張り」なプランを成功できたのは沢山の人に助けてもらい、そして一緒に楽しめたから。特にパーティは正直僕が勝手に(!)申し込みをしちゃった上に、実は僕はパーティの仕切りがとっても苦手なので周りはとっても大変だったみたいデス…。(ごめんね林千晶、ごめんねみんな)

「日本人で僕程英語のカンファレンススピーチをしている人はいないんじゃないかな」と豪語する電通島田さんがパーティの司会をしてくれたり、SXSWの日本の窓口をしてくれているオードリ木村さんは本当に細やかに沢山のサポートをしてくれた。MIT Media Lab所長のJoiも沢山あるイベントをいくつかふりきって参加してくれたし、僕が尊敬してやまないFrog Designのマイケル、それにさまざまな人を紹介してくれたジャンフランコ、一緒にブースをシェアしたテレパシー井口さんなど沢山の人に助けてもらってSXSWデビューを成功させた。僕らにとっては「Go to the Moon」をちょっと出来たかな、って思うし、まだまだ遠くの月にいけるんだなと思えたオースティンでした。

パーティでのウィナー発表!MIT Media LabのJoi(左)も審査員を引き受けてくれた

そう、やっぱり日本人にとっては「アウェイ」なのは間違い無いから大変な事も沢山。でもいつも一緒にいる会社やプロジェクトのメンバーだけで取り組むのもつまらないしもったいない。新しい出会いと未知の可能性を求めて"SXSW(南南西に進路をとる)"、それがSXSWの楽しみかたなんだと思う。

また来年!

みんな、本当におつかれさま!


※A
ただし!デビューといっても「インタラクティブ」あるいは「ビジネス」の話。あなたがミュージシャンでSXSWデビューを考えているなら、残念ながらこのコラムは役にたたないね。

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※B
会場となるコンベンションセンターに最も近いのが"Austin FourSeasons"。ただこことHyatt AustinはオフィシャルVIPのために使われるので激戦、というか不可能に近い。そういう意味では僕がとったHampton Innに部屋がとれたっていうのは皆から「えーすごい!」って言われた。ホテルとしては特徴はないけど上質なベッドときれいで快適なホテルでした(京王プラザホテルみたいな感じ)。
来年もSXSWに行くならHamptonにするかも。

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※C
個人の部屋の貸し借りサービス"Airbnb"を使うっていうのもひとつの手。この時期"Airbnb"に自分の部屋を貸し出すAustin住民は結構いる。だって結構高値で貸せるからね。うまくいけば素敵な部屋に泊まれるかもしれないけどやっぱり便利な場所はすぐに取り合いになるし結構高い。大概の事を楽しめる人にはこういう機会にこんなサービスを使うのがいいかもね。もちろん利用は自己責任で!

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※D
ちなみにブースにはセカイカメラのファウンダーである井口さんが「テレパシー」立ち上げでジョイン。ギリギリで実働する機器が届きこれも大人気でした!

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※E
印象的だったのはWall Street Journalの取材。1日目に取材をされたら次の日、1人でiPhoneを使って動画で取材撮影。天下のWall Street Journalがこんなにスリムな取材をする事がびっくりだし、しかもかっこいい!

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※F
オースティンの人皆が「あそこがオースティンで1番」と言うコーヒーを飲ませるのが"Frank"。ここはEvernoteがデベロッパー向けのイベントとパーティを開催してました。さすがお目がたかい!

音楽サービスの中でソーシャル力を最も活かして元気な「HypeMachine」はタコベル(知ってる?)をスポンサーにつけ"Hype Hotel"というライブイベントを毎晩開催。毎日長蛇の列でした。

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執筆者

mitsu_suwa

代表取締役社長諏訪 光洋

1971年米国サンディエゴ生まれ。
慶応大学総合政策学部(SFC)を卒業後、JapanTimes社が設立したFMラジオ局「InterFM」(FMインターウェーブ株式会社)立ち上げに参画。クリエイティブ業務を経た後、同局最初のクリエイティブディレクターへ就任。1997年渡米。School of Visual Arts Digital Arts専攻を経て、NYでデザイナーとして活動。2000年にロフトワークを起業。

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