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Column コラム

今までに無い顧客体験価値を開拓するイノベーションメーカー:棚橋弘季

Hiroki Tanahashi

イノベーションメーカー
棚橋 弘季

パブリックリレーションズ
石川 真弓

渡部 晋也

マーケティング
渡部 晋也

今までに無い顧客体験価値を開拓するイノベーションメーカー:棚橋弘季

ロフトワークのディレクターを一人ひとり紹介するコーナーの第二回目。
…ですが、さっそくディレクターではない、イノベーションメーカーという異種な肩書の棚橋が登場です。
「ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術」の著書などもあり、業界では名の知れた棚橋ですが、実際にロフトワークではどんな仕事をしているのかを聞いてきました。
誰もが知っているようで、どうとでも解釈されてしまいがちで、結局何だかよくわからない「イノベーション」という言葉と仕事。
にこやかに、そしてわかりやすい言葉で説明してくれました。
今までにない新しいビジネス手法を学んで取り入れて開拓して、そしてクライアントに提案する「イノベーションメーカー」の仕事とはいったい何なのでしょうか。

(聞き手:PR石川)

「イノベーションメーカー」ってそもそも何だ?

-イノベーションメーカーはどんな仕事をするのですか?

ボクも聞きたいです(笑)
というのは冗談で、「イノベーション」と言っても領域は広くて、何に対してイノベーションを起こしていくかをまず認識する必要があります。
例えば、社会に対するものならソーシャル・イノベーション、そして僕が携わっているのはビジネスに関するイノベーションです。
今までに無いような顧客体験価値を生み出す製品やサービスを、クライアントさんと一緒に考えるのが僕の領域だと思っています。

日本のメーカーは既存の商品をより良いものにする方向で、これまで競争力を保っていました。
でもそれだけだとだんだん苦しくなって今に至っているのだとすれば、今までに無いものを考え、どこよりも早く出すことを求められます。
でも今まで、そういうやり方をしてこなかったので苦手だという事であれば、そのあたりを一緒にお手伝いする。
それによってイノベーションをつくっていく。
どんどんビジネス・ルールが変わる中で、それに合わせる方法を一緒に模索していく。
既存のものを改善するなら(例えばテレビを薄くするとか)想像しやすいけど、今までに無いものを探りながら、クライアントと一緒にやっていくのがイノベーションメーカーの役割です。

企業のモノづくりのこれからを考え体感するイベント「Make-a-thon」でファシリテーターを務めた時

-実際にどういう案件になるのですか?

僕が携わっているプロジェクトの性質上、公開できないものが多いので、具体的には話せないけれど、例えば某日本のメーカーさんのR&D部門と一緒に仕事をしています。R&D部門では新しいものを生み出していかなければいけないけれど、どうしても技術的なところから考えがちで、顧客体験の視点から考えるのが得意ではない。
顧客の体験価値と新しい技術をどう結びつけるか、オープンイノベショーションを模索していくことに興味があるということで、今回プロジェクトを一緒にやらせて頂くことになりました。

クライアントと、有識者と、ユーザーと一緒に、
新しい体験価値を生む商品コンセプトを考える

今回、4ヶ月くらいのプロジェクトで行ったのが、新しい商品のコンセプトを考えるというものです。
ここからだんだんオープンイノベーション的な文脈になりますが、その製品には直接関わっていないけれど、先進的な考え方を持っている、例えばTelepathyの井口さんやSR(代替現実)システムなどを作ってる脳科学者の藤井直敬さんなど、有識者の方を集めてざっくばらんに、その製品が使われている生活のシーンが未来にはどんな風に変わるか?みたいなことを語り合う場をつくりました。

製品そのものの未来を考えるんじゃなくて、それが使われるシーンが未来においてどうなるか?を考えることで別の製品を考えるための視点・ヒントが欲しいんですね。

有識者による話し合いをロフトワークで行いました

そこで出てきたアイデアをもとに、コンセプトを僕らで考えてみます。

考えたコンセプトがいけるものかいけないものかを検証するため、コンセプトをイラストに落として、想定ターゲットとされるユーザーにインタビューを行いました。

実際につくった商品コンセプトのイラスト。
(諸事情でかなりぼかしていますがご了承ください)

考えた商品コンセプトとユーザーの環境に合うのか合わないのか、自分たちの考え方のどこが間違えているのかというのを話を聞きながら、考え直してみて、さらにコンセプトをつめていきました。

ターゲットを4つのグループに絞ってユーザーインタビューを行う

商品のプロトタイプではなく、本当にラフにコンセプトを表現したイラストの段階からコンセプトを一般の人に評価してもらうという、まさにリーンスタートアップの手法をとっています。

実際はリーンスタートアップほど早くもないんですけど、仮説検証を素早く回していくという取り組みを行いました。

そういう過程を踏んだ最終的なコンセプトの方向性をクライアントに提案し、評価いただけたので、次は商品のプロトタイプの段階に移っていく予定になっています。

その段階で、商品イメージをより具体的に、より詳細に可視化できるビデオ制作などの作業も必要になってきますが、そうしたクリエイティブな面を特にお手伝いする形で、製品化に向けた活動をご一緒することになります。

いかに納得してもらうか、一番大変だけど、最も重要な領域

いざ実際に商品化するとなると、事業部の方や経営層など、より多くの関係者も説得して巻き込んでいくことになりますが、これが一筋縄ではいかず中々大変です。
テキストよりもイラストや動画のクリエイティブで、説得力が段違いに変わるのはわかっているので、ここでロフトワークのクリエイティブの力が活かせると思っています。

やっぱり今無いものを創っていくわけだから、イラストや動画のクリエイティブの力で可視化するってとても大事だと思います

新しい商品を作っていく上でのポイントは「いかに社内を説得するか」なんですよね。
本当にその商品が売れるかどうか不安な中、いかに商品化にGOがかかるまで持っていくかまでが、イノベーションメーカーの役割だと思っています。

視野が狭くなっている人の考えを広げるためのワークショップやハッカソンを開催したり、偉い人も巻き込んでいかに納得してもらうようにするか、ここが一番大変だけど、最も重要な領域だと考えています。

「ロフトワーク流のLW流のイノベーション」のつくりかたとは?

-オープンイノベーションを考えるグループはどのような活動をするのですか?

LW流のイノベーションのつくりかた」の確立をテーマとして活動します。

いままで新しい商品やサービスを開発するという方面で、いくつかのプロジェクトに関わり、その都度、いろんなやり方をやってみて、うまくいったり、いかなかったりということがありました。
それがなんとなく自分自身の知恵になりつつあるものの、言語化や体系化ができてないのが課題と思っています。

なので、1つの活動としては、プロジェクトを回しながら、うまくいったことをアーカイブし、それを「LW流のイノベーションのつくりかた」としてまとめていこうと思ってます。
ロフトワークは何ができるのか?と聞かれた時に応えられる材料を整えたいと。
ただし「正しいイノベーションの方法」なんて存在しないので、どちらかというと今までのノウハウ集になるんじゃないかと思っています。
で、「つくりかた」をまとめるには、いままでのやり方では不足もあるので、そこは新しいチャレンジをしながら、結果としてもロフトワークでこんなイノベーションが生まれましたというのを作っていきたいと思ってる。
その「つくりかた」のキーワードが”OPEN”ですね。

生態調査アンケート


  • 前職は何をされていましたか?
    商品企画のコンサルタントです。
    6年前くらいまでは、Web制作の会社で、Web戦略の立案とか、UXのためのリサーチ&デザインなどに携わっていました。
    でも、UXという観点に立てば立つほど、Webとか商品とかコミュニケーションとかの垣根って無駄だよなーと思いはじめて、商品・サービス寄りのデザインの仕事をしたいと想い、舵をきりました。で、今にいたる。
  • 好きな言葉は? try not, do or do not
    スターウォーズでヨーダが修行中のルークに言った台詞です。
  • どういう案件が得意ですか?今までどのような案件に関わってきましたか?
    自分で得意だと思っているのは、お客さんに「新しい商品やサービスのコンセプトをいっしょに考えてください」って言われる案件。既存の商品を新しくしましょうというものより、いままでにない商品やサービスを考えましょうといわれるほうがやる気が出ます。
  • これから伸ばしていきたいスキルは?
    うーん。なんだろ?
    広い意味でのプロトタイピングをうまく使ってイノベーションを実現していく方法が1つ
    いろんな人をイノベーションに巻き込んでいくための方法がもう1つかな
  • 利用しているPCは何ですか?
    Macbook Air
  • メインブラウザは何ですか?
    Chrome
  • お気に入りのショートカットキーを教えて下さい
    ⌘+X
  • 扱えるソフト、よく利用するオンラインツールなどについて教えて下さい
    Word, Excel, Power Point, Keynote, Photoshop
  • 通勤時間は?
    30分以内
  • スマートフォン、タブレット、ケータイは何を使っていますか?
    iPhone 5
  • 結婚していますか?彼氏・彼女はいますか?
    既婚
  • 仕事をしていて、一番楽しい時は何ですか?
    雑多で整理していない情報が手元に膨大にあって、それをいろんな形で並び替えたり、図式化するなかで、「あっ、これだ」っていうアイデアや切り口に気づくときかな。 基本的には、めんどくさがりなので、膨大な情報を整理するのも面倒だと思うんだけど、でも、それを仕方なくやることで発見できるのは楽しい。
  • あなたにとって「イノベーション」とは?
    自分がほしくて、いまないワクワクするものや状態を生み出すことだと思ってます。
  • お勧めの書籍は?
    イノベーション・メーカーと名乗りつつ、実は個人的には新しいものより、いまは失われた古い時代のモノや文化に興味がある。なかでも、特にヨーロッパ中世がよいなと思うんです。
    中世がよいなーと思いつつも、逆にその中世が失われたルネサンス以降の流れに興味がある。特に近代から現代への思考や生き方の形が中世には逆戻りできない形に確立されていった17世紀の文化の変遷はすごくおもしろい。
    そのあたりを扱ったバーバラ・スタフォードの『アートフル・サイエンス』や『グッド・ルッキング』、ワイリー・サイファーの『ルネサンス様式の四段階』、グスタフ・ルネ・ホッケの『迷宮としての世界』、高山宏さんの『近代文化史入門』などはおすすめ。まったくイノベーションとか、デザインとかには関係ないように思えるけど、僕がイノベーションやデザインを考える上での源泉はこのあたりにあります。
  • 自分の武器は何だと思いますか?
    表面にあるものではなく、その裏に隠れた本質的なものを見つけようとする姿勢だと思います。だから、流行に流されすぎずに済むし、常識にとらわれたままにならずイノベーティブなものを発想するきっかけも見つけやすいのかな、と。
    「未知」なものを「既知」に変える過程が好きなんだと思う。なので、表面的な既知よりも、その背後にある未知を見ようとするところはあって、自分ではそれが武器かなとw
  • 一番好きな作業は何ですか?
    白い紙やホワイトボードを前にして落書きしながら頭を整理したり、アイデアを考えたりしてるとき。
  • プレゼンで心がけていることは何ですか?
    基本的に、内容としては、複雑で、耳慣れない話をすることが多いので、それをすこしでもわかってもらえるようにストーリーや表現を組み立てようと思います。
    事例を話せばわかりやすくなるだろうなと思うんですけど、適切な事例は出せないことが多いのでそこが苦労します。新しいことに取り組む立場上、そもそも事例がなかったり。
  • ブログを書いていますか?
    個人ブログ「DESIGN IT! w/LOVE」は2005年から継続しています。
  • また単著も書かれたとか?
    ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術」という本を2009年に出させていただきました。
    デザイン思考による仕事のやり方・考え方を、具体的な方法とともに解説していて、頭の中にあるコンセプトを具現化する「プロトタイピング」、自分の見えていない面がわかる「エスノグラフィ」、相手(お客様)の真の嗜好をつかむ「ペルソナ」などのツールなどの解説をしていますが…、少し内容が古くなってるかも。
    本が出版されてから一度も読んでいません。そしてこれからも読むつもりはありません(笑)
  • デスクまわりはどんな感じ?
    資料や参考書籍も多くありますが、基本的にはスッキリしていますね!

ロフトワークディレクター 分解シリーズ

ロフトワークディレクター分解シリーズ Vol.1

ロフトワークディレクター分解シリーズ Vol.3

ロフトワークディレクター分解シリーズ Vol.4

ロフトワークディレクター分解シリーズ Vol.5

ロフトワークディレクター分解シリーズ Vol.6

執筆者

Hiroki Tanahashi

イノベーションメーカー棚橋 弘季

芝浦工業大学卒業後、マーケティングリサーチの仕事を経て、1999年頃よりWeb制作の仕事に携わるように。2004年からは株式会社ミツエーリンクスにてWeb戦略立案や人間中心設計によるコンサルティング業務に従事。 2008年からは仕事の対象をWebからプロダクト/サービスへとシフトし、株式会社イードにてユーザーリサーチやインタラクションデザインに関するコンサルティングを経て、2009年株式会社コプロシステムにてクライアント企業のための新規商品/サービス開発支援業務や社内イノベーター育成のための教育プログラムの提供などを行う。 2013年にロフトワーク入社。サービスデザインの領域を中心に、クライアントのビジネス活動にイノベーションを実現するための支援業務を担当する。

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