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Column コラム

“最先端の研究所のキーワードは、マジックと遊び心!?”MITメディアラボ訪問レポート

Nami Urano

コーポレート
浦野 奈美

みなさん、「MITメディアラボ」をご存じですか?

アメリカで理系大学の最高峰といわれるマサチューセッツ工科大学の先端研究所で、24の研究グループが、世界中の企業と連携しながらバイオテクノロジーやロボティクス、コンピュータサイエンス等、あらゆるテクノロジーの研究をしています。

この研究所のすごいところは、とにかく「枠」がないこと。
今回初めてMITメディアラボに行ってきたのですが、その自由さをすごく感じたし、とにかくかっこいい!
今回ラボが設立30周年を迎えるということで、所長補佐を務める林と、30周年イベントに参加してきました。少し前のことになりますが、みなさんにもその感動を共有できたらと思います!

10月末のボストンは、ダウンが必要な寒さです。(オブジェに乗っている人はTシャツのようですが……とても寒いです!)紅葉がきれい。

とっても広いMIT。まるでひとつの街のようで、どこを歩いてもMITのWiFiが繋がります。MITメディアラボの周りまで来ると、沿道に30周年の旗が。

イベント受付。ブローシャー、ネームタグ、ポスター、会場装飾、すべてのクリエイティブが白黒で統一されていて素敵でした。今回は3日間のプログラムで、はじめの2日間はすべてのグループのリサーチアップデートとオープンハウス(ラボ見学)、そして3日目が30周年記念イベントでした。

各研究グループのロゴがかっこいいですね!

始まりました! 所長の伊藤穰一さんからはMITメディアラボで何を大切にしているか、という話。
ちょっと見にくいのですが……科学、アート、デザイン、そして技術を、自然と文化、観察と創造という視点でサイクルとして関係づけた図で、教授のNeri Oxmanさんがつくったものだそう。
科学単体だけでは問題解決はできない。常にストーリーと哲学をもって研究に取り組む、MITメディアラボらしい考え方だなあと感じました。
また、この図を踏まえた「Bio is new digital」というメッセージからは、バイオテクノロジーを科学の世界にとどめず、MITメディアラボとして積極的に受け止めようとしていることが伝わりました。

各研究グループのリサーチアップデートセッションは、24のグループを6つのカテゴリーに分けてセッションが進められていて、わかりやすいメッセージの伝え方が印象的でした。

- +/-30 Years of Biocomputing
- +/-30 Years of Media
- +/-30 Years of Learning
- +/-30 Years of Art and Design
- +/-30 Years of Data
- +/-30 Years of Space

どれも面白かったけれど、私が特に面白いと思ったものをご紹介します。

足がないというのは障害ではなく、むしろ能力を広げるチャンスである

まず、BiomechatronicsグループのHugh Herrさん。義足の研究におけるトップランナーですが、神経に直接働きかけて足を動かすとか、もう神の領域! 足がないということは障害ではなく、むしろ能力を広げるチャンスなんだ、と改めて感じました。

ちょっと脱線しますが、MITメディアラボには「Director’s Fellows」という、MITメディアラボと協力関係にある研究者やアーティストがいて、その中にChristine Sun Kimさんという耳の聞こえないサウンドアーティストがいます。
彼女のコンサートに行くと、どこまでが「聴こえる」ことで、どこまでが体に響く振動なのか、どこまでが音なのかがわからなくなる感覚があり、まさに、「感覚が広げられている」感じがしました。

Hugh Herrさんは、障害を能力を広げる伸びしろにしている第一人者。彼自身はとても物腰が柔らかくて静かに淡々と語るのですが、そのベースにある情熱が伝わってきて、感動しました。

ちなみに、私は彼のTEDのスピーチで泣きました。

不規則な睡眠をとる人のほうが、規則的な睡眠をとる人よりストレスが大きい傾向に

Rosalind Picardさん率いるAffective Computing Groupでは、20年前から、人の感情と外的影響ををコンピュータサイエンスで関係づける研究をしています。今では腕時計型のデバイスで心拍数を測るサービスがたくさん出てきている分野ですね。

今回彼女が発表したのは、眠りと鬱の関係。ウェアラブルセンサーで心拍数や呼吸、脳波、汗など体のあらゆる情報を集めたところ、不規則な睡眠をとる人のほうが規則的な睡眠をとっている人よりストレスが大きい傾向にあるという研究結果が出たとのこと。

ストレスはみな感じているけれど、あるポイントで鬱状態に向かう人と、回復する人がいる。このポイントで鬱にならないように救いたい、30年以内に80%を救いたいんだ、と訴えていました。

データサイエンスを用いて真実を見よう

Deb Royさんが率いるSocial Machines Groupは2014年にできたばかりのグループで、データサイエンスを用いて、ジャーナリズムや教育、社会問題の解決を目指そうというもの。
プロジェクトはたくさんあるけれど、一貫しているのは、ネットワーク上だけの情報に頼らず、コミュニティや相関関係、地理などオフラインの情報も照らし合わせることで真実を見ようとしていること(写真参照)。

ソーシャルネットワークで世界中の人と人が繋がるいま、私たち一人ひとりもメディアになっていて、人に偏った情報が拡散され真実が見えなくなることも多い気がします。
どのデータを分析して、どのデータと掛け合わせて見るのか。そこから見えてくる「真実」も、大きく変わってくるんだろうなあと感じたトークでした。

自動運転の車は通行人の命とドライバーの命、どちらを優先すべき?

そして、この問題。
自動運転の車は、通行人の命とドライバーの命、どちらを優先すべきか? 通行人が10人だったら? 通行人が子供だったら? Iyad Rahwanさんは、イベントの2か月前にメディアラボに合流したばかりのシリア出身の研究者。
Scalable Cooperationという研究グループを立ち上げ、人や組織、政治などの協力・補完関係を分析・再構築しようとしています。

動物の細胞を培養して食べる、ということをどう捉えるべきか? お金の価値を政府も銀行も関わらず私たちが決めることに対して法的制約はないか?
バイオテクノロジーにしても、仮想通貨にしても、そして人工知能にしても、いざこれらのテクノロジーを社会に組み込もうとした時に、法律や政治、倫理を抜きに語れない。最近、特にこうした問題を皆で考えることが急がれているんだろうな、と感じました。

Pepperの次のパーソナルロボット?「jibo」

Personal Robots Groupで、コミュニケーションや学習に取り組むCynthia Breazealさんは、jiboという家庭用ロボットの開発者かつファウンダーです。
日本では2016年発売予定とのこと。欧米ではすでに売れ行き好調だそうで、Pepperに対抗するロボットになるのでしょうか……すごく楽しみ!

研究室を自由に見て回れる、オープンハウス!

トークの後は、「オープンハウス」という、各研究室を開放し来場者に行う研究内容のデモンストレーションが毎日開催されていました。
実際に触ったり、研究グループの方々と話したりできるので、時間を忘れるくらい楽しくあっという間に時間が経ってしまいました。

副所長の石井裕さんが率いるTangible Media Groupが、ニューバランスと共同開発したウェア。
湿度に反応して形を変える素材で、納豆菌の機能を使っているとのこと。まるで生き物のように、服が鱗みたく開いたり閉じたり……。

建物内にはピンクの光に照らされた農場も。

2日間とも、夕方はアンカンファレンスという、参加者誰もがディスカッションの主催者になれる時間もありました。これは、主催者を募るボード。

MITメディアラボ設立30周年、テーマは「心とマジックと遊び心」

そして3日目は、MITメディアラボ設立30周年のイベント。
テーマは、「Mind, Magic & Mischief (心とマジックと、遊び心)」。かっこいい。

司会者がマジシャンのPenn&Tellerだったり、有名タレントのMartha Stewartが出てきたり、元国連事務総長・Kofi Annanが来たり、チェリスト・Yo-Yo Maからビデオメッセージが来たり、VRとマジックを掛け合わせたパフォーマンスがあったり……と、豪華なイベントでした。

イベントの途中では、設立当時からメディアラボと連携をしているレゴ社から来場者にブロックが配られ、トークの序盤で突然「40秒でアヒルをつくってください」といわれるシーンが。
場内が一気に童心に戻ったかのようでした。レゴ社の代表Jørgen Vig Knudstorpさんからは、「今のこの気持ちが大事なんです! 楽しい!と思う気持ちが新しいものを生むんですよ」というメッセージ。素敵なトークでした。

長くなってきたので、レポートはこの辺で。
実は、全編はこちらから視聴が可能です。イベント休憩時間後のジングル映像もかっこよかったので、ぜひご覧ください!
http://www.media.mit.edu/video/

全体を通して感動したのが、どの研究グループにも共通してストーリーがあるということ。
大局的な視点をもち、技術だけを見ることなく社会の課題解決を見ている。だから、あらゆる事象やテクノロジーを横断できるし、芯がぐらつかない。

ひるがえって、自分の大学時代はどうだったか? と思い返してみると、視野がすごく狭かったなぁと感じます。
私は社会保障のゼミにいましたが、大学時代にこのMITメディアラボ的な感覚があったら、たとえば、工学部の門をたたいて、一緒に高齢化のデータを分析しませんか?なんてことも言えたじゃないか、と思います。
当時、ビッグデータ分析なんて思いつきもしなかったし、テクノロジーを活用するなんて考えるどころか畑が違うからと端からはじいていました。でも本来はすべて繋がっているもので、横断的に連携する必要がありますよね。

いわゆる統計学のグラフで現れる「少数派」の部分にあたる人々(variance)ばかりが集まっているのがMITメディアラボだよ、とイベントのオープニングで、教授のAndy Lipmanさんが言っていましたが、なぜ、メディアラボが「Anti-Diciplinary(皆が他の誰でもない)」をコンセプトに多様な人を集め続けているのか、少し体感できた3日間でした。

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