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Column コラム

Talk Session 2015

mitsu_suwa

代表取締役社長
諏訪 光洋

chiaki_hayashi

共同創業者、代表取締役
林 千晶

「振り回されない。好きなことで“テイスト”を磨く」Talk Session 2015

ロフトワークの株主総会が行われた12月5日(土)夜、日頃お世話になっている方々をFabCafeにお招きして、少し早めのクリスマスパーティを開催しました。パーティの冒頭では、ロフトワークの株主でもある北野宏明氏(ソニーCSL代表取締役社長)と伊藤穰一氏(MITメディアラボ所長)が登壇し、ロフトワーク代表の諏訪光洋と林千晶のそれぞれとトークセッションを行いました。
ロフトワークを設立当初から知る2人が語った、これまでの15年と未来を見据えたトークの模様をお伝えします。

これまでの15年、これからの15年

[Talk SessionⅠ:北野宏明×諏訪光洋]

PINOからPepperまでの15年

諏訪:
ロフトワークを設立して今年で15年が経ちましたが、今日は株主でもある北野さんと、2000年から現在までの15年とこれからの15年について話をしてみたいです。北野さんは肩書がたくさんありますが、何とご紹介したら良いでしょうか?

北野:
ソニーCSLの所長を務めつつ、それとは別にシステムバイオロジーの研究所を運営していて、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の教授もやっています。

諏訪:
北野さんは未来を見通すとてもビジョナリーな方なんですけど、出会った頃の15年前には既にオープンソースのロボット「PINO」を作っていましたよね。

北野:
PINOは二足歩行のヒューマノイドロボットです。当時、学会などではそこそこ動くロボットはあったんですが、論文を読んでも情報がほとんど公開されていないので「けしからん!」と思って、秋葉原で買える部品と東急ハンズの工作精度で誰でも作れることをコンセプトにしました。それで図面を全部公開したら世界中からダウンロードされまして、その時にPINOの部品を売る会社を作りました。その会社の最初の売上って何だかわかりますか?

諏訪:
いや、何でしょうね。

北野:
2000年の年末に東芝EMIから連絡があって、「PINOをプロモーションビデオに使いたい」って連絡があったんですよ。

諏訪:
ああ! 憶えています。

北野:
そう。あのPVでのフィーが最初なんですよ。

諏訪:
それから15年経って、今年はロフトワークにもいる「Pepper」が発売されました。ここまで15年かかったのは北野さんからすると順当ですか?

北野:
Pepperを作ったアルデバランという会社は、もともとSONYがやっていたAIBOリーグのフランスチームのエンジニアたちが作った会社で、Pepperの前に「Nao」というヒューマノイドを作ってるんです。だから、全部で15年ですけど、Pepperだけだったらそこまでかかってないと思いますね。

ロボカップはオープンイノベーションの競争

諏訪:
北野さんは、ロボカップの提唱者でもあるわけですが、アイデアが生まれたのはいつ頃ですか?

北野:
第一回目の開催は97年ですが、構想は93年くらいですね。ロボカップは「2050年までに、FIFA World Cupのチャンピオンチームに勝利する完全自律型ヒューマノイドロボットのチームを開発する」ことを目標にしました。ロボカップのルールとFIFAのルールではいろいろ違いがあってその対照表があるんですけど、毎年その差分を減らしていって、何年か後にはFIFAと完全に同じルールになる予定です。

諏訪:
それはつまり、最初からロボットの進化がデザインされていたということですよね。

北野:
ロボカップはオープンイノベーションの競争なんです。毎年世界大会が終わった翌日に中身を全部公開するので、勝つためにそれ以上のものを作らないといけない。最初は真面目な研究者から研究費を使ってサッカーするロボットを開発するのかって批判もあったんですけど、そのオープンソースから倉庫を自動的にマネージメントする荷物の管理システムが開発されて、アマゾンに800億くらいで買収されたんです。キバ・システムというんですけど、アメリカのアマゾンは全部それで管理しています。そこから誰も文句は言わなくなって、今ではみんなロボカップから次にどういうスピンアウトが出てくるかを期待しています。

諏訪:
ロボットの開発と北野さんが研究されているシステムバイオロジーはどう繋がっているんですか?

北野:
人工知能の研究などをずっとやってきて、知能が進化の副産物であることに気がついたんです。ということは、生命自体をよく知らないと人工知能の革命は起きないと思って、生物学を勉強することにしたんですけど、従来の還元主義的な遺伝子やたんぱく質中心の研究から、システム志向へのコンセプト転換の必要性を感じました。そこで、新しい研究分野を作らないといけないと思って、95年くらいからシステムバイオロジーということを言い始めました。

諏訪:
僕も最近ようやくわかってきたんですけど、15年前に北野さんから「システムバイオロジーをやっていて」って言われた時は、正直この人は何を言ってるんだろう?って思っていました(笑)。

北野:
あの頃は、理解してくれる人はほとんどいなかったですからね。

テクノロジーの進化に振り回されないためにやるべきこと

諏訪:
ロフトワークは、何をやっている会社なのかってよく言われるんですけど、設立時から一貫して目指しているのは、クリエイターや面白い人やコトを社会とつなげて、クリエイティブの力で新しい価値を作ることです。一番最初の仕事は、たくさんのクリエイターたちと年賀状を作ることでした。これは今でも継続して毎年やっています。

北野:
15年前に、最初にJoi(伊藤穰一氏)のところに行く時は、まだ会社も駒場のアパートの一室だったよね。

諏訪:
そこからスタートして、2015年の今、ロフトワークはいろいろな企業や行政、大学などと一緒に仕事をさせていただいていて、イノベーションに取り組まなければいけないポジションがすごく増えてるんですが、混沌としている社会の中で求められているものって何なんだろうって思うんですね。例えば15年後の2030年はどうなっているのか。僕らはテクノロジーの進化や新しい出来事と一緒に走ることしかできないかもしれないけど、北野さんはその先が見えているのかもしれないなと思っていて。ちょっと未来のことを聞いてもいいですか?

北野:
いや、どうでしょう。僕も見えてないんじゃないですかね。ただ、技術の進化というのは、僕らの想像以上のことが起きるんですよ。確かにそれに対応しなければいけないけれど、それだけだと振り回されてしまうから、やっぱり自分で仕掛けて作っていく部分があるといいですよね。そこは自分である程度コントロールできるわけだから、新しいことをどう取り込むか、あるいは取り込まないかっていう風に考えていけるし、サプライズがあったとしてもいい方向に修正すればいい。

諏訪:
北野さんにとってはその軸になっているのがシステムバイオロジーなんでしょうね。

北野:
今はこれはこうした方がいいっていう単一の価値観でやるのはもう難しくて、もっと全体のエコロジーとか複雑なダイナミクスというものを見なければいけない時代です。トラディショナルな考え方のままやっていると相当痛いしっぺ返しに合うから、日本の大企業は、それこそロフトワークみたいな会社と組まないと生き残れないんじゃないでしょうか。だから、ロフトワークの役割はこれからますます重要になっていくと思いますよ。

喜怒哀楽と楽しみな未来

[Talk SessionⅡ:伊藤穰一×林千晶]

現在MITメディアラボ所長を務めるJoiこと伊藤穰一氏は、15年前、会社設立から間もない頃のロフトワークに投資を決めてくれたエンジェル投資家のひとりであり、クリエイティブの力で新しい価値を生み出そうとしてきたロフトワークの15年を語る上で欠かせない人物です。
そんなJoiをよく知る弊社代表の林が、Joiが普段メディアでは質問されないようなテーマをぶつけてみました。

好きなことで自分のテイストを磨く

林 :
Joiはいつもはビジネス文脈で未来について聞かれていると思うので、今日はちょっと違う角度から、「喜怒哀楽」について質問しみようと思います。

Joi:
はい、どうぞ。

林 :
まず最初は「喜」。嬉しかったことで振り返って思い出すことは何ですか?

Joi:
僕は来年50歳になるんだけど、昔嬉しかったことと今嬉しいことは全然違うんだよね。昔は、例えば自分が得した時に嬉しかったりしたんだけど、そういうのはだんだんなくなってきて、今は自分の周りで面白いことが起こったり、世の中で繋がっていなかったものが繋がったり、究明されてなかったものが発見されたりすることが一番嬉しい。

林 :
ロフトワークって、嬉しい、楽しいっていうことしか仕事にしないんだけど、それってなかなかビジネスシーンで理解を得るのが難しいの。そういう時、いつもJoiなら何て言うかな?って考えて、Joiが「やってみなよ」って言うだろうなと思える時はやるようにしています。

Joi:
お金を儲けるために会社をやるっていうのはもう古いと思うんだよね。やっぱり良い人材を集め続けるには、お金儲けじゃなくて楽しいことをするべきであって、潰れさえしなければどんどん好き勝手やったほうがいいよ。好きなことをやっていると自分たちの美学とかテイストが磨かれてきて、それが必然的にお金にも繋がるようになるから。だけどお金目当てにやっちゃうとテイストがないものまで手を出してしまうから、どんどんダサくなるよね。そうすると人もお客も離れてしまう。長持ちさせるには分かりやすい文化とそれに合った人たちを集めて大事にするっていうことがすごく重要。


硬いものに体当りしても痛いのは自分

林 :
では次の質問は「怒」。あんまりJoiが怒ったことって見たことないんだけど、MITメディアラボの所長になった頃に、「久しぶりに怒っちゃった」って、ある教授を個別に呼び出して注意したことがあるのを覚えてる。怒っているJoiを見たのはそれくらいかも。

Joi:
うーん、僕は覚えてないな(笑)。たぶんそれはさっきの喜びの逆で、僕は庭師みたいな感じでメディアラボの環境を作ろうとしていて、そこに全体のバランスを崩すような人だったり石ころみたいなものがあれば怒る。というよりも、美学に反してイラッとするっていうことはあるかな。

林 :
Joiは人に怒りをぶつけないよね。「俺は怒ってるんだ!」っていうコミュニケーションの仕方はあまり見たことがないけど、怒っている時はどう伝えるの?

Joi:
でも、本当に怒るっていうのは、自分に怒る時だよね。何か腹が立つものがあるとして、硬いものに体当りしても痛いのは自分だから。例えばメディアラボの教授たちは一人ずつ違うアルゴリズムでゲームをやってるようなものだから、正面から怒ったって効果がないんだけど、彼らのアルゴリズムを理解しちゃえば、その方向を変えるために環境を解決するそれぞれのプロセスがわかる。それよりも腹が立つのは、個人的に自分の性格の見苦しいところが出ちゃった時かな。例えば、欲とか、カッコつけるとか、今の発言は自分があまり嬉しくない理由で言っちゃったなとかね。っていう言葉もちょっとカッコつけだよね(笑)。

林 :
何かを言ったり書いたりする時には、カッコよく思われるからじゃなくて、自分が思っていることを少しでも共有できたらいいと思って言うんじゃないかな。

Joi:
会話っていうのは相手ありきで、誰かと一緒に一つの考えを作っていくわけだよね。本当にコミュニケーションする時は、自分が何を言いたいかというよりも、相手が言ったことにどう反応して、それが何なのかということを考えなきゃいけない。そうする時に、自分の脳の中には美学を追求してる自分もいれば、お腹すいてる自分、スケベな自分、いろんなのがいて、言った後に変な自分が喜んだりすることもある。そういう時はこれは間違いだなって自分にイラッとするよね。

いつ全部無くなっても平気でいることを作る

林 :
では、次は「哀」。Joiにとって悲しいことって何だろう?

Joi:
年を取ってきたり、あと北野さんが取り組んでいるバイオロジーや自然科学を勉強すると、悲しいものがずいぶん変わってくるんだよ。例えば進化論でいうと、弱いものが死なないと進化できないわけ。やっぱり死って結構重要で、今は永久に生きる人間を研究している人たちがいるんだけど、その人たちと話しているとちょっと気持ちが悪いんだよ。死っていうのは自然なことであって、だから自然にだんだん近づいてくと、普段悲しいものってあまり悲しくなくなってきて、どちらかというと、もっとくだらないことで悲しくなる。自分に合わないことを言ってしまったとか、期待して食べてみたらおいしくなかったとか(笑)。

林 :
やっぱり時間は流れるから、今Joiが言ったように自然だって言えば自然なんだけど、二度と戻れなかったり役割が変わってしまうことは、悲しくはなくても、切なくなることはない?

Joi:
これはちょっと仏教的な考えかもしれないけど、アタッチメント、つまり何かにしがみついてしまう自分って弱くて、何かが無くなってちょっと悲しい気持ちが出てきたら、それそのものがマズい。いつ全部無くなっても平気でいることを作らなくちゃいけない。もちろん愛している人がいなくなったら悲しいし、それは自然なことだと思うけどね。


面白い人とだけコミュニケーションできるのが一番の贅沢

林 :
わかりました。では最後に「楽」。楽しいこと、楽しみにしている未来を聞いて、今日は終わりたいと思います。

Joi:
とにかく僕の一番の欲っていうのは学びたいこと、好奇心であって、それに一番大事なのはパッション。そうすると、自分の周りは常にエネルギーとアイデアを与えてくれる人に囲まれてることが一番の僕の欲で、その環境は毎年どんどん良くなっていってるんだよね。だから自分の幸せの度合いが上がっていると思う。面白い人とだけ自分がコミュニケーションできるっていうのが一番の贅沢で、それってインターネットやみんなのネットワーキングのおかげ。
比較的に優秀な人はお金儲けのためじゃなくて自分の自由とかクリエイティビティのために生きるようになってきたら、面白いことやってるからニューヨークとかベルリンでもすぐ見つかるんだよね。たぶん、東京にこんなにたくさん人がいる中で、99.9%の人はきっとつまらなくて会いたくない人なんだよ。その中で面白い人たちがすぐに見つかって、コミュニケーションを取れるようなカルチャーが日本にもできるとすごくいい。そういう意味で、ロフトワークがやってることが仕事になって15年間成長し続けているってことは、すごいことなんじゃないかな。

A "PLAYFUL" day @loftwork

A "PLAYFUL" day @loftwork from loftwork on Vimeo.

2015年12月5日は、ロフトワークにとって少し特別な、"PLAYFUL"な一日でした。 ロフトワーク社員全員が集まって、各人のアイデアやナレッジをプレゼンテーションする「Creative Meeting」が開かれたり、株主であるMITメディアラボ所長である伊藤穰一氏、ソニーCSL代表取締役社長・所長である北野宏明氏、そしてロフトワーク経営陣が集合する年に一度の株主総会で、ロフトワークの未来についてディスカッションが行われたり。
夜にはロフトワークのパートナーやクライアントを170名近く招いて毎年恒例のクリスマスパーティーを開催しました。
一日の模様を、動画でぜひご覧ください。

(文:小林英治)

執筆者

mitsu_suwa

代表取締役社長諏訪 光洋

1971年米国サンディエゴ生まれ。
慶応大学総合政策学部(SFC)を卒業後、JapanTimes社が設立したFMラジオ局「InterFM」(FMインターウェーブ株式会社)立ち上げに参画。クリエイティブ業務を経た後、同局最初のクリエイティブディレクターへ就任。1997年渡米。School of Visual Arts Digital Arts専攻を経て、NYでデザイナーとして活動。2000年にロフトワークを起業。

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