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Column コラム

 

インタビュー前編では現在進行系で行われている渋谷の“都市づくり”SHIBUYA HACK PROJECTのはじまりや目標について伺ってきました。ここからはロフトワークの棚橋弘季さん、渡部晋也さんにも参加いただき、ものづくりと都市づくりの交点について紐解いていきます。

ものづくりの主体が企業主体からユーザー主体へ変わってきている、というロフトワークチームの実感がおおきな原動力になっているこのプロジェクト。小さなアクションの積み重ねが新しい文化をつくり、これからの渋谷の輪郭を描いていく、という青写真にはそのアクションを下支えする土壌が不可欠です。

まちに漏れ出す未来の価値観

─ ものづくりの視点から都市を考えてみる、というのはとても魅力的ですが、大きなスケールの変化があるとも感じます。その隔たりを横断するような気付きがあったのでしょうか??

岩沢:今はまちに漏れ出している情報が多すぎて、例えば109全フロアを見てもトレンドが読めなくなっているんですよね。で、まちで何が起きているかというと、中心から少し外れたエリアににエッヂの効いた集客力をもった路面店ができていたりする。この状況って、人々の価値観や求めているものの変化の予兆のように感じるんですよね。

石川:SHIBUYA HACK PROJECTでは、すでに渋谷で活動しているハックの仕掛人にインタビューをする360°ラヂオというプロジェクトもおこなっています。以前取材した小さなコーヒーショップABOUT LIFE COFFEE BREWERSでは、世界中のコーヒーコミュニティにつながっている一方で、角地のほぼ外のような環境のお店なので近所のタバコ屋のおばあちゃんともとても仲良かったりするんですよ。

渋谷の”余白”を埋める仕掛け人たちとの対話をラヂオ形式で配信

だから近所の状況をよく知っていて、もしコラボレーションして今の渋谷に必要なサービスを考えてみたら、新しい視点が生まれるかも、とか、アンケート等ではない人や活動に紐付いた新しいマーケティングの手法にもなるかもしれないな、とか。めちゃくちゃニッチなニーズをつかめるかもしれないし、容易に日本という枠を飛び越えて行けるかもしれないですよね。

─ 面白いですね、ぜんぜん万遍なくない。いびつだけど、すごい鉱脈が見つかりそうな気がしてきました!

岩沢:マーケティングの視点を持ってまちを歩くとそんな風に見えてくる、じゃあ、SHIBUYA HACK PROJECTで仕掛ける側の人達と一緒にフィールドワークをしたらきっともっと見えてくることがありそう。そう思って、Street Furniture(前編参照)のフィールドワークでは東急の方、クリエイター、商店会の方たちと一緒にまちを歩いてみたんです。別の視点をもった人と一緒に歩いてみると、それぞれに「そんな所を面白がるの?!」という発見がありました。

視点が多様であればあるほど面白い、というのはものづくりも一緒で、仮説を立ててアイディアを形にして価値観を実験してみたいとき、仮説の時点で沢山の視点が必要になってきます。事業として取り入れられそうな事を見つけていくという点でも、できるだけ早く沢山の試作をつくって反応を見てみる事が必要です。

石川:ものを早く作る手段はたくさんあるし、誰でもできるようになってきてますよね。開発に何年もかけたものを展示場に置いて反応を見るのではなく、まちをフィールドに試作品をどんどん投入していくような状況にしたいですよね。

岩沢:都市計画的な姿勢だと何十年とかかってしまう所を、短期で実験しながらすすめていくタクティカル・アーバニズムの考え方の中にも、ものづくりの場「まちの研究所」を持つことは大事なんじゃないかなと思っています。

沢山の当事者を巻き込んで多様な視点を得ていくことは、ものづくり・都市づくりに両方に通じる重要なプロセス。個人がアイディアをすばやくカタチにできるようになったものづくりの現状と小さなトライアルを重ねながら進めていく都市づくりには親和性の高さが伺えます。 一方、マスタープラン主導の都市計画とは全く逆のアプローチをとるSHIBUYA HACK PROJECTでは、大きなビジョンを描きにくい、というボトムアップ型ゆえのジレンマも。

まちの自由度を設計する、という新しい計画のかたち

渡部:クライアントワークでは通常、マイルストーンや細かい事業計画が求められがちだと思います。SHIBUYA HACK PROJECTのようにボトムアップで実験を重ねていくプロジェクトって、なかなか細かい事業計画を立てづらいと思うんだけど、そのジレンマってあった?

石川:それ、今まさに悩んでいるところ!けれど、ビジョンやコンセプトを作ることはとても重要だと思っているので、今期はひとまずやってみる、というフェーズです。その結果を以ってこの先の目標を立てていこうと思っています。

渡部:ボトムアップのプロジェクトだからこそあるジレンマについて、棚橋さんはどう考えてますか?

棚橋:計画の仕方が変化してきている、というのは感じるね。僕は仕事で空間づくりのお手伝いしているんだけれど、オフィスとしても使えて、たまにイベントスペースにできて、料理もできる部屋、みたいな自由度を求められることが多くて。単一機能ではなくユーザーがある程度手を入れてカスタマイズできるような計画が増えてきています。まだまだ小さな市場だけれど、一商品一機能で生じてしまうスキマ空間を埋めていくようなあり方。それを「ハック」と呼んでいるのでは?

これまでは完成形を完璧に計画して提案することが求められていた、けれど、このSHIBUYA HACK PROJECTでは完成形をイメージせずにこんな部品、こんな要素があればまちが変わっていく!という仕組みを計画していると思います。共有すべき「ビジョン」という言葉の定義もいわゆる完成図ではなくて、色んなことが出来るまちのイメージ、自由度の高い設計図というほうがしっくりくる。

─ これまでのロフトワークのお仕事での実感なんですね。

ロフトワーク 棚橋 弘季

棚橋:例えばこのカメラ(OLYMPUS AIR)だと、ほとんどレンズしか無いような作りなんだけどスマートフォンと連動することでカメラの機能をハックしている。アプリやアクセサリーでカスタマイズすることでカメラの自由度が格段に上がっていて、何と何をどう繋ぐか?つまり、どんな入り口を開けばユーザーが自分仕様に使うことが出来るか?というところを主に設計しています。
SHIBUYA HACK PROJECTも同じように、今あるスキマをどんな風に開放してルール作りをするか、という所がポイントになってくるんじゃないかな。

OLYMPUS AIR

─ ユーザーに対する信頼をすごく感じます。能動的な、「どうやったらもっと面白く使えだろう?」というユーザーの気持ちがないと使いこなせないですよね。

棚橋:そうそう。なのでこれを作るときには商品単体ではなく、一般の人がいきなり手にして困ってしまう前のワンクッションとして、このカメラを面白く使ってくれるコミュニティを巻き込んで、アプリ開発やアクセサリー開発も一緒に進めていました。

石川:ロフトワークの空間づくりでも、使い方が明白で機能的な場所を作るというより、なるべく余白の多い状態で手渡して、そこを上手く使っていける人を一緒に育てていくやり方が多いですね。ユーザーコミュニティを育てて空間の機能を上書きしていくような。

岩沢:今期のSHIBUYA HACK PROJECTで私達がまずやってみる、近しい人達から巻き込んでいく、というのはすごく重要なことだったと思います。まちの余白に見えているものは本当に余白なのか、何が描けるのか、トライアルを通じて深く考えてみる事ができたし、そこにある自由度の大きさを手探りながらも測ってみることができました。

─ 今回のイベントではきっとSHIBUYA HACK PROJECTの入り口が広がって、この活動にタッチできる人や協働したいという人も増えるでしょうね。

HACK OUR CITYから見えること/見たいこと

─SHIBUYA HACK PROJECTからより広く深く都市づくりをと企業の「ものづくり」との共通点を探りながら、これからの新しい価値創造のプロセスを考えるイベント、12月2日開催HACK OUR CITYは誰でも参加することができます。

─ 沢山のプロジェクトが同時多発して渾然としているところに、第一部のパネルディスカッションを経て言葉で定義されることで共有可能なものになる、という瞬間が生まれそうでとっても楽しみですね。しかも、それだけでは終わらない。

岩沢:第二部では私達の活動はもちろん紹介させてもらいますし、イントロダクションではパルコの高野公三子さんにファッションカルチャーの視点から渋谷の変遷を話してもらえたり、「渋谷のラジオ」のとてもチャレンジングな人達も紹介できそうです。地理人の今和泉さんと渋谷の新しいスキマを妄想地図で探してみよう、というワークショップもあります。

「東京R不動産」を手がける馬場 正尊さん、シブヤ経済新聞編集長の西 樹さん、ACROSS編集長の高野 公三子さんなど”都市”を舞台にさまざまなプロジェクトを手がける8名のゲスト

今回の参加者の方は都市づくりやまちに興味のある人だと思うので、ワークショップで協働すると発見もありそうだし、アイディアを考えるだけでなくて実際に形にできたら良いなと思っています。渋谷の未来を考えてみる機会やイベントって結構沢山行われているんですが、なかなか実現までには至らないようです。

SHIBUYA HACK PROJECTではひとまず実行してみることの大事さが分かってきたところで、プロトタイプを作れる環境もあります。実際にやってみるとその良し悪しが判断できるだろうし、実現可能かどうかの感覚もつかめると思うんです。
イベントを通じてアイディアを俯瞰して見ることで沢山のヒントや発見がありそうで、企画者としても楽しみです。

石川:渋谷という素地にもっとユニークな絵を描きたい、その許容値を広げていきたい、ということが伝わると良いなと思います。

渡部:SHIBUYA HACK PROJECTという実践を通じて、今のものづくりの文脈の少し先、ゴールの描き方とアプローチが様変わりしている、という事を感じられるイベントにしたいですね。

インタビュー/テキスト

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