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Column コラム

loftwork place

Chiaki Hayashi

共同創業者、代表取締役
林 千晶

ロフトワークでは、空間デザインを通じて、新しい働き方の実験をしてきた。新しい働き方といっても、「生産性を高める」という意識はない。そもそも生産性という言葉の正体が、自分にはよく分からない。それは、気持ちいいのか、悪いのか。味方なのか、敵なのか。

3ヶ月の仕事を、3日で終わらせるための空間

※本記事の前半は、林千晶のブログからの転載です。

FabCafe MTRLには特殊なスピーカーと照明が備え付けられている


空間デザインを通じた、新しい働き方の研究

ロフトワークでは、空間デザインを通じて、新しい働き方の実験をしてきた。新しい働き方といっても、「生産性を高める」という意識はない。そもそも生産性という言葉の正体が、自分にはよく分からない。それは、気持ちいいのか、悪いのか。味方なのか、敵なのか。

ロフトワークが目指しているのは、例えば「大切な仕事があるのに、目の前の雑務に追われて気付いたら一日が終わっていた」なんていう気持ち悪さを減らすこと。自由に発言のできない、息苦しい会議をなくすこと。あるいは、クライアントともパートナーとも「なぜ、なにをやるのか」を腹落ちさせて、信頼しあう関係を増やすこと。どんどんアイディアが湧いてくる創造的な会話を増やすこと。 圧倒的にポジティブで、確かに意味があると感じられる時間(あるいは体験)を、必然的に生み出すこと。
それがロフトワークが空間をデザインするときの目標だ。

最初の実験となったロフトワークのミーティングスペース。ここから空間プロジェクトがスタートした


道玄坂ピアビルの10階→1階→2階→そして3階

最初にデザインしたのは、ロフトワークオフィスがある道玄坂ピアビルの10階。
COOOP10」と名付けたミーティングスペースには、壁の仕切りが一切なく、植物やホワイトボードなどで、各自が緩やかにゾーニングする。キッチンカウンターを配置したことで、真面目な仕事脳とワクワクする遊び心が、上手に結びつくようになっている。色彩豊かな食事を前に交わす会話は本音に近くなり、仕事を越えて、人と人を結びつける。また、家具や椅子など構成物を移動しやすくすることで、昼は打ち合わせ、夜はイベントやライブ会場に一変する。時間帯、曜日によって場所の使われ方が変わる。多様な表情を持った空間のデザインだ。

次に作ったのは1階の「FabCafe Tokyo」。 世界初のデジタルものづくりカフェだ。
3Dプリンターやレーザーカッターなど、デジタルファブリケーション機器が進化する中で、“個人”が主体となった「ものづくり」の未来を、デザイナーや学生などを巻き込んで、自分たちで作りたいと考えた。現在、東京だけでなく、北はアイスランド、南はチリやケニアなど、世界中から人が集まり、3日に1度はワークショップやイベントが開催される、ダイナミックな共創の場に育っている。

FabCafeの想像以上の賑わいと、利用者からの「長期的にFabCafeを利用したい」「FabCafeコミュニティと継続的な関係を築きたい」というリクエストに応えて生まれたのが2階の「FabCafe MTRL」だ。
個人のものづくりを起点としながらも、1つフロアを上ることで、より専門的なコラボレーション空間となっている。素材、部品、ソフトウエア、ツールの品揃えを充実させ、建築家、エンジニア、デザイナーなどプロフェッショナルな個人が、インパクトを追求したプロジェクトを行う場になっている。

壁や棚にはさまざまな工具や素材が並ぶFabCafe MTRL

2017年3月にオープンした3階「COOOP3」。HAPTIC DESIGN Projectも同居しています!(Photographs by Gottingham)


ホワイトカラーの時間の使い方を再考する

そして、最新の実験が「COOOP3」だ。デスクワークを中心とする私たちは、有意義に時間を使えているだろうか、という問いが起点になっている。

数年前、アジャイル開発で有名なPivotal Labsの創業者Rob Meeが、プログラマについて興味深い話をしてくれた。

“未熟なプログラマは、何に時間を使うか。彼らはコードを理解して書くことよりも、わからなくてアイドリングしていたり、コードの間違いをあてもなく探したりすることに多くの時間を割いてしまうんだ。そんな非生産的な時間を減らすために生まれたのが、学びを早めるペアプログラミングであり、小さくても、確実に動くコードを積み重ねるアジャイル開発なんだよ”


コーディングの知識が少ないので、理解が違っている部分もあるかもしれないが、非常に説得力のあるコメントだった。同時に、デスクワークをする人間にも、同じように、陥りがちな無駄なプロセスがあるのではないかと感じた。

例えば、打ち合わせの時間。 互いに活発に意見を交わし、価値を生み出していく打ち合わせと、事前に資料を用意して合意を得るための打ち合わせ。どちらの打ち合わせが多いだろう。定例打ち合わせを前提に、1週間かけて資料を準備して、打ち合わせで説明をして、承認をもらう。このフローに慣れている人は、実は「考える」ことよりも、コンセンサスを得たり、調整するプロセスに多くの時間を使ってはいないか。

COOOP3には大きな丸太があり、「ホワイトボード立て」としても、仕切りとしても活用できる(Photographs by Gottingham)


COOOP3で目指すのは、こんな働き方からの脱却だ。 この空間では、主要メンバーが揃って議論し、イメージをプロトタイプし、MVP(Minimum Viable Product: 検証に必要な最低限の機能を持った製品)まで落とし込むプロセスを一気通貫で実施することを想定している。クライアントも、デザイナーも、エンジニアも、一緒に考えて、議論して、形にする。その過程には、アイディアを説明するための「資料作り」も、相手から承認を取るための「打ち合わせ」も不要になる。ただ、議論を交わし、価値の本質を捉えることにフォーカスする。

誰が何の作業に取り組んでいるか、どれだけ進んでいるかを明らかにするために、2-3時間ごとに進んだ部分の資料やデッサン、素材を壁一面に張る。どこが難しくて、どこが進んでいるかすぐわかるので、互いにサポートもできる。だからCOOOP3は、ホワイトボードで空間を囲めるようになっている。昨年体験したデザインリサーチからの学びでもある。(詳しくは「デザインリサーチ実践ガイド」を見て欲しい)

週1回、2時間の定例会議を3ヶ月続けると、費やす時間は24時間。プロジェクトルームだと、1日8時間の作業を3日間続けると24時間。同じ24時間でも、薄れかけている記憶を資料頼りに思い出し、コンセンサスを得ながら進める従来の打ち合わせとは、圧倒的に成果の強度が異なることは、想像に難くないはずだ。

ここからどんな成果が生まれるか。クリエイティブに関わる私たちの、新しい実験。

設計:大野友資(DOMINO ARCHITECTS
家具:飛騨の森でクマは踊る

(Photographs by Gottingham)

最先端技術と出会い、デザインの未来を生み出すプロジェクト空間、COOOP3

──by ロフトワークPR

プロジェクトを成功させ質を高めるために、空間デザインはどうあるべきか。そんな問いから、限られた時間や条件のなかで“フロー状態”を生むような「ウォールーム(War room)」「プロジェクトオフィス」という概念が、米国で生まれつつあります。常時50以上のプロジェクトを動かしているロフトワークが考える、私たちなりの「ウォールーム」として「COOOP3」は生まれました。

2017年3月に行われた内覧会では、代表取締役社長・諏訪より「イノベーションはどんな場所で生まれるか?」という問いから、さまざまな海外事例のリサーチを踏まえて今回のCOOOP3の開発に至る経緯を紹介。会議室を転用するといった例はあっても、「イノベーションを生み出す」という目的に最適化され、ゼロから企画・設計されたウォールームは、日本ではおそらく初めて。

設計を担当した建築家・大野友資さん(DOMINO ARCHITECTS)は、「物も人の出入りも多く、流動的な空間になることが予想されたので、できるだけシンプルで骨太なデザインを運用プログラムとともに提案した」と語ります。「情報にヒエラルキーを生み出さない」ため、なるべく影を作り出さないよう建築と一体化された照明など、細部まで考え抜かれた工夫が。

左)建築家・大野友資さん 右)慶應義塾大学院大学・南澤孝太准教授


いち早くCOOOP3にラボを構えた「Haptic Designプロジェクト(*) 」からは、南澤孝太准教授(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)が最新の取り組みを紹介。ロフトワークの運営協力のもと、建築家やファッションデザイナーといったクリエイターと共創し、「触感のデザイン」という新しい領域を社会にどう浸透させていくか?を探っています。2016年3月に第一回の授賞式を終えた「HAPTIC DEISGN AWARD」の反響も大きく、今後ますます注目が予想されます。

実際にCOOOP3を内覧し、使われ方やプロジェクトのドライブ感を肌で感じた来場者の皆さんからは、たくさんの質問と驚きの声が飛び交っていました。

「この空間でロフトワークと一緒に、イノベーションを生み出す実験をしてみたい!」 そんな声をお待ちしています。

(*)Haptic Design(ハプティックデザイン)プロジェクト
JST ACCEL 身体性メディアプロジェクトが主体となり、ロフトワークの協力で企画・運営するプロジェクト。「感触」をデザインする、今最も新しい製品が生まれている技術領域のひとつ。触感をデザインする未来の職能「触業(ハプティック・デザイナー)」の発掘・育成も目指す。

執筆者

Chiaki Hayashi

共同創業者、代表取締役林 千晶

1971年生、アラブ首長国育ち。2000年にロフトワークを起業。Webデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティデザイン、空間デザインなど、ロフトワークが手がけるプロジェクトは年間530件を超える。書籍『シェアをデザインする』『Webプロジェクトマネジメント標準』『グローバル・プロジェクトマネジメント』などを執筆。2015年4月、森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す「株式会社飛騨の森でクマは踊る」を設立、代表取締役社長に就任。

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