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Column コラム

大学選びの新しい体験をデザインする 鼎談 — 立教大学のWebサイトリニューアルとは何だったのか —     第1部:大学選びの「再編集」とは

プロローグ

大学受験の風物詩ともいえるセンター試験の廃止を2020年に控え、
カリキュラムの見直しや受験システムの変更など、さまざまな変化の真っ只中にある教育界。

大学からの情報発信も、これまでとは違ったアプローチが必要なのではないか。
これからの時代に求められる大学サイトのあり方を模索し、
単なるWebサイトのリニューアルではなく、
「大学選びの質のアップデート」に挑んだ、立教大学のWebサイトリニューアルプロジェクト。

1年半に及んだプロジェクトの中心で、答えを探し続けたロフトワークの寺井翔茉さんと
コピーライター/プランナーの宗像誠也さん(ホワイトノート株式会社)の2人に、
今回のリニューアルで目指した「新しい大学選び体験」について話を聞きました。

聞き手は、ライティングの段階でプロジェクトに加わったコピーライターの足立遊が担当します。



鼎談メンバー

ロフトワーク
シニアディレクター 寺井 翔茉
本プロジェクトの全体PM及びクリエイティブディレクションを担当

White Note Inc.
コピーライター/プランナー 宗像 誠也
本プロジェクトのプランニング及びライティングを担当

わわわ
コピーライター 足立 遊
本プロジェクトのライティングを担当

第1部 「大学選び」の再編集とは

リサーチで見えてきた大学選びの実態

足立
僕は、このプロジェクトに途中から参加したこともあって、そもそもの経緯をよく知らないので、まずはそこから聞いてもいいですか?  

寺井
立教大学のサイトは10年近く前に作られたもので、スマホやタブレットへの対応も課題でしたが、何よりも、受験生向け、在学生向け、教職員向けの情報が混在していて、すごく見づらかった。

受験生も見るページに、学内向けの健康診断のお知らせが出ているみたいな状態でした。
ずっと問題意識を持っていた立教の広報課の方々は、ただ単にサイトの見た目をリニューアルするのではなく、大学サイトのあり方や存在意義って何?というところからサイト全体を再編集したいという思いがあって、ロフトワークにお声がけいただきました。

足立
それが2015年の秋で、サイトを公開したのが2017年の3月。約1年半に及ぶプロジェクトですが、具体的にはどんなアプローチや取り組みがあったんですか?

寺井
まず、大学広報のミッションを再定義するために、3ヶ月かけて徹底的なリサーチを行いました。学内の各部門にヒアリングをして課題をあぶり出したり、フィールドリサーチや業界動向、競合調査、アクセス分析などを通してターゲットを見直したり、その周辺の人々にインタビューしたり。

また、それと並行して、サイト構造をゼロから設計し直しています。学内と学外向けの情報が混在して約3万ページあったサイトを、広報課の方と一緒にカードソーティングという手法を使いながら、学外向けに絞り込んで2,000ページにまで整理しました。新しいサイトマップを作って、さあ中身をどう作ろうかという段階で、宗像さんに入ってもらいました。

ロフトワーク シニアディレクター 寺井 翔茉(プロジェクトマネージャー)

宗像
ものすごいサイトマップを見せられたのを覚えています(笑)。たしか、僕が入ったときにはもう、ターゲットは高校1年生、2年生に設定されていましたよね。

寺井
そうですね。2020年のセンター試験廃止に向けて高校でもカリキュラム改定があり、そうなると高校3年生になっていきなり大学を選び始めるというよりは、1年生、2年生ぐらいから進路を考える必要が出てくるな、と。

宗像
はい、そうでしたね。

寺井
それから、リサーチを通して見えてきたのは、「どうして高校生は、偏差値や就職率をもとになんとなく大学を選んでしまうのか」ということでした。 その理由は、そもそも、まだ経済学部と経営学部の違いもよく分からない高校生に対して、大学側が「専門的に学べます」とか「キャリア教育が充実しています」といった高校生にとってはリアリティのないことを一方的に発信しているからなんです。そう言われても高校生にはピンとこないから、結局、人生の大切な選択を、偏差値や就職率、学費や大学のサービス内容などのスペックに頼ってしまう。

足立
たしかに。大学選びって、まずは文系か理系か、国立か私立とか、よくわからないまま分かれて、あとは偏差値の表を見て、だいたいこの辺かな、みたいに選んだ気がします・・・

宗像
ほんと、僕もそうでした。

寺井
でもそれって、親とか高校の先生の物差しなんですよね。とはいえ、親や先生に責任があるわけじゃなくて、親は、自分の受験のときとは仕組みや環境が違いすぎて分からないし、先生は、日々忙しすぎて、個々の大学の研究までは手が回らない。だから結局、スペックを元にしたアドバイスになりがちなんです。今の時代って、選択肢や情報が多すぎて、「選択する」という行為がすごく難しい時代になっていると思います。

足立
なるほど。

寺井
学内アンケートの結果では、「自分で立教を選びました」という学生は在学中の満足度がすごく高いのだけど、「人から勧められて選びました」という学生の満足度は低かった。自分で選んだかどうかで、大学4年間の質が変わってくるんですね。

つまり、「自分で選んだ」と実感できるようにすることが、今回のリニューアルのポイントだと思いました。高校1、2年生が興味を持って自分の将来を考えられるように、「大学を選択する」という体験をアップデートしていきましょう、という話をしました。

大学選びとは、何を選ぶことなのか。

足立
「大学選びの質を向上させる」というミッションを決めて、具体的には、どんな体験を作ろうという話になったんですか?

宗像

高校生が進路を考えるときに本当に必要な情報って何かを考えていて、はじめに話していたのは、立教大学というよりも、学問や学びの中身に対して興味を持ってもらえるようなコンテンツを作っていけたらいいね、という話をしていました。

寺井
大学って、就職準備のための学校じゃないよねという議論があって、特に立教大学は、学生が自立的に将来を選択できるように、幅広く教養を身につける「リベラルアーツ」ををひたすら追究してきた学校だから、そういう「学ぶ」という部分を中途半端にしてしまうのは、彼らの流儀に反することだと思っていました。

足立
学問の内容紹介をコンテンツのメインに据えて、そこの選択体験を変えていこうというのは、すごく本質的な考え方ですね。

寺井
何を知りたいのか、何に興味が湧いたのか、何をおもしろいと思ったのか。まずは、そういう自分の興味や関心に出会うことが、何よりも大切じゃないですか。

宗像
学びの興味を知るということは、結局、自分を知ることにもつながると思うんですよ。まずは、自分の興味を知らないと、その先の選択もできないはずだから。

足立
なるほど。自分の興味や関心を、きちんと自分に問いかける。

宗像

もし、こたえが見つからなくても、それはそれでいいんですよ。どんなことに疑問を持ったのか、どんな疑問を掘り下げてみたいと思ったのか、スペックで比較するくらいなら、そういう疑問と出会うだけでもいいんじゃないですかね。

そういえば、僕らの議論の中で、高校生が自分の興味に出会えるなら、最悪、立教にこなくてもいいのでは、という話まで出ていましたよね。

White Note Inc. コピーライター/プランナー 宗像 誠也

寺井
ありましたね。でも、そのときの宗像さんの言葉でよく覚えているのは、もし立教のサイトがきっかけになって何かに興味を持ったとしたら、きっといろんな大学を見比べたあと、最終的に立教に戻ってくるはずだって。興味のきっかけをくれたところってすごく強いし、戻ってくるよねって。

宗像
そんな話、しましたね。

寺井
高校1年生、2年生を意識していたこともあって、その話はすごくよく覚えています。興味との出会いから選択までの道筋をきちんと設計して、自分の意思で主体的に進路を選べるようにする。それが、大学選びの質を向上させることになるんだと思います。

いかに興味の入口を作るか。

足立
出来上がったWebサイトを見ると、その思いがトップページにも出ていますよね。大きく「自分にあった学びってなんだろう?」という問いかけがあって、すぐ横には「興味の分野から探す」という入口がある。そこをクリックすると、たくさんのキーワードが並んでいて、たとえば「ビジネス」というキーワードを選ぶと、5学部7学科が候補として表示される。まずは興味の入口を設けた上で、経済学的なアプローチはこうですよ、経営学的なアプローチはこうですよ、と違いが分かるようになっている。

寺井
学部をまたいで紹介するというのは、とても大事なポイントだと思っていました。学部や学科の名前って大学側が独自に決めたカテゴライズでしかないし、他の大学にも同じような名前がたくさんある中で、自分にあった学部を探せなんて、そんな乱暴なクイズはないだろう、と。「どんな学問があるのかもよく分からない中で、どう選べばいいのか」というのは、すごくちゃんと考えました。

だからキーワード選びもすごく大変で、宗像さんにもいっぱい出してもらいましたよね。

宗像
出しましたっけ?(笑)

寺井
大変すぎて、記憶が飛んでますね(笑)。宗像さん、ロフトワーク、立教の三者で、たくさん出し合いましたよ。

足立
そうやって興味のきっかけになるキーワードから各学科のページに入っていくと、それぞれ「経済学を学ぶって、どういうこと?」とか、「経済政策を学ぶって、どういうこと?」という詳しい説明があって、違いが分かるようになっている。

宗像
最終的にその説明文は学科ページのちょっと下の方になりましたが、もともとの構想では、いちばん上に来る予定でした。

寺井: そうそう。それも、自分たちの宣伝は後回しという考えで、カリキュラムの特長を説明するよりも、まずは学問自体の面白さに触れてほしかったし、そこから自分の興味を膨らませてほしいという思いがありましたね。

宗像
もし本当に興味のきっかけを作れるとしたら、それはすごく素敵なことだけど、一方でそれは誰かの人生を変えるかもしれないわけだけから、少なくとも、高校生のときの自分が見て本当にワクワクできるかどうかは、大事にしていましたね。

足立
すごく分かります。実際に学部や学科のコピーを書くときも、その学問についていろいろ調べて、掘って、掘って、ようやく自分で「面白い、学んでみたい」と思えてからじゃないと書けなかったです。

宗像
だから、ひとつの学科を書くのに、ものすごい時間がかかる(笑)。今までの大学案内に書いてあるような文章だと、きっと高校のときの自分はワクワクしないだろうし、その学問の魅力や面白さを、ちゃんと自分の中に腹落ちさせてからじゃないと書けなかったですね。

足立
難しい内容をどこまで噛み砕くかも気を遣いましたね。高校生にとっての分かりやすさと、立教大学が持つアカデミックな印象との両立というか。難しい話をするときって、ついイラストや図を使いたくなるんですが、あくまでも読んで理解してもらうことを目指したし、それがこのコンテンツの知性にもつながっていると思います。

わわわコピーライター 足立 遊

寺井
決して、高校生を子供扱いしないというのもポイントでしたね。

いかに興味の幅を広げるか。

足立
それからもうひとつ、「興味の入口をつくる」という視点に加えて、各学科のページに「こんなことも◯◯学」というコラムを置いて、「興味を広げる」という視点も用意しましたよね。宗像さんが書いた、文学部史学科の「昆虫食」をテーマにした記事とか最高でした(笑)。

寺井
あれは面白かった!文学部史学科のコラムなのに、書き出しが、「イナゴ、イモムシ、セミ、コオロギ、スズメバチ・・・これらの昆虫を食べたことはありますか?」ですからね(笑)。

足立

一体なにを問うているんですか?(笑)

宗像
それが、苦しみながら書いた上での僕の最適解だったんです(笑)。

足立
そういう学問の面白さプラス、意外性や可能性まで掘っていくのは、立教の教育の根幹でもあるリベラルアーツ的だと思うし、ほかの大学にないアプローチだなと思って、自分でも書いていて面白い部分でした。切り口はひとつじゃないよ、というのは、結構大事なポイントだった気がします。

寺井
学生が書いた卒論のタイトルを見ていたら、面白かったんですよ。キリスト教学にマリリン・マンソンを絡ませたりとか、現代におけるアンチキリストとか、優しさの反乱とか。そういう幅が見えてくると、何か気になるじゃないですか。

宗像
面白いですよね。

寺井
リベラルアーツの体現までの意図はなかったけど、結果的にそうなりましたね。

(第2部につづきます)

新しい大学選びをデザインするための第一歩、
それは、高校生の好奇心を刺激し、
自ら学びたい思える分野との出会いを生み出すことでした。
では、その出会いを、どのようにWeb上での体験へと昇華させたのか。
第2部では、実際の体験設計やデザイン制作の過程に迫ります。

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