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Column コラム

第2部 大学選びの「体験設計」とは

高校生にとって、本当に必要な大学選びのあり方とは。
大学広報のミッションや大学サイトの存在意義から見つめ直した、
立教大学のWebサイトリニューアルプロジェクト。
コンセプトの立案からコンテンツ設計の過程を振り返った第1部に続き、
第2部では、デザインの制作プロセスなどを紹介しながら、
このプロジェクトが示したこれからの大学選びのあるべき姿を語ります。



プロトタイピングで、体験を「可視化」する

足立
第1部では「大学を選ぶとは」についてお話しをしてきましたが、ここからは、大学選びの「体験をつくる」という部分についてお聞きしたいと思います。実際、Webリニューアルにおける「体験づくり」というのは、どのようにして進めていったんですか?

寺井
自分たちで「体験しながら」作っていったというのが大きなポイントだと思います。具体的には、Webサイトビルダーを活用して、スマホやPCの実機で体験できるモックアップのサイトを、まずは1学部フルで試作しました。

宗像
僕がページの構成とかワイヤーフレームを作ったんですが、その段階からダミーコピーではなく、本物のコピーを書いて入れてましたよね。

足立
たしかに、僕が入ったときはすでに1学部ぶん本物みたいなサイトができていて、ちょっと驚きました。

寺井
やっぱり中身がないと設計できないと思って。特に今回は、体験の質を変えるっていうプロジェクトで、ここでいう「体験」って、何をどんなふうに伝えるのか、ということだから、どこにどんな言葉が入るの?とか、どういう順番で話すの?とか、どんな写真が入るの?というのを、きちんと見ながら議論しないといけないなと。

宗像
それで体験のイメージが共有できるし、僕もやるべきだと思いました。

寺井
それから、その時にデザインの検討も並行して進めていました。今回は、Webサイトに合わせたデザインを考えるというより、立教大学全体のデザインイメージを構築して、それをWebサイト向けに最適化したかった。なので、最初にグラフィックデザイナーの松本健一さん(MOTOMOTO inc)に入っていただき、まずは全体のコンセプトグラフィックの開発を行いました。

足立
デザイン面での課題というのは、どういうものだったんですか?

寺井
大学って制約も多いし、どうしても中庸なデザインになりがちなんです。でも、あれだけ素敵なキャンパスがあるわけだし、洗練された空気まで体験できるようなデザインにしたかった。だから立教の方には、「恥ずかしがらずに思い切りカッコつけましょう」と言い続けていました。

松本さんに相談したら、文字の印象やカラーリング、インタビュー記事の写真の入れ方まで、本当にたくさんの案を出してくださって、色々なパターンをシミュレーションしました。

宗像
しかも、それを一度、「架空の学科パンフレット」にしてみたという。

足立
と言いますと?

寺井
Webで学科ページのモックアップを作る前に、一度紙のパンフレットに落とし込んでみて、どんな情報理解の体験になるのか検証したんです。

宗像
全体のイメージとか話の流れは、紙で広げて俯瞰したほうが掴みやすいですからね。松本さんのデザインも素晴らしかったです。

足立
それはユニークな試みですね。たしかに見た目って、体験の第一印象を担う部分だし、検証のプロセスってすごく大事ですよね。

寺井
ですね。そこからWebデザインを、デザイン制作会社のaguije(アグイジェ)さんにお願いして、コンセプトグラフィックをWebに落とし込んだ時に、インターフェースとしてどうあるべきかを考えていただきました。松本さんのグラフィックに、aguijeさんが非常に細かいところまで演出や動きをつけてくれて、サイト全体のUI/UXの質がすごく高くなったと思います。

「なんかいいな」をどれだけ意図的に作れるか

宗像
「体験のデザイン」ということで言えば、TOPの映像もいい仕事してますよね。

足立
ほんとに。素敵すぎてちょっと嫉妬します。

寺井
リア充感ありますよね(笑)。でもこれ、100%ヤラセ無しのドキュメンタリーなんです。写真家で映像作家の馮意欣(Yikin Hyo)さんに撮ってもらってます。


宗像
いきなり心をつかまれますよね。大学自体がすごくフォトジェニックだし、余計な言葉は要らないというか。

足立
これは、「立教大学がもともと持っていた価値」を、うまく体験化していると思う。学問の魅力を伝えることも大事だけど、理屈を超えたところで感情に刺さるというか。ビジュアル面での大きな役割ですよね。

寺井
あのキャンパスが持っているポテンシャルって、すごいですから。「行ってみたい」ってなれば、それはもう勝負ありかなと。だからこそ、言葉にできないあの空気感を伝えるために、一切モデルも使っていないし、リアリティには徹底的にこだわりましたね。

足立
ますます嫉妬しますね。

寺井
まあまあ(笑)、でもそういう、直感的に感じる「なんかいいな」というのを、どれだけ意図的に作れるかは、つねに意識していたと思います。

熱量が共鳴するチームづくり

宗像
それにしても、広報課のみなさんの頑張りもすごかったですよね。

寺井

それはもう本当に、すっごい頑張っていただきました。ちょっとあり得ないくらい。正直、よくこの企画が学内で通ったなと思います。

足立

大学って、学部ごとに教授がいて、学内をまとめるのは相当大変そうなイメージがありますが、学内での合意形成はどうやって進めたんですか?

寺井
基本的にロフトワークは、学内のプレゼンテーションにはタッチしてないんですよ。それこそ大学って、あの部署の次はあの先生をこう通して、みたいな独自のローカルルールがあるので、そこは学内でものごとを通すプロである広報課にお任せしました。

宗像
そのスタンスは最後まで一貫してましたよね。

寺井
学内を通すのもそうなんですが、最後のページ登録も広報課の方が休みなしでひたすら対応してくれて、その分の浮いた予算をTOPページの動画制作に回したりとか。本当に頭が下がる思いです。

足立

もうそれって受発注の関係ではなく、共創、協業のあり方ですよね。

寺井

もちろんその分、僕らも一切妥協はしなかったと言い切れます。それは聞いてないからやりません、みたいなことは言ってないし、逆に、ダメなものはダメだとはっきりお伝えしました。もちろんこちらの都合のためにはやっていないですね。

宗像
色々な事情に流されそうになったり、心が折れそうになったりしたときも、立ち返るべきコンセプトがあって、そこは守りましょう、というのを寺井さんはずっと言ってましたよね。

足立
それは、制作スタッフとしてもやりやすかったです。ひとつのオープンイノベーションに参加している感覚というか、自分も色々と提案しながら議論したり、面白がってやっていたと思います。

寺井
今回、制作に関わってもらったクリエイターの皆さんには、全員キャンパスに行っていただきました。やっぱり現場を見ないと魂の入った仕事ができないと思って。Webのデザインでご協力いただいた金沢のニコットラボさんにも、「現場を見に行きましょう」と言って、金沢から出張してきてもらいました。

足立
それはすごく大事だと思います。

寺井
あとは、ちゃんとクライアントの前にも出てもらいましたよね。ゆくゆくはロフトワークを挟まずに、立教大学から直接クリエイターの方々に発注してほしかったから。僕らが間に入り続けるのってコストもかかるし、本当のスタートはここからだと思うので、これからもっともっと素敵にしていってほしい。そのためにも意図的に前に出てもらったというのはありますね。

宗像
そういえば、打ち上げも結構な人数がいましたよね。

寺井
30人近くいましたかね。あの場は逆に、立教の方にも来ていただいて、これだけの人が関わって作ったものだというのを体感してもらうようにしました。どういう人が作ったのか分からないサイトだときっと愛せないと思うし、あのサイトがちゃんと生き続けるためにも必要なことだと思いました。

いま、広報課の方がすごく情報発信を頑張っていて、Webのニュースやコラムもすごい頻度で更新されているんですよ。

足立
きっと、どんどん情報発信して、多くの人に見て欲しくなるサイトなんだと思います。

立教大学の本質的な価値と、数年先のあるべき姿を探して

足立
さて、打ち上げの話も出たところで、そろそろプロジェクトの総括をしていきたいと思いますが、寺井さん的には、このリニューアルってどんなプロジェクトでしたか?

寺井
高校生がちゃんと自分で大学選びができるように、「話すべきことをちゃんと話した」という感じですね。例えば、経済学をどう解釈し説明するか、今まで大学の様々な事情でふわっとさせていたことを、「立教の経済学はこうです」とはっきり言い切ったというか。

宗像

これまでの文脈に乗っかって、フォーマットに流してしまえば簡単なんだけど、それをせずに、「そもそも経済って何?」というところから紐解いて、分解して、再構築したということですよね。その根っこにあるのは、やっぱり自分の興味や好奇心を探すことだから、立教大学だけでなく、他の大学もそういう視点で大学選びができるようになるといいなと思います。

寺井
早く、偏差値とか就職率とかのスペック競争から「イチ抜けた」っていう状態にしたいというか。

足立
いろんな大学を見比べた上で、「立教の◯◯学がいいな」って思ってもらえると嬉しいし、そういうところでの魅力競争になるといいですよね。そのためにリスクも承知で、一度立教なりのスタンスを示したってことですよね。

寺井
もちろん、Webを変えたからと言って、突然何かが変わるものでもないと思うし、これは数年先を見据えた立教のあるべき姿探しだと思っています。

足立
数年先のあるべき姿探し。

寺井

うーん、そこは明確に見えてるわけではないんだけど、学問の魅力とか学ぶ楽しさとか、しっかり本質的な価値に向き合って勝負できる大学だから、何年経ってもそこで選ばれる大学であり続けるということを、このタイミングで再定義したんじゃないかなという気がしています。

宗像

うんうん。

寺井

で、今そういうあるべき姿を指し示しておかないと、これから大学の受験システムが変わって、大学ごとにオリジナリティのある試験が生まれたりするような状況の中で、安易な方向に流れやすくなってしまう。今回やったことって、新しい入試制度が始まる2020年やその先につながっていくんと思うんですよね。

足立
今後は、立教大学とどう関わっていくイメージなんですか?

寺井:
やっぱり、大学選びの質を上あげるってことで言えば、Webサイトにできることって限られているから、Web以外のことも一緒にやっていきたいなとは思っています。たとえば、授業名のリデザインとかやりたいですね。

足立
ああ、面白いですね。

寺井
大学の授業名って、なんだかよく分からないじゃないですか。「なんとか論A」とか「なんとか論B」とか。AとBの違いもよく分からないし、あれで選べって言われても、なんだそりゃ?みたいな。そこを変えていって、面白そうなカリキュラムがある大学って思ってもらえるようになれば、それも受験生の大学選びの質の向上につながると思うんですよ。

宗像

それはやりたいですね。

寺井
他にも、大学見学の体験も変えていきたい。できれば授業そのものを体験してほしいじゃないですか。オープンキャンパスで模擬授業とかあるかもしれないけど、立教のオープンキャンパスって4万人も来るんですよ。それってリアルな立教の365日の姿じゃないし、本当に大学選びの質をアップデートしたいのなら、見学に来た人たちをどうやって迎えてあげるか、そういうのってテクノロジーの力で何とかならないのかな、とか。

足立
今回のプロジェクトは、高校生が大学を選ぶときの入口のデザインだったわけですが、さらにその先の、大学生活の質のアップデートとか、もしかしたら大学の存在自体の再定義とか、本質的に大学の価値を高めていく活動になっていくといいですね。

寺井
どれだけ時間がかかるか分かりませんが、本当はそこまでやりたいですよね。今回のプロジェクトは、そのための布石なのかなと思っています。

足立
なるほど。今回は貴重なプロジェクトに参加させていただき、ありがとうございました。またぜひ一緒に何かやりましょう。

宗像&寺井
またみんなで何かやりたいですね。お疲れさまでした!

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