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Column コラム

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パブリックリレーションズ
原口 さとみ

デザインする、というのは、つまりどんな行動なんだろう。

WebのUIやプロダクト、空間やサービスといった仕組みなど、有形無形のデザインを行うロフトワークの周りでは、毎日本当にたくさんの「デザインする」行為が繰り広げられています。
今回、2017年夏にオープンした100BANCH(*)のアートディレクターを務めた小田雄太さん(COMPOUND)と、ロフトワークのシニアディレクター・寺井翔茉の対談から、「デザインする」とはどんなことを考えながら何をするのかを探りました。

(*)100BANCH

(聞き手・執筆:原口さとみ)

アイデンティティを変える前に、活動を変える

既に気づいている「なんとかしないといけない」課題があるパターンと、課題設定はなく0→1で新たにプロジェクトを組み立てていくパターン。多様なデザインワークを手がける小田雄太さんは、どんなデザインプロジェクトも大凡この2つの方向性に分けられると言います。どちらでもプロジェクトに伴う「活動」の在り方を大事にしたい、というふたりのやりとりから、クライアントワークの時代性や、これからのデザインワークの基軸が見えてきました。

小田雄太
デザイナー/アートディレクター。COMPOUND inc.代表/まちづクリエイティブ取締役。多摩美術大学非常勤講師。 ’04年多摩美術大学GD科卒業後にアートユニット明和電機 宣伝部、その後デザイン会社数社を経て’11年COMPOUNDinc.設立。’13年に(株)まちづクリエイティブ取締役に就任、MADcityプロジェクトを始めとしたエリアブランディングに携わる。最近の主な仕事として「NewsPicks」UI/CI開発、diskunion「DIVE INTO MUSIC」、COMME des GARÇONS「noir kei ninomiya」デザインワーク、「BIBLIOPHILIC」ブランディング、「100BANCH」VI・サイン計画など。http://compoundinc.jp/

小田さん(以後、敬称略):
僕、デザインプロジェクトのフィニッシュワークは現場の人たちがやったほうがいい、ってずっと思ってるんですよ。「みなさんが必要とするデザインはこちらです。こんな時はこれを、その場合はあれを使って……」って、実際に使う人たちの余白のない提示の仕方はしたくなくて。きっかけとルールと素材を整えたら、それらの組み合わせは使い手に委ねます。

寺井翔茉(以後、寺井):
プラモデルじゃなくて、レゴを渡すイメージ?

小田:
そうそう。プラモデルだとしても完成品は渡さない。ランナー(*1)がついてる状態で、超いいニッパーと解説書添えて渡す感じ(笑)。
以前、ディスクユニオン社のリブランディング(*2)を行ったんですが、社長から依頼があった時に、ロゴのリニューアルを前提としないリブランディングプロジェクトを提案しました。ロゴは、組織の思想を表す冠です。それを変えることは一見インパクトがあるように見えても、頭を挿げ替えても体が変わらなければ意味がない。結果的に、ロゴの形状比率を変えてタグラインをいれるというアウトプットになりましたが、1年近くかかりました。その間、社内にプロジェクトチームを作り、上意下達にしないための言わば「組織文化を耕す」施策も進めていたからです。「DIVE INTO MUSIC」という新しいタグラインに一番実感を覚えているのは、社員の皆さんだと思います。
上意下達で誰かを排除するような限定的なものにしない、というのはデザインする時に大事にしています。

(*1)プラモデルの部品をつなぐ枠の部分。ニッパーなどで切り離して組み立てる
(*2)レコードチェーン「diskunion」リブランディング

寺井翔茉
立命館大学卒業後、2008年ロフトワークへ入社。2012年に最年少でシニアディレクターとなり、ロゴやプロダクト、コンテンツ、展示のディレクション、デザインコンペティションの運営など様々なクリエイティブを手掛けながら、大型のCMS導入やWebディレクションも行うなど、幅広く豊富な制作実績をもつ。

寺井:
テクノロジーの発展然り、プロジェクトやチームのつくり方然り、組織の活動はここ数年でも昔より随分社外に見えやすくなってきていますよね。プロジェクトに社外の人が入ることも随分増えた。言ってしまえば、小田さんのいう「冠」は変わっていなくても活動が変わることでブランドの認知も変わる時代です。ロゴデザインに関わる場合も、活動の範囲まで関わりをもたざるを得ないというのが実状でしょうね。

── となると、経営企画・戦略の領域に踏み込むわけですね。

寺井:
例えば醤油屋さんのロゴをつくるとなった時、創業何年、◯◯家伝承、という具合に過去を顧みることが多い。もちろん代々の思いや哲学は大切なものだけれど、過去や今に焦点を当てていても、そのロゴを見る側との時間軸が合わなくなる。デザインワークは、5年10年100年と先を見た時にどうなりたいかを考える、ある種予言めいた作業だと思います。僕は新規事業や新製品のようなゼロから始まるタイプのプロジェクトロゴをディレクションすることが多いのですが、今後そのデザインはどんな活動シーンでどう愛され機能するのかを物凄く考えます。

小田:
大きな視点でみると、バブル期に培われたスキームが機能しなくなりつつあると思うんです。インターネットが出てきてコミュニケーションの仕方が変わったのも要因のひとつ。会いたければメールをし、情報を広げたければSNSで拡散し、デザインのサンプル画像はどんどんリサーチして収集できる。きちんと組織の文化を耕すところに着目するのは、刻々とスピードが早くなって競争が激しくなるなかでそうせざるを得ない、オルタナティブな生き残り方という側面もあるでしょう。

文化の対流を起こし、活動が生まれる土壌をつくる

「組織の文化を耕す」。それは、コーチングのように対話によって行動を促すようなこともあれば、秩序の保たれた組織のなかにあそびをもたせて、メンバー間のコミュニケーションを変えるといった仕掛けづくりもあるでしょう。今回の取材で幾度と繰り返された「上意下達」を生まない環境づくりについて、さらに話は深まります。

小田:
100BANCHのVIで、主に色と角度についてのガイドラインをつくりました。基本は白と黒のストライプ。色を使う時は光の三原色をモチーフにしたものを使う、使用するラインは120°の交点をもつ、というものです。100BANCHの中に、GARAGEプログラム(*3)に参加するチームのサインを掲示する「プロジェクトボード」と呼ばれる壁があるんですが、今レイアウトされているデザインは僕らがフィニッシュワークに関与していなくて、いい意味で公開初日からルールが破られたものがありました(笑)

寺井:
ルールに則って、各チームごとに自分たちらしいラインを貼ってください、と言ってカラーテープを渡したら、ひとつだけ120°のルールを無視しているチームがいて。彼らは、ふんどしを新たな表現ツールとして提案するプロジェクト(*4)を行っているんですが、赤のテープを90°に交差させていて、そこにあるのは見事にふんどし。これは、全部デザインしつくしたら出てこない表現だなぁと思いましたね。

小田:
最初は「早速破りやがって……」って思ったけど(笑)、ハックしてくれて嬉しかった。僕は逆流の文化をつくることに興味があるんです。課題解決を順流とするなら、0→1で何かを生みフィニッシュワークを誰かに託すことは逆流。基本的に、文化は逆流することでしかつくられないと思っています。音楽やファッションも、“いつもの流れ”に抗って生まれたものが多い。誰かのハッキングによってルールが改変された時、そこで初めてノイズがどう育っていくかが見え始める。逆流をつくる生態系を設計して、ノイズのゆくえが見たいんです。でこぼこを平らにするんじゃなく、違うでこぼこをつくりたいですね。

(*3)GARAGEプログラム
(*4)FFF〜Fundoshi Fashion Festival

[100BANCHオープニングの日、プロジェクトの各ブースに掲示されたオリジナルのサイン]

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