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Column コラム

MIT Future Session Block Chain

Satomi Haraguchi

パブリックリレーションズ
原口 さとみ

パネルディスカッション:デジタル通貨がひらく、新しい民主主義

林千晶(以下、林):
お二人はブロックチェーンにはどんな可能性があり、どんな分野に導入されるのがよいとお考えですか?

斉藤賢爾(以下、斉藤):
『グーテンベルクの銀河系』という本の内容と、今の状況がリンクすると感じています。その本には、印刷技術によって著作権の概念が生まれたり、論文のコピーが可能になったことで科学技術が発展したりと、現在の産業社会の基礎となる概念が生まれたということが書いてあります。でも、最初はなぜ同じものを2冊以上作るなんてことをするのか、理解されなかったでしょう。今のブロックチェーンも同じで、まだすべての可能性は見えていないのだと思います。

伊藤穰一(以下、伊藤):
一つ言えるのは、通貨からブロックチェーンが普及して、社会を変えていくだろうということ。お金のやり取りがP2Pになり、企業の経営実態や証券の中身が透明になったらどうなるのか。僕は財団の理事として何千億のお金を運営したことがあるけれど、そのお金をどう使うかを指示できない。銃を製造している企業には使わせたくないのに、そういう会社だけ抜いて運用することはできない。でも、それが1社1社選べるようになったらどうか。年金なども国民のためになる方向でしか動かせないようプログラミングできたら、社会は変わっていくでしょうね。

林:
なるほど。税金も意志をもったドネーションに変わったら、そんないいことはありませんね。

斉藤:
さらに言うと、デジタル通貨が普及することで、私は現在の貨幣経済が吹っ飛ぶと考えています。国家と貨幣と専門分化は三つ巴で発展して今に至りました。これからは、その3つが三つ巴で衰退していくと考えています。デジタル通貨の考え方を使うと、公共事業なども変わっていくでしょう。橋を架けるとすると、まずその橋が本当に必要なのかを地元の人が議論する。必要だとなれば、橋を架けるという目的の通貨を発行する。それが時を追うごとに勝手に減価していくとすると、みんなそれを早く使おうとする。そのお金がまわっていくなかで、橋を架ける費用が勝手に賄われます。これまでは我先にと公共事業を受注していたゼネコンも、マイナス金利のついた目的別のお金を受け取ることになるので、本当にその橋が必要なのか慎重に地元住民と話し合う。そういう世界になっていくかもしれません。

林:
既存の経済システムが崩壊したとき、人はどうやって物を手に入れて、どういうふうに生きていくんでしょうか。

伊藤:
貨幣経済が崩れていくのとあわせて、僕は民主主義が終わると思う。では次の民主主義とは何かといえば、それもデジタル通貨とつながっていると思います。お金が投票権や社会の価値を反映するものになり、お金に換算できないものが通貨化する可能性がある。例えば、ロフトワークが社員に払う給料を、円ではなくデジタルのロフトワーク株にする。その株券が使えるかどうかは、店によって判断するんです。近隣の店での買い物が、ロフトワークへの信頼や好意によって可能になるならば、社員は自社がある地域により貢献するでしょう。そうすると、会社の経営と社会と社員の行動、倫理観が連動するようになるんじゃないかな。

斉藤:
いろんな通貨があると、私達としてはどこでどの通貨を使えばいいのかわからなくなります。だから、おそらくAIなどがエージェントとして入って、自分がどう行動しているかのライフログをとり、自分のポリシーを決めてくれるようになると思います。例えば、この人は行動履歴からロフトワークのことが好きそうだから、ロフトワーク株券を率先して使うように調整しよう、とかそういうことですね。

林:
使えるお金が評価次第となると、貢献意識は高まるけれど、何がそれを判断するのかが問題になりそうです。その判断基準に基づかない「いいこと」が見えなくなってしまうのではないかと。

伊藤:
一次元で考えるとそうだけど、いろいろな判断の軸ができてくるんだと思う。ロフトワークの株券を使いたい人は、ロフトワークが好きな人が集まるところに行けばいい。ちょっとトライバル(種族的)な感じになりますが、多様性は担保されるはず。

斉藤:
トライバルという言葉にビビッときました。今後崩れていく国家と貨幣と専門分化は、“農耕社会”におけるそれなんですよね。いざ崩れたときにヒントになるのは、群れによる「狩猟採集社会」だと思っているんです。

林:
お金の仕組みが変わるときには、民主主義とは何か、自分とは何か、信用とはなにかといった根源的な問題が関わってくるんですね。

(文:崎谷実穂
(編集:原口さとみ)

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