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Column コラム

ヒダクマ秋祭り

mayu_sasaki

クリエイティブディレクター
佐々木 まゆ

“森とつながる”ってどういうこと? ヒダクマで見つけた私なりの答え

この記事を読む人のなかで、住まいの近くに森がある、という人はどれほどいるのだろう?

今回参加してきたヒダクマ秋祭り2017(*1)のテーマは、「森と町をつなぐ」。
つながる、というのはどういった感覚なんだろう。森という存在がない町に住んでいる私(9月に入社したばかり)はそのつながる感覚を体験したくて、10月21日・22日の2日間、早速初めての飛騨に行ってきた。

(*1)ヒダクマ秋祭り2017

ヒダクマ秋祭り2017は、3ステージ・全30という充実のプログラム。


色づき始めた紅葉の森をぬうように走る高山線に乗って向かったのは飛騨古川駅。全30プログラムのうち、気になっていた「森のスプーン採集」ワークショップから参加した。

枝からスプーン!? 自然の形そのままの美しさを味わう

まずは森のなかでスプーンに適した枝をアーティストの貝山さんアテンドのもと探す。貝山さんいわくスプーンに適した枝は、光沢が出やすく、飛騨の森にたくさんはえているヤマモミジだそう。ワークの時間の関係上、貝山さんが事前に枝を乾燥させ、スプーンの形に切り出してきたものを私たちはヤスリにかける。おのおのの口にあった形状や触れ心地を目指して思う存分、削っていく。

スプーンづくりに必要な道具たち。くるみをトンカチで割ってくるみオイルを出し、スプーンに塗る。

当初森の入口そばの平坦になった中腹で椅子を並べて作業をしていたけれど、せっかく自然の中にいるのだから!とぷらぷらと森の中を歩きながらヤスリをかける。シャッシャッとヤスリを動かし、手を止めてはスプーンの表面をなで感触を確かめる。よくみると枝にも模様や色味がそれぞれあって、ボコボコしている大きな節もあれば、いびつに曲がっていたりもする。木を構成する集合体としてしか見ていなかった枝の個性が見えて、急に愛らしく思えてくる。
靴底から伝わる土の感触、湿り気を帯びた葉の香りとともにどんどん無になっていく感覚があった。一つのことにこんなに真正面から向き合ったのはいつぶりだろうと、久しぶりの感覚にとても嬉しくなった。

いびつな形の枝からは、こんな個性的なスプーンを切り出すことができる。


貝山さんは、普段から沢や森、山で出会った枝で作品作りをしている。
「もともと、森そのものを使って、森活用のためのイベントをしたいと思っていたんです。でも、そんなのどんな方法で行えばよいのか自分ではわからなかった。そこに、ヒダクマから枝から道具をつくり食事をする、という森と生活をつなぐワークをしましょう!と提案をもらって、今回自分のやりたかったことが実現しました。今、この山でできることを探すのは、自分の楽しみです」と語ってくれた。

模倣した自然と本当の自然の美しさは全然違う、という話も印象的だった。枝でスプーンをつくるとき、直線的に削り出すこともできるけれど、もともとある素材の流れにさからって“きれいなもの”をつくることは味気ない、と。

スプーンが完成し、みんなで昼食。好きなお皿に「薬草たっぷりキーマカレー」と「お肉ホロホロバターチキンカレー」をよそい、さっそくマイスプーンで食べる。スプーンの左側からすくった方が食べやすいな……と形状を考えながらカレーを運ぶ。私に合わせたスプーンではなく、スプーンに私を合わせてカレーをすくって食べる。新鮮な感覚だった。

自分たちが作ったスプーンでとびきり美味しいカレーをいただく。

トビムシの松本さんが森の土をイメージしてつくったというキーマカレー、バターチキンカレーと、しょうがの炊き込みご飯。

五感を刺激され好奇心くすぐられる「森の晩餐会」

小さくひかるオレンジ色の光にいざなわれるように白いテントの中へ。くぐって中に入ると、真っ白のクロスがひかれたテーブルに一枚板がおかれていて、蝋燭の火がちらちらと揺らめいている。まるで絵本の中にいるような感覚。お隣同士がはじめましての方たちばかりで、ちょっと緊張しながらも晩餐会開始を待つ。

森の晩餐会会場。

白いテントの中では一人ひとりにカッティングボードが用意され、前菜が盛られた。

「体に染み込むごはん」をテーマに、飛騨の食材をみていたらあれも作れる!これも作れる!となってしまったという料理家の森本さん。確かに、メニューリストには20種類ものメニューがずら〜っと並び、メニューについて丁寧に愛おしそうに説明してくれた。

本日のメニューをひとつひとつ説明してくれる森本さん。

栗の甘酒ペーストスープ、かぼちゃのエゴマサラダ、栗の素揚げ(甘皮のまま!)も、熊肉のパテも、鹿肉のローストも調理方法はいたってシンプルだけれど、森本さんの食材に対する敬意を感じるような丁寧な料理ばかり。
「この食材はなんだろう?」、「このふわふわしたきのこはどんなきのこで、どこで育ったんだろう?」そんな疑問や好奇心くすぐられるものもあって、味覚のみならず、食感・嗅覚が刺激された。

じゃがいもとイノシシ肉のりんごソテー

ぶどう煮大根と薬草味噌のふろふき

鹿肉のロースト

黒文字を使った芳醇なお酒

会場となった山の麓よりさらに上の方に住む、塚本さん夫婦が採集した薬草を使ったカレーは、東洋風でも西洋風でもなく「飛騨風」のカレーだった。塚本さんが採ってきた薬草、森本さんが作った料理、飛騨で出会ったはじめましての人たち……関わる人たちひとりでも欠けていたら、この食卓の彩りを体感できなかったのかもしれないと思うと、森が繋げてくれたご縁に不思議と感動を覚える。

塚本さん夫婦(中央のふたり)と森のバーで記念写真。

塚本さんが採ってきた薬草の黒文字を使ったお酒を飲みながら、初日の感想をシェアした。「今日はアートの森でずっと木を切っていて、お昼に森で採ってきたきのこを鍋にしたのが美味しかったなー」「フィンランド式サウナ、初めて体験したけど、すぐに体がポカポカして気持ちよかった」「遠赤外線で焼き上げるピザの香ばしさに感動した」。お腹いっぱい、ほろ酔いの形容し難い開放感と心地よさのなか、1日目の夜は更けていった。

森じゃないのに森のような、音楽と空間

2日目は台風直撃のため、森で開催予定だったプログラムはFabCafeに集合していた。急遽室内で開催されたのは、映画上映、「森 super love」と題して林業について語るトークイベント、建築から学ぶ木工スツールづくり等々。

なかでも印象的だったのは、アーティスト「木歌(mocca)」さんによる音楽ライブ。室内ではあったけれど、包み込むような芯のある優しい歌声が、ボイスループマシーンで幾重にもFabCafe全体に響き渡った。見上げた空から降り注ぐ木漏れ日のようなぬくもりある音楽に、思わず息をのみ包み込まれてしまう。流れる水のようなカリンバの音色も相まって、森にゆらゆらと漂うような感覚になった。ライブ終了後、いつもは買わないCDを購入。木歌さんの歌声を聞くたびに森の世界へ優しくいざなわれて、この日を思い出すんだろうな思う。

カリンバを使って歌う木歌さん。

木歌さんの歌声に合わせてみんなでダンス!

台風で中止となったプログラムも多く、気合を入れて準備をしていた運営メンバーもさぞがっかりしたと思う。思い通りにならない自然を相手にイベントを行うことはとても勇気がいることだし、飛騨で古くから続く文脈に自分たちを重ねようと、人や町に向き合い続けるヒダクマメンバーの気概の強さをひしひしと感じた。

FabCafeスタッフの家族からの差し入れ栗ご飯をこっそりキッチンで食べる。

雨の日でも、森の喫茶店は大繁盛。

森と“つながる”ために今の私にできること

2日間を通して、前よりも森のことを知りたくなったし、誰かに森の良さを伝えたくなった。森に対して、木々に対して、自然に対して「愛おしい」と思った。森がなければ、枝から作ったあのスプーンは存在しないし、山で採れた薬草やお肉、野菜なども食べられなかった。そもそも水だって飲めない。森のない町に住んでいると、自分のできることがあたかも無限に広がっているかのように感じてしまう。けれど森を前にしてみて、案外自分がやっていることはほんの僅かな一部で、森から享受しているものが多いことに気づいた。

飛騨市の94%は森林で、そのうち7割が樹種豊かな広葉樹だそう。

森から享受しているばかりではなく、私がこの森にできることはなんだろう?と考えたときに、飛騨で体験したこと・感じたことを誰かに伝えていきたいと思った。誰かが飛騨に興味を持って山を感じてみたいと思ったり、山を思い出すきっかけになったら嬉しいなとも思う。そして、定期的に山にお邪魔して森のことを時間をかけて知っていきたい。その都度、今の私は森になにができるだろうとワクワクしながら楽しんで考える時間を持ちたい。

森の中を散策したときにふと見つけた、きれいな花。

森から受け取ること、森に渡すこと。
そういう循環を繰り返す中で、今回の秋祭りのタイトルにあるような「つながる」という感覚がうまれるのではないかと思った。きっと一筋縄ではいかないけれど、「つながる」感覚を持てたら森のない町に住んでいても森を大事に思い共生できるのでは。それが日常的なことになったら嬉しい。
いつもは気づかない森の存在を教えてくれたヒダクマ秋祭りでの時間は、とても豊かで有意義な時間だった。

執筆者

mayu_sasaki

クリエイティブディレクター佐々木 まゆ

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