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Pepperのサービス開発から読み解くUXデザイン戦略の必要性
  • 15
    12月
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レポート掲載中

ヒルサイドプラザ

Pepperのサービス開発から読み解くUXデザイン戦略の必要性

今、商品やサービスそのものの価値だけではなく、商品やサービス利用時のユーザ体験(ユーザ・エクスペリエンス)やユーザ体験と企業全体のビジネス成果(カスタマー・ エクスペリエンス)のデザインが注目されています。両者に共通するのは「体験をどうデザインするか?」。

2015年12月15日に開催された「Designing Experience Strategy-理想のユーザ体験を創るデザインプロセス」では、TAKT PROJECT 代表の吉泉聡氏とPepperのサービス開発にUXデザインを取り入れたソフトバンクロボティクス株式会社のペッパープロジェクト担当者縄田昇司氏と金山大輝氏を招き、デザイナー視点、事業者視点からビジネスにおけるUXデザインの必要性についてお聞きしました。

体験は誰がつくるのか?

最初のCase Study。登壇したのはロフトワーク プロデューサーのカワナ アキとTAKT PROJECT 代表の吉泉 聡氏です。

TAKT Project.inc 代表/デザイナー 吉泉 聡氏、株式会社ロフトワーク プロデューサー カワナ アキ

吉泉氏はロフトワークと共同で手がけたプロジェクト事例を紹介しつつ、「UXデザインに関する3つの問い」に答えていきます。

一つ目の問いは、「UXとは?」。吉泉氏は「UXとは体験の総和である」と答え、デザインによって生み出される体験全体をUXとして認識することの重要性を語りました。次の問い「体験は誰がつくるのか?」に対しての答えは「ユーザ」。デザイナーは体験そのものをつくることができない。デザイナーができることは、ユーザが体験をつくっていく足がかりをつくること。だからこそ、ユーザを徹底的に知る必要があることを示します。

最後は「質の高い体験とは?」という問い。これに対し「どれだけ"自分だけの体験"となり得たか?」と答える吉泉氏。体験の主体者であるユーザ自らが、自身で体験をつくり出したと思えるUXデザインこそが、質の高い体験を生み出したデザインと言える、と説明。あくまでユーザの視点に立ち、ユーザが主体的に参加する仕組みをデザインすること。これこそがUXデザインの醍醐味であると言えます。

ここから一つの具体例として紹介されたのは「スタイラスペン」というプロダクトの事例です。

まず、以下のようなデザインアプローチを紹介。

  • DISCOVER:
    ユーザのメンタルモデルを理解する。そのプロダクト、サービスが飛躍する機会領域を定める
    DESIGN:
    前段階でのインサイトを基にインタラクションモデルとビジュアルをプロトタイピングしながらテストを繰り返す。
    IMPLEMENT:
    プロトタイプモデルを製品品質まで引き上げるための実装をする。KPI設定、プラン精緻化を経てローンチする。
    EVALUATE:
    設定されたKPIをもとにユーザの行動をモニタリングし、解析結果を基に施策を打つことで、継続的な利用を促す。

このような一連のデザインによってプロダクト開発は行われていきます。スタイラスペンの事例では、「スタイラスペンとは何をさせるモノなのか?」という問いから出発し、実際にユーザの御宅に訪問し、利用現場を観察。その後、観察から集められたデータを基にメンタルモデル、機会領域を再設定します。そうして、プロダクトが起こすべき「体験」を再定義、拡張することによって、プロダクトの新ビジュアルがプロトタイプされます。その後、テストを繰り返していくことで製品としての完成度を高めていくのです。

アイデアとステークホルダーが有機的に円環するエコシステムをデザインする

次のCase Studyセッションで登壇したのはソフトバンクロボティクス 事業推進本部の縄田 昇司氏。「Pepperという新事業プラットフォーム」というタイトルの発表では、ソフトバンクがそもそもなぜロボットビジネスに参入したのか。ソフトバンクロボティクスが描く未来とは何なのかを話しました。

2010年6月、ソフトバンク新30年ビジョンで発表。ソフトバンクが目指したのは人間の最大の悲しみである「孤独」を、情報革命によって人間が最も幸せを感じる瞬間、「感動」に変えることでした。そのビジョンの中で、2014年6月に発表されたPepper。感情を持ったロボットとして家族とともに成長していくロボットでありながら、Pepperは自由にアプリケーションの開発や機能の拡張が行なえるプラットフォームでもあります。

ここからは、事業推進本部の金山 大輝氏も参加し、ロフトワークと行ったPepperのUX戦略を振り返っていきました。

ソフトバンクロボティクス株式会社 事業推進本部 事業推進部 プロダクト事業課 課長 縄田 昇司氏、ソフトバンクロボティクス株式会社 事業推進本部 事業開発部 コンシューマー&デベロッパー事業課 金山 大輝氏

Pepperには、どのようなUX戦略が必要だったのか。Pepperが切り開く、理想のユーザ体験とは何なのか。その言語化とデザインプロセスをロフトワーク石川真弓がモデレーターとなり、話を聞いていきました。

まず、PepperのUX体験を考えていく上でロフトワークが提案したのは、プラットフォーム・エコシステムでした。アイデアが集まり、形になり、一目に触れていく。そんなエコシステムを構築していくこと。それがPepperにおいても可能なのではないか、ということでした。早速プラットフォームにおけるステークホルダーにあたるデベロッパーを集めてインタビュー。プラットフォームのステークホルダーとなる人のメンタルモデルを構築していきました。

プロセスを振り返る中で、縄田氏は「必要だと思っていたことがワークショップやデザインプロセスの中で具体的に言語化されていくことによって、あらためて認識される、という腹落ちがあった。そのプロセスを通じて、施策アイデア自体も形になっていった」と言う。

発表後は、来場者との質疑応答も活発に交わされました。

Q
「UXデザインで、どこまでロフトワークさんが準備をして、どこからソフトバンクロボティクスさんが合流しているのでしょうか?」

A
「実際に、ステークホルダーを巻き込むという意味合いにおいても、プロジェクトメンバーとしてクライアントに入ってもらうということはあります。シニアのステークホルダーインタビューをするときでもアピールする場にもなりますし、経営・マネジメントレベルで考えているプレイヤーの視点をプロジェクト関係者にインプットする機会にもなるので、インタビューやワークショップへの参加は初期の段階から積極的に参加を促して進めることが多いです。」

他にもリアルな現場で抱える課題についてのこんな質問も出ました。

Q
「手法としてはいかに明確でも意思決定者をどのように巻き込むのか、施策の情熱を理解してもらうのか?もっと言えばお金を出してもらうか?というところは、サービスやプロダクトの新展開において重要だなぁ、と思っているのですが、ロフトワークさんはどういうふうに説得したりしていますか?」

A
「基本的には期待値のコントロールだと思っています。相手に期待しているのは何か。そのために相手から、何をアウトプットとして欲しいのかを明確にする。相手の時間を考慮して、常にエレベーターピッチを意識した短い時間で提案するつもりで、クライアントの社長やチーフオフィサーなどの方々に会うのも大事です。その時に、「私たちはこういうことを期待しています。だから、こういうことを教えてください。」という、期待値を明確にすることがポイントかなぁ、と思っています。例えば、あるクライアントの社長からある事を聞きたい時、社長にインタビューに来てくださいとは言いません。来てもらえるのは、期待以上の出来事であって、相手にとっては負担が大きすぎるかもしれない。プロジェクトに必要な事として、社長にお願いしたいのはこういうことです。ということを、プロジェクトチーム内でも明確にしながら進めていく、というカタチでやりました。」

他にも場全体で先進事例から有用な知見を引き出す質問が出ており、有意義な機会になっていたと感じます。

結果の質は関係の質で変わる。ロフトワークが取り組む関係の質を変えるリサーチ手法の紹介

ロフトワークのUXデザインプロセスは、デザイン思考や成功の循環モデルを基礎としています。結果の質を変えるためには関係の質を変える必要があり、関係の質を変えるためにはインサイトへの共感が大切。そして、インサイトを発見するためには丁寧なリサーチが必要です。それでは、具体的にロフトワークでは、どのような手法で結果の質を変えるためのリサーチをしていくのか。ロフトワーク シニアディレクターの西本が説明しました。

リサーチ手法は以下の5段階に分かれます。

・準備:「誰にどこで何を」聞くかが品質を規定する。ここではインタビュー対象のセグメント、リクルーティング、インタビューツールの作成を行います。
・インタビュー:話を聞く十分な余裕と聞いた後の十分な分析の時間が品質を規定する。実際にインタビューを行います。メンタルモデルを抽出するためには、「その人物だけ」と「誰でも言える」の中間にある「らしさ」を切り出す抽象度で聞くのが重要です。矛盾を見つけて背後にあるホネを探ることもポイント。
・インサイト:リサーチの全ての価値はインサイトにある。だから一つ一つ丁寧に残す。最初は散り散りしたデータ群でも全体としてマッピングしていけば、インサイトが現れてきます。
・視覚化:直感的に把握しづらいインサイトに人格と行動文脈を与え可視化する。インサイトを構造化していき、ペルソナ・カスタマージャーニーマップを作成していきます。
・機会領域:検討すべき価値のある領域を絞って思索を考える準備。アイデアを発散し、機会領域を定義していきます。

このようなプロセスによって、大量のユーザ中心アイデアから施策を深めてゆきます。セッションの最後には、実際に参加された方々にプチ体験ワークショップを実施し、体感としてもプロセスの一部を感じてもらいました。

多くの企業が、体験のデザインに関心を寄せていると改めて実感した一日

最後に、ロフトワーク 代表取締役 諏訪 光洋のクロージングトークで閉められました。イベントでは終始活発な質疑応答が交わされ、セミナー終了後も参加者同士の交流が盛んに行われていました。各企業でいかにUXデザインについて真剣に考え、ビジネスに取り入れていこうと模索しているのかという熱量が感じられた一日となりました。

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