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大学の技術シーズ×バックキャスティングで考える市民中心の未来
  • 11
    3月
  • 無料

レポート掲載中

名古屋工業大学 4号館 1階 産学官交流プラザ

大学の技術シーズ×バックキャスティングで考える市民中心の未来

世界中が、日本人なみの生活水準を送る場合、地球何個分の資源が必要になると思いますか?答えは2.4個分。つまり地球1つでは全く足りません。ではどうすれば…?(出展:キミが大人になる頃に。―環境も人も豊かにする暮らしのかたち 石田 秀輝 (著), 古川 柳蔵 (著), 電通グランドデザインラボラトリー (著))

将来の社会状況についてビジョンを持ち、課題・ニーズを解決する為にどんな技術をどのように用いるのか発想する「バックキャスティング」という手法が注目されています。

2016年3月11日、ロフトワークは名古屋工業大学(以下名工大)にて、今ある技術をどうしたら新商品開発や未来の課題解決へ活かせるのか。バックキャスト思考を用い考える企業向けワークショップを開催しました。実際に名工大で研究が進められている技術をバックキャスト思考で考えた時にどのようなアイデアが生まれるのでしょうか。当日の様子をレポートします。

ユーザー中心の次に中心に来るのは環境?市民ドリブンの思考法「バックキャスティング思考」

はじめに、名工大の矢野准教授により、産学連携の一貫ではじまった本ワークショップの主旨が紹介されました。

名古屋工業大学の矢野准教授

主旨説明に続き、シニアディレクターの西本が登壇。「市民の時代の思考法」としてワークショップのテーマであるバックキャスト思考について解説しました。西本はまず、潜在的未来のデザインが必要な理由はなんでしょうか。と疑問を投げかけつつ、4つの具体なバックキャスト思考から生まれたアイデアを紹介しました。

「これまでのメーカー中心のものづくりから、ユーザー中心のものづくりにシフトしているのが今です。ユーザーのニーズに沿ってものを作ることは、ユーザーにとっては良いことですが、現在の日本人の生活水準を全世界の人が満たそうとすると、地球2.4個分の資源が必要と語られているように、必ずしも環境によいとは限りません」と西本。

シニアディレクター 西本 泰司

さらに西本は「ユーザーは地球1個分以上の暮らしを求めます。これが、潜在的未来のデザインが必要とされている理由です。」と続けます。潜在的未来のデザインへのアプローチとして次の2つのアプローチを紹介しました。

フォアキャスティング:今までの延長。現在からの累積的な発想方法
バックキャスティング:既成概念にとらわれない未来からのからの累積的な発想方法

そしてバックキャスティング思考のステップを具体例と共に紹介しました。

・未来の環境への共感からはじめる
・課題を定義する
・課題から新しい暮らし方を発想する
・アイデアをシナリオに落とす
・実行する

さらに西本は、バックキャスト思考と、これまで提唱されてきたデザイン思考の関係性にも言及。「デザイン思考はユーザーへの共感を起点に考えるのに対して、バックキャスト思考は、未来環境への共感です。バックキャスト思考のほうがより抽象的でコトを志向しているのに対し、デザイン志向は具体的でモノを志向しています。」

続けて西本は今までのデザインとの違いを消費者のためではなく、市民(自分や家族、友人)を対象とした当事者意識を持った人達がデザインを行うことだと説明。過去100年の歴史を振り返り、製造の時代、流通の時代、情報の時代、顧客の時代を経て、近未来には市民の時代が来るのでは?という仮説を参加者に投げかけます。

そして、モノよりもココロの豊かさを求める市民が増えるというデータを提示し、今後重要なのは、顧客を軸にするデザインだけではなく、自然や環境の視点をもったサイエンスとの交わりであるとした西本は、バックキャスト思考と、名工大の技術のシーズ(種)を用いて是非新しいアイデアを生み出して欲しいと結び、セッションを終えました。

シーズ×社会問題×業種で新しい未来を。Future Ideation

休憩を挟み、名工大でコーディネーターを務める太田 康仁氏による技術シーズの紹介からワークショップのセッションがスタートしました。

今回のワークでテーマに上げられたのは以下6つの技術シーズ。

・マルチエージェントによる機械学習・強化学習
・脳波を用いたインタフェース [詳細]
・人の触知覚特性を活用した触覚技術 [詳細]
・地上・水上走行と自動充電ができる4ローターヘリコプタ [詳細]
・被災地にに現地で膨らまして設営する仮設住宅 [詳細]
・有機無線ハイブリッド圧電式環境発電素子 [詳細]

シーズの中から「人の触知覚特性を活用した触覚技術」の研究を行っている田中 由浩准教授によるデモが行われました。

センサーをつけた指の触感が別のデバイスに伝わる。

ワークショップのテーマは「2030年の社会問題を踏まえて名工大の最先端シーズを活用したソリューションを考える」

名工大が持つ技術シーズとセッションで紹介されたバックキャスト思考に背景となる社会問題を掛けあわせて新たなアイデア作りに挑戦します。

ワークショップのメインファシリテーターとして再び登場した西本は、アイディエーションシートを使ったワークショップの流れを説明。「まずはやってみるという姿勢で挑戦してほしい」と、参加者に投げかけワークがはじまりました。

ワーク1:Warm up 肩慣らし。シーズと、業種だけを使ってアイデアの素案を考えてみる

技術シーズシートを参照しながら、バックキャスト思考でアイデアをスケッチ

・ゴール:アイディエーションシートを完成させる
・プロセス:
 1. 名工大の技術を選ぶ
 2. 会社の業種or任意の業種を書き込む
 3. アイディアを考える
 4. タイトル/概要/スケッチを書く

ワーク2:じっくり時間をかけてアイデアを考える。シーズ×業種に加え環境も加味する

ワーク3:参加者のアイデアを見て回り、よいなと思うアイデアに投票

投票の基準は3つ
・赤シール:当事者意識をもって取り組みたい
・青シール:暮らし方のインパクトが大きい
・黄シール:エコのインパクトが大きい

3つの軸でよいと思えるアイデアに皆で投票

ワーク4:各グループ1つのアイデアにしぼりグループディスカッション。

アイデアが代替するものや、実現可能になる時期、社会に現れる変化や将来の収益性、暮らしの変化について議論します。

各自のアイデアの中から一つにしぼるグループワーク

ワーク5:発表

チームで議論したアイデアをみなに発表します。

触感シーズを元に「五感で今を感じ、家族を幸せにするアプリケーション」や、膨らまして設営する仮説住宅のシーズを元にした、「すぐに転勤できる持ち運べる家」など、参加者からは様々なアイデアが生まれました。全てのグループの発表を終え、1日のまとめとして西本は次のように振り返りました。

• 消費者は地球一個分以上の暮らしを求める
• 社会問題へ共感&課題発見し潜在的未来から別のシナリオをバックキャストで考える
• 消費者のためではなく、市民を対象とした当事者意識を持った人達がデザインを行う
• 市民はモノの豊かさではなく心の豊かさを求めている
• 企業として地球一個分のデザインに取り組むことは中長期的に競合優位性に繋がる
• バックキャスト思考でビジョン駆動のデザインを!

西本は「企業やクリエイターサイドだけで考えるとユーザーの方を向きすぎるが、サイエンスを考えている研究者と一緒に考えることで、環境への視点が生まれる。大学での研究と企業のコラボレーションが継続することで、新しい未来が作れるのでは」と語り名工大の技術シーズを用いたワークショップを終えました。

全てのプログラムを終え、企画者である名工大の産学官連携コーディネーターの梶川氏は「名工大として、初の取り組みだったが、色々な業種や地域の方々にご参加いただき、名工大の技術シーズを知っていただけた。また、普段接することのない他の企業の方々と机を並べ、未来についての議論できたことが、みなさんの新しい気付きのきっかけになっていれば嬉しい」とまとめ、約4時間にわたったイベントを締めくくりました。

名古屋工業大学 産学官連携コーディネーター 梶川氏

大学で日々研究されている技術シーズを元にした、企業担当者との未来を創造するワークショップ。直接開発に携わる企業担当者の参加も多く、各グループではワーク終了後も参加者同士の様々な意見交換が行われていました。近い将来、技術の種は、企業と共同で開発された製品やサービスとして登場するかもしれません。

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