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Experience Design 2016 SPRING - Data × Design - Day1 開催レポート
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レポート掲載中

DAY1:六本木アカデミーヒルズ/DAY2:株式会社ロフトワーク

Experience Design 2016 SPRING - Data × Design - Day1 開催レポート

2016年3月24日(木)、六本木アカデミーヒルズで「Data × Design」をテーマにしたカンファレンス「XPD2016 Data × Design」が開催。翌日3月25日(金)には、場所をロフトワークに移しワークショップでData × Designを体感できる2日間に渡るイベントです。

さまざまなフィールドでイノベーションに挑戦するスピーカーが「Data × Design」という共通のテーマをもとに一堂に会しました。「ビッグデータ」などのワードがもてはやされてから長いですが、未だにいちユーザとして自分の生活にも関わる具体事例が思い浮かぶ人は少ないのではないでしょうか?

データはどのように私たちユーザの生活を豊かに、そして幸せにするのか?データを活用するとビジネスはどのようにドライブしていくのか?テクノロジー好き、データ好きを自負し、でも普段からデータに振り回されている私、髙岡謙太郎がその2日間の現場をレポートします。

データと私たち、そしてデザインを俯瞰する1日

私たちは日々の生活で、PCやスマートフォンなどのデバイスを使い、例えばメールやチャット、ソーシャルメディア、EC、ファイナンスなど大量の情報インプット / アウトプットをし続けています。それらの「データ」は蓄積され、ビッグデータとして金融・メディア・通信・製造などさまざまな分野で、私たちのライフスタイルや世の中全体の仕組みを大きく動かす力を持つようになりました。私たちの体内の血液と同じように、データは世の中を循環させる必需品となったのです。

データに関する今年前半の象徴としては、過去の棋譜のデータを収集してGoogleによって開発されたプログラム「アルファ碁」が人類に勝利したこと、と登壇者のひとり、『WIRED』日本語版 編集長の若林恵さんから話題が出ました。コンピューターが人類に勝利するのは10年後と言われていた矢先、3ヶ月後に達成してしまったという進化の速さ。Googleの圧倒的な資金力(サーバ台だけで60億ドル!)によって、データが人類の知性に勝ってしまったのは、まさに脅威ですね。コンピューターの方が賢い、と......。

データは実際に手で触られませんが、私たちの生活を動かしている欠かせない要素です。企業は日々蓄積されるマーケティングデータやファイナンスデータを指標に、次の事業計画を決めることが当たり前ですよね。扱うデータの種類は違うかもしれませんが、データという存在をどう扱うか(デザインするか)のアプローチは、きっと違うフィールドにいる企業や実践者にもヒントになることは多いはず。

このカンファレンスでどんな未来を描くことができるのか......朝10時、ワクワクしながら会場に到着しました。企業はデータをいかにデザインするか? 蓄積された情報を活用して、どう問題解決をするのか? 今回の登壇者は、タクシー会社の代表取締役会長、ゲーム開発会社のアナリティクスアーキテクト、国際的なテクノロジー雑誌の編集長など、「Data × Design」というテーマを多角的に捉えられる人選。データから見える社会、そして顧客体験に触れる機会となりました。

川鍋さんはデータを武器に、なにをデザインしているのか

普段何気なく使っている街中を走るタクシーにもデータが活用され始めます。88年目を迎えた日本交通株式会社の三代目、代表取締役会長の川鍋一朗さんが登壇。新人乗務員の研修に同行するほど、社内の隅々まで気にする熱心な方です。現場体験を元に、ユーモアを交えた軽快な語り口で、思わず引き寄せられました。カリスマ感!

タクシー業界の転機といえば、昭和30年代に無線機が付いたこと!なるほど。そこから数十年間イノベーションがなかったタクシー業界が、データによって激変します。スマートフォンアプリから乗車場所を指定するだけで、国内のどこにいてもタクシーが迎えに来る「全国タクシー」の登場です。日本交通の社運をかけたイノベーションでしょう。

見落としてしまいがちですが、街中のタクシーの車体の多くに、全国タクシーのステッカーが貼ってあるのはお気づきでしょうか。かなりの力の入れ具合なのです。海外ではUberによって業界構造が激変しました。昨年、自分もニューヨークに行った際にUberを利用しましたが、その便利さを一度経験すると、もう普通にタクシーを拾うことはできません!

そして「全国タクシー」はUberと同じインパクトを持ったサービスですが、Uberとの大きな違いは既存のタクシー業界との連携が取れているかどうかだと思うんです。アメリカのUberはWebサービスプロバイダが運営していて、白タクのドライバーが利用しています。そのため品質を保持しようとする既存のタクシー業界から反発があるとのこと。その点、全国タクシーは日本交通が運営するため、ユーザーへのクオリティが保たれています。ユーザーとドライバーをマップ上でデータ化して結びつけるデザインも、既存の業界の枠組みを壊そうとするアメリカ的な運営と、既存の枠組みに寄り添い調和しながら新規サービスを提供する日本的な運営、その差を自分は感じました。

川鍋さんは既存の業界構造に課題を感じながらも、それをぶち壊すだけのイノベーションではなく、タクシー利用者・そして運営者(この場合はドライバー)双方にとって気持ちの良い世界、そしてサービスをデザインしているのです。

川鍋さんは組織・業界のリデザインにも取り組んでいる

「(現代は)オペレーション、ソフトウェア、ハードウェアが揃わないと、ベストなUXが作れない」と強調。タクシー業界は、数年前までハードウェアエンジニア、ソフトウェアエンジニアもいませんでした。しかし川鍋さんの甚力によって状況は少しずつ変わっているそうです。

また業界の未来を先どると、2025年には自動運転のタクシーも現実的になってくるそうです。気付くとアプリが定着したように、未来には自動運転のタクシーも自然と定着していることは一般人には想像できませんが、業界内部の人は日々触れる情報からうっすらと未来が見えているはずでしょう。タクシー業界以外にもデータが活用されることで、イノベーションが起きる業界はまだまだありそうですね。

機械学習は新たな価値創造の源泉

次の登壇者は、データそのもののプロフェッショナル。株式会社ディー・エヌ・エーのアナリティクスアーキテクトでありデータサイエンティストの濱田晃一さん。「データサイエンティスト」とは、統計学、データ分析などを使って、膨大なデータを整理して、企業がデータを活用しやすくする職種です。大量の情報を捌くオンラインゲーム運用の実績から得た知識によって、最新の機械学習の話題を披露してくれました。

DeNA自体は、興味や個性、繋がりに合った体験を、機械学習によって提供している。大規模な機械学習・ディープランニングを 用い、数千万人の人々にサービス提供しています。提供されるサービスは「ユーザーひとりひとりに寄り添う」ように気遣っています。

そういった機械学習の実際の活用法を紹介してくれました。ディープラーニングによる画像解析で同じファッションのテイストのアイテムを探せるようになったそうです。おかげでスタイル・テイストが似ている商品にたくさん出会える「感性に寄り添う」Webサービスができました。他には、深層学習によって世界にひとつしかない自分だけのアバターを生成してくれるサービスの紹介。アバターアイテムの構造を学習して生成する「ユーザーひとりひとりの創作に寄り添う」ことが目的だそうです。

創作活動に関しても機械学習が活用されている実例をいくつか教えてもらいました。たとえば、画像が何を示しているのかを認識して、文章化できるシステム。花の画像を見せると、文字で「花」と回答してくれるのだそうです。そこから発展して、画像からロマンティックな文章の生成や、画像に対する質問応答もコンピューターによって自動化できるそうです。この他にも機械学習のいろいろなケースが紹介され、人間の想像できる機械学習の先端の一部に触れられました。

こういった実例を見ると、機械学習は新たな価値を提供するポテンシャルを持っていることがよくわかります。DeNAの抱えているユーザーは数千万人で、日本人の10人に1人は使っている状況です。それによるユーザアクションは一日に50億件。生身の人間では数えきれない膨大なデータから有意義な結果を導き出し、多くのユーザー体験へと還元しているそうです。これだけのデータ量があると人間の行動分析がかなりできそうですよね。私が思い付く範囲のことは実践されていそうですが……。

濱田さんは、収集したデータが重要というわけでなく、「楽しんでもらえるサービスが重要。機械学習はあくまで手段だが、新たな価値提供の大きな源泉」といい、機械学習も実際に使うとなると的確なアイデアが必要だといいます。たしかに、データを扱うのは人間であり、アイデアを出すのは人間です。そして濱田さんは、データへの欲望は人一倍で、実際に価値があるかわからないことまでも収集しているそうです。ここには書ききれないほどの事例を紹介してくれましたが、その探究心には感服しました。

これから必要なのは「データを編む」力

さまざまな知見が飛び交った場としては、『WIRED』日本版編集長の若林恵さんと、ロフトワーク代表取締役の林千晶さんによるクロストーク。お互いに気心の知れた仲のようで、リラックスした言葉の応報によって盛り上がっていました。お互いに普段から触れている情報の濃さが、発言の濃密さに繋がっているようです。

印象的だったのが、「実際にデータがあっても読み解いて活用しなければ、ただリソースを食うだけ」というふたりのコメント。例えとして、若林さんから野球の話題が挙がりました。原題『Moneyball: The Art of Winning An Unfair Game』でブラッド・ピットが主演した映画『マネーボール』を話題に(若林さんは原作が好きだそうです)、近年のメジャーリーグでは選手のスラッガーとしての優秀さは出塁率のデータを見ているという話をしてくれました。

「フォアボールかどうかを見極める選球眼」は後天的に身につかないそうです。これは過去の統計から導かれた結果で、子供の頃からフォアボールが見分けられる人がスラッガーとして伸びていく確率が高いとのこと。これを見いだせたのは、データの蓄積による統計を見極めたから。また突き詰めると、データを見極めることで人類の特性が分かってしまうのでは?と考えさせられました。

「優秀なスラッガーとは?」という問いの設計から始まって、データをどうデザインしていくのか、そこに必要なマインドセットとはどんなものかと、話はどんどん膨らんでいきました。

データを読むには、プランニング力がすごく必要なんだと思う」と若林さんは語り「直感が先にあるわけじゃない。最初はデータを読み解き、仮説を立てて、そのデータからどういう事実が読み取れるかをプランニングしなければいけない」と強調。たしかに、プランニングがまずなければ、目の前のデータをどう使うか、どうデザインしていくかは実現できません。最後に「データによる統計をみて、それを企画に落とすためには、私たちはもっと知恵を絞り出さなければならない」と締め、データを活用する側の課題を力説していたのが印象的でした。

さて、Day1はたっぷりと情報のシャワーを浴びて、データへの好奇心もかなり高まりました。翌日3月25日に、会場をロフトワークに移して開催されたワークショップも、言葉だけでなく実際に手を動かして頭を使って、参加者の身体に馴染ませる実践の場となりました。そのレポートは次の記事でお送りします!

レポート 髙岡謙太郎:
オンラインや雑誌で音楽、カルチャー関連の記事を執筆。
共著に『Designing Tumblr』『ダブステップ・ディスクガイド』『ベース・ミュージック ディスクガイド』など。
『IDEA』『SPECTATOR』『SWITCH』『Time Out Tokyo』『Resident Advisor』などに寄稿。

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