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イノベーションの鍵は「リゾーム」? - 3つの視点で見る価値創造のプロセスと体制のつくりかた -
  • 30
    6月
  • 無料
  • 東京

レポート掲載中

loftwork COOOP(ロフトワーク渋谷10F)

イノベーションの鍵は「リゾーム」? - 3つの視点で見る価値創造のプロセスと体制のつくりかた -

イノベーションの鍵は「リゾーム」? - 3つの視点で見る価値創造のプロセスと体制のつくりかた -

2016年6月30日(木)、東京・渋谷のloftwork COOOPにて『未来をデザインする vol.5 - リゾームで広がるイノベーション』が開催されました。これまでにも「宇宙」「音楽」「ライフスタイル」といった、私たちの身近にあるモノ・コトを捉え、デザインし直すアイデアを共有してきた本イベント。次は「プロジェクトの進め方&チームの作り方」を考えます。

従来の進め方が階層的な上下関係、いわば「ツリー型」のチーム編成や課題解決プロセスを取っていたのに対し、未来の進め方は「リゾーム型」になるといいます。リゾーム(rhizome)とはフランス語の「根茎」を指す言葉で、転じて「横断的な関係で結びつくさま」を表します。生産者、個人、企業がネットワーク的につながり、多様な価値観を交換しながら価値創造をしていく姿にこそ、プロジェクト推進の未来がある──。

登壇した3名のトークから、その未来的な姿の輪郭が見えてきました。

リゾームとは「サッカーチーム」のようなもの

口火を切ったのは、株式会社ロフトワークで数々の新規事業プロジェクトを経験する松井創。松井は「リゾーム型のプロジェクトとは、サッカーチームのようなもの」と喩えます。時にオフェンス、時にディフェンスと役割を変えながらパスをつなぎ、「ゴール」を得るためにチームが戦う姿は、まさにリゾーム的といいます。

従来のツリー型構造と大きく違うことは、図式をしてみても一目瞭然です。ツリー型が上下の関係性で「専門的・細分化」しているのに対し、リゾーム型はすべての点がつながっている状態、つまり「多様的・共生化」であることを表しています。

成功の鍵は「自立した個人」と「価値検証の視点」

また、フラットにつながり合う上では、「自立した個人」であることもキーポイント。 昨今、ワークショップの代名詞ともなりつつあるハッカソンやアイデアソンは良い事例といえます。機密情報や権利問題よりも先に「その考えがどういった価値を未来で持つか」を多様な視点で話し合うところに、リゾーム的なメリットが生まれています。

そのメリットを一層高め、目的達成にとって大切なのが、ロフトワークでは「Point of View(P.O.V)」と呼ばれる「価値検証の視点」です。詳細に言えば「掲げているビジョンに価値が本当にあるかを検証し続ける視点」となります。

たとえば、カメラメーカーのオリンパスと新型カメラを開発した際には、製品発売の1年前から消費者にプロトタイプを触ってもらい、その反応を見ながら価値検証を続け、製品のバージョンを上げていったそう。「開かれた姿勢」で自分たちの仮説をシェアすることが、価値検証につながった事例といえます。

さて、どうやら今回話される「リゾーム型のプロジェクト推進」は、それほど難しい考え方ではなさそうです。サッカーチームの喩えはもとより、このリゾームという考え方、個人と個人が直接的につながるインターネットと同じ構図を示しているようです。 ひとつ思い出した事例として、多数の英文メディアが基礎としているという、文章の表記などをまとめた『APスタイルブック』において、先ごろ、固有名詞だった「Internet」を一般名詞の「internet」に変更したというニュースを目にしました。これは、それだけインターネットが「当たり前」の世界になったことを示しています。つまり、リゾーム的な感覚も、インターネットによって体感しはじめていて、誰にとっても理解しやすくなっているといえるのかもしれません。

予想より6倍速く完売した、水耕栽培器の舞台裏

デルタ電子株式会社 ジェネラルマネージャー IoT事業開発部 シェ・ユンホウ (マーベリック)さん

オリンパスの事例のように、「リゾーム的な取り組み」と「価値検証の視点」で成功を引き寄せたのが、次に登壇した台湾のエネルギー企業であるデルタ電子株式会社で、IoT事業開発部のリーダーを務めるシェ・ユンホウさん(以下マーベリックさん)です。

彼らが開発した家庭向け水耕栽培器「foop」は、筒型の筐体内で野菜が育てられ、お手入れや収穫のタイミングをスマートフォンから確認できるマシンです。野菜を作るだけではなく、育てる行為そのものを楽しめる製品として人気を呼び、「売れるまで1ヶ月かかる」と目論んでいた初回生産分は、わずか5日間で完売しました。

リゾームはコストカット+チームビルディングの最適解になりうる

マーベリックさんとFabCafeの川井の出会いで、体制や機能を見直すことになった

「foop」ではプロトタイプをテストマーケティングするために、ロフトワークが運営する「FabCafe」と協力。店舗で消費者からのインサイトを得ていく過程で、ロフトワークが「価値検証の視点」から提案し、機能を含めた全てを見直すワークショップの開催を決めます。この機会を始め、協力企業をリゾーム的につなげていき、言わば「新・foop」を作り上げていきました。

その経験から、マーベリックさんは「社内でリソースを使うのは(コストが)安いと思えそうですけれど、本当ですか?」と問いかけます。社内でリソースを振り分けて進めると、人によっては「仕事」と捉えるゆえに情熱が生まれないこともあり、ラーニングや調整で結果的にコスト高になる可能性もあります。一方でリゾーム的に「やりたい人」を集めると、気持ちの隔たりもなく、スムーズに進めるチームが組めるわけです。

どうやら「foop」のように新規市場を開拓するプロダクト、あるいは前例がないものほど、リゾーム型の開発は相性が良い面がありそうです。会社ごとのカルチャーとは、言い換えれば意思決定の視点ともいえるでしょう。「それっぽくない判断」をしたい、つまり視点の外から意見が欲しい時には、異なるカルチャーからの刺激が効果的。その有効性はアイデアソンに参加したことがある人なら理解できるはずです。多面的な切り口、多様性のある判断軸で想像外のゴールへたどり着く。「foop」はその事例としても輝いているようです。

「foop」プロジェクトの詳しいストーリーが気になる方は、ぜひこちらをご覧ください。
http://www.loftwork.jp/case/detail/product/20160627_foop.aspx

受注関係は脱する!信頼関係が良いリゾームを生む

「やりたい人」のネットワークを構築し、数々のリゾーム型プロジェクトを企業の大小を問わずに実践してきたのが、最後に登壇した& Co.代表取締役の横石崇さん。一例を挙げれば、多種多様な人々が「新しい働き方」や「未来の会社」を語りあうイベント『TOKYO WORK DESIGN WEEK』を約100人のボランティアと開催してきました。

「多様性がある場所に顔を出し、雑談から生まれるプロジェクトが多い。大事にしたいのは上下のある受注関係ではなく、お金の流れはあるけれど、信頼関係がある上での仕事にしたいと思っています」と横石さん。

リゾーム型プロジェクトを推進する、3つの決めごと

横石さんはプロジェクトを進める上で、以下の3点を大切にしているといいます。

1.Toi First:まずは問いを共有する。メンバーとどのように進むか。
2.Toriaezu Management:問いが決まったら「とりあえず」小さく始める。また、メンバーにも「とりあえず、やろう」と思ってもらえる環境づくりに気を払う。
3.Who knows What:「誰が、何を知っているか」を記憶する。100人のボランティアがいれば、100人個別の能力を把握しておくことで「誰に、何を頼むか」が明確になる。

世界的なデザインコンサルタント企業「IDEO」が採用する社内ツール「The Tube for IDEO」にも同様の考え方が見られます。そのツールには世界に点在するメンバーの受賞歴や時給が記載されており、まさに“Who knows What”を可視化するツールといえます。

ともすると、現代において「名刺」の役割は、すでに物足りない存在なのかもしれません。企業名や肩書きに収まらず、いかにして他人に“Who knows What”を知らせ、リゾームの一員になれるか。オリジナルの、編集可能な「名刺」として、ソーシャルメディアが表現の場になっていることは想像に難くありません。個人が個人を編集し、伝える必要性は、リゾーム的な観点では特に求められているように感じました。

できることが「やりたいこと」に変わる可能性

ワークショップをファシリテーションしたディレクター北尾

トークイベント後には「さまざまな人や要素の組み合わせによる発見」「つながることではじめて生まれる価値」といったリゾーム的なメリットを体感するべく、ワークショップを開催。出版、化学、メーカー、マーケティング、広報、エンジニア、クリエイターなど多様な職種の参加者が、「いま取り組みたいこと」を書き出し、他の参加者と対話しながら発展させていきました。

結果発表の時間では、「アームロボット(肩から指先までの片腕型ロボット)を扱っているが使い道が限定されがち」と悩んでいた参加者が、ある女性から「ネイルをする時の3本目の手がほしい」といった“猫の手”需要を気付かされるなど、アイデアの発展があったことに喜びをのぞかせていました。

とかく「やりたいこと」がベースで語られがちな“未来の働き方”ですが、それと同じくらいに「できること」を表現する大切さを痛感します。「できること」を前向きにシェアしてつながった瞬間に「やりたいこと」へ変化する可能性は、今後の働き方を考える個人にとっても大きな気付きとなりそうです。

リゾームは「状態」を表すと同時に、自立した個人の「姿勢」を表現しているのだろうとも感じます。イベントは盛況のうちに終わり、リゾームの視点を持ち得た参加者たちは、懇親会にも花が咲いたようでした。


レポート 長谷川賢人: 編集者、ライター。1986年生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒。リゾーム的な働き方に自分の未来を見つめてそわそわしています。最近はPodcastに熱中しています。
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