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Local Design ストーリー再編集と自走するデザイン 開催レポート
  • 25
    7月
  • 無料
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レポート掲載中

伝承ホール|渋谷区文化総合センター大和田

Local Design ストーリー再編集と自走するデザイン 開催レポート

Local Design ストーリー再編集と自走するデザイン

地域活性を目的としたいわゆる地域デザインプロジェクトは、その地域の魅力を一方的に伝えるのではなく、第三者の視点を受け入れながら地域とつながり日々価値を形づくっていくことが大切です。ロフトワークは7月25日渋谷伝承ホールで「地域の魅力をデザインすることとは?」をテーマとしたイベントを開催。地域の魅力を新たな価値に転換する方法や、長期的に地域が自走するための仕組みについて考えました。

地域の本質的な価値を「外」の視点から創る

ロフトワーク 林 千晶

幼少期によく出かけた山口県の秋吉台を久々に訪れたというロフトワークの林千晶は、オープニングトークで、「昔は人があふれていたが、最近訪れてみて、当時の賑やかな印象が随分となくなってしまった」と語り出しました。昭和50年代に年間約200万人だった観光客は、今や3分の1の約60万人。これは秋吉台に限ったことではありません。

その理由を、「国内の観光産業が衰退して、海外旅行に出かける人が増えたわけではない。当社が支援した瀬戸内芸術祭では、あの小さな島々に延べ107万人が訪れている。従来型の“わかりやすい旅”から、人々が旅に求める価値が変わってきたのだ」と分析。

そのうえで、「大きなホテルだけ作り、どこにでもあるデザインをし、そして廃れていくという、ひと昔前の観光ブームのときと同じ失敗を繰り返さないためにも、外国人観光客によるインバウンド消費が注目される今こそ、新しい地域の価値の見つけ方を考えていく必要がある」と指摘。その一例として、ロフトワークが支援した2つのプロジェクトを紹介しました。

名産品リデザインプロジェクト Roooots

「越後妻有 大地の芸術祭」に訪れた人たちがお土産に買って帰りたくなる名産品を作るため、世界中のデザイナーと共に地域の名産品を見つめ直し、約100点もの商品をリデザイン。売上が平均で3倍、中には20倍になる商品も生まれた。
「モノを変えるだけで地域活性化の根本的な解決にはならないが、モノがきっかけで地域に興味を持ってもらい、地域の人たちが自信を取り戻すと、産業のあり方から変えていこうという流れも生まれる」と林は言います。

USIO Design Project

USIO Design Projectは夏だけでなく、一年中愛してもらえる石垣を目指し、3ヵ年計画で石垣市と共に進めたプロジェクト。はじめにプロダクトを通じて文化を伝え、次に四季折々の新しい旅をさまざまな視点でデザインし、最後にそれをWebサイトで伝えていくという取り組みです。時間と季節に応じた体験を提案するサイトが完成した。

このように地域の本質的な価値をどう伝えるかを考えていくとき、「地域の人たちだけで価値を作り、おもてなしをするやり方では、もはや多様なニーズに応えきれなくなっている」と林。

キーワードに「co-design~価値を共に創る」を掲げ、外部の人たちが地域と継続的にかかわり、一緒に価値を創ることが重要になるとして、「成功パターンは1つではない。成功例をコピーするだけでは価値は生まれないことを強く意識しつつ、具体的にどんな手法が可能なのかを議論していきたい」と語りました。

不可能を突破する力はミッションから考えることにあり

自遊人 岩佐 十良氏

Keynoteには、地域の価値を伝える実践者の一人として、株式会社自遊人代表取締役&里山十帖の岩佐十良氏が登壇。宿が成り立たないと言われる新潟県南魚沼に、地域の魅力を再編集した施設「里山十帖」を作り上げた岩佐氏は、これまでの道のりを振り返り、ミッションの重要性をこう強調します。

「人はなぜ仕事をするのか?という原点に立ち戻ると、私の場合は、世の中をより良く、面白く変化させたいから。こうした“想い”を重視するべきだと思いつつも、人はすぐ、精度の高い未来予測をして売上を確保することに流れてしまう」

「ビッグデータをとらえて、そこに勝負を挑むのは、コンピューターに勝負を挑むのと同じ。ロジカルシンキング(想像)に勝ち目はない。人間にはデータでは読み取れない価値をピックアップし、つなげ、カタチにしていく力がある」と、数字だけでは表現できない価値づくりが重要だと語りました。これこそが人間にできるデザインシンキング(創造)であるとして、これからの商品づくりや町おこしに求められる思考法を「MPMA」で説明。MPMAとは「Mission」「Planning」「Marketing」「Action」の略語です。

STEP1 Mission:ミッションからスタートする
成功体験や先入観にとらわれず、初心に返り、「本来の目的」「すべきこと」「どうしたら人が喜ぶか」をしっかり見直す。

STEP2 Planning:データには表れない潜在的マーケットを見つける
この段階ではまだデータを追うことはせず、既成概念にとらわれない柔軟な発想で、どこに突破口があるのか?あらゆる可能性を模索する。

STEP3 Maketing:データを活用しながら微妙なズレを修正する
ひとりよがりにならないよう、ここで初めてロジカルシンキングをスタートさせる。データには何が現れているのかを読み取り、社会のゆらぎ、時代の変化から生じる歪みやよどみを感じつつ、その解決策を思考する。

STEP4 Action:実行する
試作を重ね、実際に商品化してみる。「こんなもんでいいだろう」が命取りになるため、絶対に妥協しないことが重要。コンセプトとのズレを絶えずチェックし、ときには白紙に戻す決断も必要になる。

Keynoteに続くクロストークでも、「ミッションの重要性」がテーマに。「ミッションから始めることは重要だけど、すごく難しい。ロジカルな数値を見た瞬間、できない!と固まってしまう」と語る林に、「里山十帖も100%成り立たないと言われたが、理論に飲み込まれてはいけない。不可能と思われていることが突破できる可能性があることを知ってほしい」と岩佐氏。

さらに、「どこかでやっていることのコピペや、どこかで見たものの寄せ集めは、一過性の取り組みで終わってしまう」と強調。“非常識”をデザインし、持続可能なカタチにするカギは、地域に対するミッションを持つ者が、まずは一度数値としての利益から離れて地域の魅力と真摯に向き合い、それをどう活かし、どう伝えていくかを考えることからスタートすると言えそうです。

Case Study ─ 事例に学ぶ、伝えたい価値の届け方

第2部では価値の共創に取り組んだ3つの事例について、プロジェクトメンバーによるトークセッションが行われました。

茨城県北芸術祭 2016

2016年9月17日から60日間、茨城県北地域6市町で開催される茨城県北芸術祭は「茨城県北地域の本当の魅力を知ってもらいたい、それを多くの人たちに広めたいというわかりやすい動機から始まった」と茨城県庁の滝睦美氏の想いからトークセッションが始まりました。

林は、「地域活性化に芸術祭が有効であることは否定できないが、他の芸術祭をただコピーすればうまくいくものではない。実は東京の発展を支えてきたのが茨城県北エリア。視察に訪れたとき、ここには伝えるべき価値があると心から感じたからこそ、一緒にやろうと思えた」と補足。

ジェネラルマネージャーには通算で8つ目となる地域芸術祭を手掛ける桑原康介氏、コミュニケーションディレクターにはロフトワークの林、さらに国内ではじめて芸術祭参加作品を選出したハッカソン「KENPOKU Art Hack Day」開催やWebをはじめとしたクリエイティブ制作をロフトワークが担い準備が進むこのプロジェクト。普段足を運ばないところに自然や地域と対話する100のアート作品を点在させることで、多くの人が訪れ、新しいコミュニケーションが生まれ、地域に何らかの展望を示す契機になることが期待されています。

茨城県北芸術祭 ジェネラルマネージャー 桑原 康介氏(写真左)茨城県 滝 睦美氏(写真右)

「作品自体の力を外部に発信し、外からの評価で地域の人たちが新しい価値に気づいていく。長期的なスパンで地域を考えるきっかけにしたい」と語る桑原氏に続き、滝氏は、「多くの人に来てもらって終わりではなく、かかわった人が幸せな気持ちになり、最後にやってよかった、またやりたいという言葉を聞けたら、きっとその気持ちは地域の元気につながっていくと思う」と語りました。

飛騨の森でクマは踊る

ロフトワーク 岩岡 孝太郎(写真左)トビムシ 竹本 吉輝氏(写真左)

日本の森は大半が人工林ですが、「現在はその多くが手付かずのまま。関わったのに手を引くというのは、本来やってはいけないこと」と株式会社トビムシの竹本吉輝氏。そんな同氏が出会った飛騨市はその93%が森林であり、建材にはならない広葉樹が7割を占めます。

「広葉樹の森が中心であることにチャンスを感じた。しかも、組木の技術を紡ぐ匠、匠の技を感じる街並み、広葉樹を扱う製材所など、飛騨の生態系を懸命につなごうとしている人たちがいる」と語る竹本氏に続き、ロフトワークの岩岡孝太郎は、「森から生活まで高いレベルで完成されている。そこに対して我々にできることは、クリエイティブの視点からその価値を見つめ直すこと。デジタルファブリケーションの価値と「Fab」という考え方を取り入れること。グローバルとつなげること。そして、地域の中で新しいビジネスを起こすこと」と説明。

そこで、100年先を見据えて森の価値を捉え直し、クリエイティブな視点で飛騨の森に新しい価値を生み出す企業として、飛騨市・トビムシ・ロフトワークが共に立ち上げたのが「株式会社飛騨の森でクマは踊る」(通称:ヒダクマ)です。さらに2016年4月には、その活動拠点となるデジタルものづくりカフェFabCafe Hidaもオープンさせました。

「木のことをもっと知ってもらうために、建築家やクリエイターが集う、物理的空間を超えた“プレイス”を整えたかった。ポジティブな相談シーンをどれだけ作れるかがヒダクマに求められている社会的機能だと考えている」と竹本氏。

ヒダクマの機能

・新しいアイデアやコラボレーションを世界に広げる
・コミュニティが生まれ建築家やデザイナーが訪れる
・ビジネス機会と雇用の創出により新しい製品が生まれる
・テクノロジーを活用して森林と伝統技術を次世代へ継承する

実現に向けては、「観光でも移住でもない、その中間にある滞在という形が必要だと感じた」と語る岩岡は、3週間の合宿を企画。滞在を通じて密な体験を重ねることで、早くも新しいアイデアやチャレンジが生まれつつあるとして、竹本氏は、「価値を発信する人、つなぐ人、商品化する人たちに訪れてもらい、飛騨に眠る価値が隆起する機会を増やしていきたい」と抱負を語りました。

MORE THAN PROJECT

ロフトワーク 秋元 友彦(写真左)播州刃物 プロデューサー 小林 新也氏(写真左)

経済産業省が補助事業として進めるこのジャパンブランドプロデュース事業MORE THAN PROJECTは、日本の地域・文化を生かした商材をもつ中小企業と、海外展開に知見を持つプロジェクトマネージャー、見せ方、伝え方を補完するデザイナーがタッグを組むことで、日本の価値を海外に届ける道筋をつけようというもの。2014年から事務局を務めるロフトワークでは、公募で採択されたプロジェクトを 4つの視点から点でなく面でサポートしてきました。

プロジェクトを面で支えるしくみ

補助金
中小企業者とプロジェクトマネージャー、デザイナーが、海外販路拡大のために行う市場調査、商材改良、PR・流通活動を支援。

ストラテジーセッション
第一線で活躍するプロをアドバイザーとして招致し、定期的に各プロジェクトの進捗状況共有と課題解決に向けたディスカッションを実施。

マッチングフェスティバル
海外クリエイターや流通業者とのビジネスマッチングイベントを開催。

プロモーション
プロジェクトの取り組みをフェーズごとにレポートかし、公式サイトで発信。

ここにいちプロジェクトとして挑戦したのが「播州刃物」です。この地域ブランドが抱える問題について、プロデューサーを務める小林新也氏は、「産地には高齢の方が多い。人も生産量も減るなかで後継者を作っていくためには、デザインの力を借りて商品の価値を上げるしかないが、そのための予算もなければ、宣伝を担当する人材もいない。ここにMORE THAN PROJECTのシステムがばっちり当てはまった」と振り返ります。

「補助する側、される側という関係ではなく、完全にひとつのチームになっていた」と小林氏が語るように、「みんなの得意分野を掛け合わせることで価値を作ることに注力した」とロフトワークの秋元友彦。商談につなげるという厳しい目標が設定される中、小林氏は多くの商談を獲得。実績を作ると、半信半疑だった職人の意識も次第に変わっていったと言います。

それでも、「ジャパンブランドとして販売しているうちは本質ではない。どれだけ“ローカルな人たちの日常に根付くものを提供できるか”が重要」と小林氏。こうした考え方は、日本の産地にも当てはまりそうです。

関連リンク

勝ちパターンはない。固有の価値を新しい体験につなげる

インタラクティブセッションでは、ロフトワークの柳川雄飛をファシリテーターに、地域の課題や価値を、参加者の原体験から引き出すためのワークショップを実施しました。会場の参加者はそれぞれ、自分の地元や好きな地域の残すべき魅力と、変革すべき点を思い描きました。

後半は会場から「20世紀型の経営を続ける企業が若い目をつぶしている。どうすれば反対勢力を説得できるのか」「ミッションそのものの見つけ方を試行錯誤している、どうしたらうまくいくのか」といった質問が飛び出しました。

これに対し登壇者からは、「意識を変えていくことが重要。そのためには成果を見せていくことが大事」「ミッションは自分の中から出てくるもの。歴史や地域、そこにいる人たちを尊重しながら、ゆっくり考えていけばよい」といったアドバイスが贈られました。

クロージングトークでは、ロフトワークの諏訪光洋が改めて、「クリエイターと地域の出会いによってどんな新しいことができるのか?そこに勝ちパターンはない」と強調。「固有の観光資源や文化と真摯に向き合い、丁寧に地域の価値を見つけ、クリエイティブやテクノロジーとどうつなげれば新しい体験を実現できるかを考えることにこそ、大きな価値がある」と締めくくりました。

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