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「自学らしさ」を見直すプロセスの体験 ~大学Webサイトのコンセプトはいかにしてつくられるか?~
  • 6
    9月
  • 無料
  • 東京

レポート掲載中

loftwork COOOP(ロフトワーク渋谷 10F)

    「自学らしさ」を見直すプロセスの体験 ~大学Webサイトのコンセプトはいかにしてつくられるか?~

ロフトワークは、これまで数多く大学Webサイトの構築を支援してきました。すべてのプロジェクトで核となるのが、コンセプト作成のプロセスです。そのためのワークショップを、主に大学関係者に体験していただく「これからの大学Webサイトを考える 自学の魅力の再構築と「ならでは」の創り方」を開催しました。熱心に取り組む参加者の姿に、大学Webサイトへの高い関心を実感させられました。

大学のライバルは大学じゃない?

オープニングセッションは、ロフトワークプロデューサーの浅見和彦が担当。大学Webサイトのターゲットを高校生と仮定し、「1日3~8時間の可処分時間を持っている」と各所のデータから推定します。一方、スマートフォンが普及した今、ゲームや映像などの娯楽コンテンツが、高校生の掌の中にある状態。浅見は 「大学Webサイトのライバルは、大学Webサイトなのか?」と問いかけます。

浅見は、海外も含めた大学Webサイトのトレンドを次のように紹介しました。

1.Webサイトのメディア化、SNSの活用で接触頻度を上げる
2.大学に関わる情報のキュレーション、動画の活用などで接触深度を深める

接触頻度、接触深度を向上する取り組みに、「自学らしさ」を掛け合わせることで、大学Webサイトにおけるエンゲージメントを高められると言います。自学らしさを見つけるため行っているのが、コンセプト作成を目的とするインタビューやカスタマージャーニーマップ作成のワークショップです。

コンセプト作成のプロセスを体験

この日のメインイベントは、インタビューやカスタマージャーニー作成のプロセスを体験するワークショップ。メインファシリテーターは、ロフトワークのクリエイティブディレクター実本慶子です。

日ごろから、大学Webサイトを構築する中で「特に時間をかけている」というのが、コンセプト作成のプロセス。参加者は2人一組に分かれ、 ユーザーインタビューからカスタマージャーニーマップの作成、インサイト抽出(一部)までの流れを体験しました。

○ユーザーインタビュー

「最近大変だった/困っている業務」をテーマに、お互いに質問し合います。同業者ということで、仕事に内する悩みや、その対応方法など、大いに興味がある様子。ただし、インタビューにはちょっとしたポイントがあります。 ユーザーインタビューは、できるだけ以下1~4の項目に分けてヒアリングします。

1.行動を聞く
2.なぜその行動をしたのか、思考を聞く
3.行動の結果、起こった感情を聞く
4.行動の際に接点を持った人やメディアなど、「タッチポイント」を聞く


仮に、大学職員の最近大変だった業務が、「オープンキャンパスの準備」だったとしましょう。
1の「行動」は、「日程の決定」などが当たります。
2の「思考」は、「多くの高校生に来てもらうため」など。
3の「感情」は、「準備は間に合うか」「会議が多くて大変」といった気持ちが想定されるでしょう。
4の「タッチポイント」は「会議」「上司」「メール」などとなります。

このようなインタビュー方式を採用するのは、情報を整理し、後のステップを少しでもスムーズに進めるためです。現実的に、1~4がきれいに整理された状態で、インタビュイーから話を聞き出せることは希。しかし、質問の段階で意識されていないと、重要な情報を聞き漏らす可能性が高いのです。

○カスタマージャーニーマップ(CJM)を作る

ユーザーインタビューの内容を、あらためて
「行動」
「思考・感情」
「タッチポイント」

に分類し、それぞれ別の色の線をつけていきます。

次いで、「行動」を軸に、その時に抱いた「思考・感情」と、接した「タッチポイント」をヒモ付け、ひとつのステップとします。「オープンキャンパスの日程を決めるときに会議が多くて大変だった」というようなことがわかります。

ステップを時系列にまとめることで、顧客の行動・マインドを表すカスタマージャーニーマップ(CJM)ができあがります。

カスタマージャーニーマップのサンプル

○課題の抽出

さらに、各ステップの課題を書き出していきます。
行動:日程を決める
思考・感情:会議が長くて困る
タッチポイント:会議
課題:会議の回数、時間を減らす


ここまで整理できれば、インタビュイーが抱える業務の実態がクリアになってきます。今回はひとりにしかインタビューできませんが、実際のプロジェクトでは複数の関係者に対し、同様のプロセスを積み重ねていきます。

多くの人から課題を集めることで、共通のインサイト(顧客が深層心理で抱いている本音)をあぶりだすことができます。インサイトを明確にしたうえで、ようやくコンセプト作成の手順に移ることができるのです。

○ワークショップを終えて

参加者の皆さんには、ここまで90分ほどで、駆け足のワークショップを体験していただきました。 インタビューの方法について、実本は「事前に聞くべきポイントを絞っておくのがコツ」と指摘します)。一方で、質問を考え、また質問に答えることで、ふだんと違った視点で大学の業務を見直すことができます。インタビューは、双方にとって気づきを得られる重要なプロセスです。

なお、インタビューは一方的な面接ではなく、双方向でディスカッションする場です。ロフトワークでは、インタビュイーから「楽しかった!」と言ってもらえるインタビューを心がけている。と実本はまとめました。

「在学生が誇りを持てるWeサイト」京都産業大学Webサイトリニューアル

インタビューやCJMなどコンセプト作成のプロセスを経てリニューアルを行った実例として、京都産業大学の広報部課長、棚原由香利さんに登壇いただきました。ロフトワークとのプロジェクトを、棚原さんは次のように振り返ります。

京都産業大学の広報では、もっとも発信力を高めるべきメディアとして、Webサイトを位置づけています。専任の担当者をひとり置き、その他のスタッフもバックアップして、広報部が一元管理しています。

大学Webサイトをリニューアルするために背景にあった要件は次の3つです。

・創立50周年に向けたデザイン刷新
・スピーディーな情報発信を可能にするためにCMSの導入
・スマートフォンに対応したサイトの構築

ロフトワークは、さらに
・本学が持つ本質的な価値の追求
・大学の理念の体言化


といった、より本質的な課題を設定し、リニューアルの方向性を提案(ディスカバリーレポート)してくれました。学長以下教員、職員、学生などステークホルダーへのインタビュー、ワークショップを経て、ディスカバリーレポートが作成されました。

△インタビューやワークショップ経て完成したディスカバリーレポート

プロジェクトの進行にあたっては、「omusubi(おむすび)」というプロジェクトネームが付けられました。

本学がアイデンティティとする「むすびわざ」(※)になぞらえ、しかもわかりやすく馴染みやすいネーミング。プロジェクトへの愛がこもるようにと、ロフトワークのみなさんが考え、提示してくれました。さらに各種ドキュメントでも、洗練された表現、ビジュアルが用いられており、私たちは大いに刺激を受けました。広報部はもちろん、学長までも、ワクワクしながら次のアウトプットを待っていました。

最終的に決定したリニューアルのコンセプトが

「在学生が誇りを持てるWeサイト」 このコンセプトは、学長・副学長からも高く評価され、その後のプロジェクトを広報主導で意志決定することができました。ディスカバリーレポートでは、ワークショップなどのプロセスを基に、京都産業大学の使命が言語化されています。トップの判断によって、プロジェクトの方向性がぶれる余地はありませんでした。

(リンク:京都産業大学Webサイトリニューアル

また、コンセプト作成のプロセスは、Webサイトにとどまらず、広報戦略全体の運用に大きな成果をもたらしました。学内の対応、学外への情報発信など、京都産業大学の広報として今何をするべきか。広報部内であいまいだった意識が統一され、業務の優先順位が明確になったと実感しています。

※京都産業大学HPより
「むすびわざ」とは「産業」の読み方のひとつ。「新しい業(わざ)をむすぶ」と読み解きます。「むすぶ」は「むす」から派生した語であり、「産み出す」という意味を持ちます。京都産業大学の「産業」とは、まさに「むすびわざ」を表すのです。

誰をバスに乗せるか?

締めくくりは、ロフトワークCMOの矢橋友宏のセッション。プロジェクトを成功へ導くロフトワークの「らしさ」を紹介しました。課題に当たっては、まずは正しい問いを立て、インプットを増やして知の範囲を広げます。「大学Webサイトのリニューアルなら、海外の他大学も含め100サイト以上チェックする場合もあります」と矢橋。そして、創造のタネとなる「ひらめき」を生むために、知り得た情報を自分たちの中で寝かせ、培養する時間が重要です。

また、プロジェクト成功のために重要な要素として「優れたチームを創ること」があります。そのために大切なのが「誰をバスに乗せるか?(誰と一緒にプロジェクトを進めるか)」。京都産業大学さんは、トップを巻き込み、インタビューやワークショップの人選を工夫し、学内外でとてもよいチームを構築されていました。その上で、地道にインタビューやワークショップを重ねることで「自学らしさ」を客観的に発見し、本質を反映したWebサイトのコンセプト作成に成功したのです。

今回は90分のワークで「ならでは」を発見する一部を体感していただきましたが、実際には何倍も時間をかけて行うプロセスです。学内だけで行うこともできなくありませんが、是非外の視点を入れながら本質を見つけて欲しいと締めくくりました。

△当日の内容をまとめたグラフィックレコーディング(クリックで拡大)

ロフトワークと大学の価値を考えませんか?

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