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LoftworkCOOP ロフトワーク渋谷10F

これからの「食と農業」を考える──幸せな食卓を育み続けるための、未来へのアイデア

これからの「食と農業」を考える──幸せな食卓を育み続けるための、未来へのアイデア

2016年11月18日(金)、東京・渋谷のloftwork COOOPにて『未来をデザインする vol.8 -Farm to Table / Table to Farm- 未来の食と農業』が開催されました。「未来をデザインする」シリーズは、セミナーとワークショップを通じて深掘りしていく人気のプログラムで、これまでにも宇宙、家事、音楽、ライフスタイルなどのテーマについて考えてきました。

シリーズ第8弾は「食と農業」にスポットライトを当てます。食糧難、食の安全、自給率低下、後継者不足……あらゆる課題を抱えている中、さまざまな企業がサスティナブル(持続可能)な食生活を続けていくべく、新たなチャレンジを始めています。

今回は、新規事業として農業とロボティクスに取り組む株式会社デンソーと共催。デンソーは自動車分野で培った技術を応用し、ハウス栽培を支援するサービスの提供をスタートしています。

登壇した4名のスピーカーが語った言葉は、現状のままではいられない「食と農業の危うさ」を感じさせながらも、それぞれの方法で「明るい未来」を作り出そうとする真摯さに満ちていました。

「幸せな未来を考え、今の僕らへ向かってオーダーしよう」

オープニングトークを飾ったのは、株式会社ロフトワークのプロデューサーとして新規事業の設計を多く行う松井創と、デンソーでDP-Robotics担当課長を務める磯貝俊樹さん。

松井は冒頭で小さなクイズを出しました。「好ましい状態を表現する」、「自分にとって都合がよいときに使う」、「食べ物の味が良いときに言う」の3つの意味をもつ形容詞は何か?と。答えは「おいしい」。幅広い意味のある「おいしい」を考えながら、私たち(ユーザー)の価値とビジネス価値、そして社会の三方の価値が高まるポイントを、ワークを通じて探していこうと呼びかけました。

「わかった方から座ってください」と笑顔で呼びかける松井

続いて、磯貝さんはデンソーが自動車部品メーカーとして着実にシェアを伸ばしてきたこれまでのプロセスに触れた後に、「より直接的に社会貢献できる事業を」との考えから、デンソーはロボティクス開発を始めとした農業支援をスタートしたと話します。

プロジェクト始動時に農業調査で渡欧した磯貝さんは、農業先進国のオランダで、ある気づきを得ます。先進的ではあるものの、言うなれば「薄利多売」の大農家に会った際に「確かにやり手ではある。けれど、あまり幸せそうに見えない」と感じたのです。

「幸せな農家の姿」を考えるようになった磯貝さんは、ロフトワークと共催する「Denso Agri Lab」のキックオフイベントで訪れた岐阜県飛騨で、会社員から転向した有機トマト農家の松永宗憲さんと出会います。松永さんは「すごく幸せそう」に見え、その理由を考えるにつれ、磯貝さんはひとつの結論にたどり着きます。

「まずは、自分はこうありたい、という未来を描く。その未来にいる自分が、現在の自分にオーダーする。常に未来の自分のために行動することは、幸せに生きるためのキーになる」

磯貝さんは「幸せな未来をみんなで考え、今の僕らに向かってオーダーしよう」と呼びかけ、今回のワークショップへの期待を寄せました。

農業は、すべての課題に対して事業創造できる

「Japan AgriTechは世界を救う」と始めたのは、株式会社エムスクエア・ラボ代表取締役の加藤百合子さん。産業用機械やロボット開発の事業に携わった後、「社会の課題はすべて農業につながる」と考え、農業を用いて課題解決を図る事業を興しました。

「農業×ANY=HAPPY」のメッセージを掲げる加藤さんは、「農業ならANYに何を入れても事業創造ができて面白い」と言います。たとえば、地方の教育格差。通える学校が限定されてしまうことで、教育の選択肢がない子どもたちがいるといいます。加藤さんは農業を通じて基礎学問を教えたり、「自分で野菜を育て、商品化し、売って、収支計算をする」という体験をさせたりすることで、生き抜く力や起業家マインドを育てる場を提供しています。

また、現在の農家は減少傾向にあり、就業者の平均年齢が67歳であることに触れ、「このままだと国産野菜はいつまで口に出来るかわからない」と話します。その理由の一端に、日本の農業は「高品質だが労働生産性は低い」という課題があると指摘。

加藤さんは、日本が得意領域とする「工業化」の視点から、生産や流通に革命を起こし、農業にも「カイゼン」が必要であると述べました。

「農業そのもの」をドラスティックに変える

続いたのは、ソニーコンピュータサイエンス研究所で、生命科学を究める舩橋真俊さん。舩橋さんが提唱し、実験を重ねるのが「協生農法(Synecoculture)」です。

実は、現在行われている農業こそが、自然破壊の最たる要因になっている──舩橋さんが話すその提言に会場は一瞬、静まりました。スイスのシンクタンク「ローマクラブ」が発表した「成長の限界」の研究を引き合いに、現状のまま進行すれば2045年の地球は「端的にいうと砂漠化」し、その理由には農地開発や伐採、化石エネルギーの投入などを行う農業が挙がるといいます。いずれ、進行が深まれば生態系システムは崩壊されしまうと舩橋さん。

その崩壊を防ぐために舩橋さんが研究する「協生農法」は、畑を耕して単一の品種を育てるのではなく、数多くの野菜や果物を混成・密生させて育てる手法。実験によれば、生物多様性、土壌環境、生産性といったすべてが向上した結果を得ています。

以前にアフリカのブルキナファソで、砂漠化した500平方メートルの土地で150種の「協生農法」を実践したところ、1年後には青々とした植物群に成長。作物を販売することで、1人あたり週20時間の労働にかかわらず、ブルキナファソにおける平均年収の100倍以上を稼ぎ出したと言います。

また、舩橋さんは農業におけるICT活用に触れ、「そもそもICT活用は、農業の持続可能性とは関係がない。なぜなら『成長の限界』や、農業が掛ける負荷そのものは変わらないからです。それならば、まず農業そのものをドラスティックに変えなくては」と話します。農業のあり方を変え、そこへICTを投入することが持続可能な農業の姿だと示し、「資源消費型から、生物多様性に基づく情報処理型産業へと、農業は転換するべき」と舩橋さんは述べました。

お金を払う「価値」の本質を突き詰める

トークの最後を飾ったのは、株式会社βace代表取締役の山下貴嗣さん。チョコレートブランド「Minimal」を営んでいます。山下さんが手がけるのは、生産者から直接カカオ豆を買い付け、加工や販売までを行う、いわゆる“Bean to Bar”方式のチョコレート。

山下さんは「100円で買えるチョコレートと、Minimalの1000円するチョコレートを比べたときに、僕らは『本質的に、お金を何に払っているのか?』に興味を持って考えることが大切」と話します。

チョコレートの原料であるカカオ豆は「金融商品」として先物マーケットで価格が決まるため、生産者はいかにたくさんの量をつくるかが収入に直結します。そのため、収穫量を高めたいがために児童労働などの問題もはらみやすい。「世界の多くのカカオ農家は、そもそもチョコレートを知らないという現状がある」と山下さん。だからこそ、「未来の食と農業」を考える上で、山下さんは「消費の視点の伸ばす」ことが大切であると説きます。

「未来の食と農業を考えるには、農家の苦労やものづくりに目を向けるきっかけが必要だと思います。日本はどこでもクオリティの高いものが買える国だけれど、ちゃんと考え、感度を高めたお金の使い方をしなくてはならない。『ものの価値』はどこにあり、何のために対価を払うのか。そこまで視点を延ばしていけるかが非常に重要です」

「未来のお弁当」から始まる、食と農業へのアイデアづくり

スピーカー4名のトークを経た後は、「自分たちの豊かな食のために、やってほしい農業プロジェクトの提案」をゴールに、参加者全員でワークショップを実施。モデレーターはロフトワークのディレクター、北尾一真が務めました。

同じテーブルについて人とグループを組み、まずはアイスブレイク。ここでは「未来のお弁当」が配られました。「100年後の世界」を想定し、環境破壊や人口増加で食糧事情が深刻になった前提での献立を通して、未来に思いを馳せる試みです。メニュー監修は、FabCafeと「THE OYATSU」シリーズでコラボレーションしているクリエイティブチーム301、実際の料理は「Salmon&Trout」オーナーシェフの森枝幹さんが務めました。

301の大谷さん

左上から、ダチョウと蕎麦粉のアメリカンドッグ、モロヘイヤと猪ベーコンのケークサレ、菊芋と塩麹のサラダ、いなご佃煮の卵焼き、ドジョウとサツマイモのフィッシュ&チップス

たとえば「100年後は、少ない飼料で育てられるダチョウやヤギの肉を食べるのが一般的」「蕎麦は寒冷地に強い作物であり、今後は作付が増えると目されている」という視点で作られた『ダチョウと蕎麦粉のアメリカンドッグ』。参加者たちは、それぞれ「理由と予測」が詰まった料理を興味深そうに味わいながら、自己紹介を兼ねて食卓を囲んでいました。

「未来のお弁当」を前に、まず写真をとる参加者のみなさん

まずは個人ワークで「豊かな食とは何か」を書き出し、グループ内で「3回以上『なぜ?』と問いかけ合う」ことで深掘りし、それぞれの「豊かな食」の根底にある感覚を欲求として言語化します。その欲求を「成長欲求」「社会的欲求」「生存欲求」「超越・その他の欲求」の4パターンに分けて、再度グループを編成。インプットの時間として、農業が現在抱えている問題やデータ、すでに使われていて活用できる技術、予想される農業の未来についての情報を渡し、グループごとに、「豊かな食」への想いが最大化するようなアイデアを創出しました。

お弁当のアイスブレイクの力もあってか、会場に笑顔があふれます

長時間のワークにも関わらずみなさん熱い!

発表では「AIを活用した仮想市場を形成し、生産者と消費者をつなぐ」「ストレスフリーの食品が作られるようなセンサー開発」「スーパーマーケットで食べ方や産地の情報が食材に近づくと届くアプリ」などが披露されました。

昼下がりに始まったイベントも、発表の時間には外はすっかり暗くなっていました

その後のフィードバックトークでは、「Japan AgriTechは世界を救う」を胸に活動する加藤百合子さんからは「創造力が高く、ビジネスとして展開し得る。そういう発想を持った人たちがいると感じられた」とコメントが贈られました。一方で、舩橋さんからは「流通ならエネルギーインフラの設計、モノなら耐用年数の議論も欲しかった。地球環境の負荷は余った食材を分配しても解決しません。プラスの思考だけでなく、いかにモノを作らないか、いかに無駄なものを削ぎ落とすかといったマイナスの思考も必要」と、アイデアにいっそう深みを出すためのアドバイスも。

これからの「食と農業」について、変えるべきことだけでなく、止めるべきことを考える。未来の食卓を明るいものにするために、これからも議論と実践は尽きないと感じさせた時間になりました。

ネットワーキングもイナゴやドジョウを食べながら大いに盛り上がりました

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