Main menu

Hack Our City レポート後編 ─ 実験都市シブヤ
  • 2
    12月
  • 有料
  • 東京

終了しました

loftwork 3F

Hack Our City レポート後編 ─ 実験都市シブヤ

テキスト:藤末 萌
写真:萩原 楽太郎

Hack Our City レポート後編 ─ 実験都市シブヤ

HACK OUR CITY後半は「実験都市シブヤ」と題して2つのケーススタディとワークショップを行ないました。高野 公三子さん(パルコ『ACROSS』編集長)からのイントロダクションでは「ACROSS定点観測」についての紹介も。1980年から毎月渋谷・原宿・新宿のファッションを観察し、インタビューを続けてきた情報量は圧巻で、ウェブ上でアーカイブを見ることができます。

Introduction - まちはメディアであり、集まっている人がつくる

パルコ『ACROSS』編集長 高野 公三子

都市の目撃者として「まちはメディアであり、集まっている人がつくる」という理念で活動してきた高野さんは最近、まちの使い方がわからない人が増えている事に気づいたと言います。新しい価値観がまちにいくつも生まれているので、それらを探し出す消費者の力が弱まっているのだそうです。

それを概念化すると、「イノベーション曲線」でいうところの左側の三分の一(アーリーマジョリティ以前)と右側の三分の二(レイトマジョリティ以降)の分断が顕著になっていて、マスメディアに取り上げられない事象=まちで起きている小さなイノベーションが大衆化されにくい時代になっていると言います。しかし、「左側」の価値観は、一国内での数こそ少ないものの、たとえば台湾やシンガポール、ロンドンなど国を超えて同じ価値観を共有できる人たちがいます。高野さんのプレゼンテーションで、嗜好の多様化によるリアルなコミュニティの分断とグローバル化、「クリエイティブクラス」というクラスターと渋谷のまちについて改めて意識を向けるところから始まりました。

関連リンク:Web Across

渋谷のラジオ - 地域密着×世界最先端の放送局

シブヤ経済新聞編集長/花形商品研究所 代表取締役 西 樹(左) NPO法人サービスグラント 代表理事/渋谷のラジオ チーフプロデューサー 嵯峨 生馬 (右)

2016年4月に本放送を開始した「渋谷のラジオ」では超ローカル放送局として渋谷のコミュニティの相関図を描き変え始めています。地元企業のスポンサーシップや個人寄付者「市民ファウンダー」に支えられ開局した渋谷のラジオ。1番組55分CMなしというプログラムには渋谷に縁あるアーティストや俳優、文化人らだけでなく、渋谷区に暮らす一般の人達もパーソナリティとして登場します。まちを眺めながら話せるスタジオから55分間のお喋りが毎日いくつも発信される状況を「地域性の究極的なあり方」と表現していたことが印象的でした。

55分間の中では個人的な深い話になっていく事もしばしば、地元の人の声を本人の言葉でリスナーに届けています。嵯峨さんの「聞くラジオではなく出るラジオ」という言葉の通り、深く話し込めるラジオがきっかけで渋谷に関わりの深い出演者たちが出会い、ラジオをハブにしたコミュニティが形成されつつあります。「遅効性メディア」との言葉も飛び出しましたが、じわじわとキーパーソンたちのネットワークが広がり、ふと気付いた時には渋谷に新しいコミュニティのレイヤーがかかっている、という未来を想像したくなる取り組みです。

もともとは地元の関係者やクリエイターら、ラジオ好きが集まって始まったこのプロジェクト。地域に密着したラジオの利点を活かして防災メディアとしての役割を担うことで、より多くの人から支えられる存在となっています。3.11東日本大震災で多くの帰宅困難者が発生したことで明らかになった「渋谷に足りていないもの」と「好きな事」が繋がりラジオというインフラになっていった過程を思うと、これもまた新しい余白/余地の発見であるように感じました。

関連リンク:渋谷のラジオ

SHIBUYA HACK PROJECT - 既成概念・空間のスキマHackで新たな価値を再発見する

続いて、ロフトワークの取り組む「Shibuya Hack Project」がチームメンバーを交えて紹介されました。課題解決ではなく表現への欲望がベースになり進められているこのプロジェクト。誰のものなのか?だれが使うのか?あいまいな都市の余白を見つけ出し、表現の場としてその価値を転換していく取り組みです。

シブヤヒミツクラブでは、渋谷109前に集合したゲスト達が手渡された指示書に従って渋谷のまちを探検、隠されている新しい指示書を見つけ出しながら、O-EASTの屋上「渋谷の畑」に特設されたシークレットステージにたどり着くというRPGのような検証実験を行ないました。これは、ゲストとして招待されたビルオーナー、クリエイター、開発事業担当者ら未来のプレーヤーになる人達にむけて、知られざる渋谷の公共空間=余白を体感してもらい、屋上を畑にするという先行事例の紹介でもあります。

渋谷道玄坂青年会 会長 / 長谷川印刷株式会社 長谷川 賀寿夫

渋谷道玄坂青年会の長谷川さんはShibuya Hack Projectに関わり新しい取り組みが起きていることを「耳元で"こんな面白いことができるんだよ”とささやかれたような感じ」と表現します。地元町内会・商店会の中ではこれまでの慣習や人的な関係性が出来上がっているため、都市的な新しい展開を進めづらい所があるそう。外部からの視点やネットワークが持ち込まれたことで地元の人達のモチベーションが喚起されている事がわかります。

東京急行電鉄株式会社 都市創造本部 開発事業部 事業計画部/渋谷駅前エリアマネジメント協議会 山口 堪太郎

そして、東急電鉄の山口さんからはダイバーシティからイノベーションが生まれやすいまち「渋谷」への期待感が語られました。これまでの大きな視点からのメソッドを一旦はなれ色々な実験をしてみて、ネットワークが広がり、自身がとても楽しくプロジェクトを進めていることが伝わってきます。一方で、それらの取り組みの中で大きな変化がいきなり作られるわけではない事もまた実感したそう。現在東京ではオリンピックを目標にざまざまなプロジェクトが進行していますが、Shibuya Hack Projectの見据える未来はもっと先にあります。オリンピックという追い風を受け加速させながら、まちに自分事として関われる材料を作っている感覚、と話します。

ホコ天になっている路上にさまざまなストリートファニチャを置いてみた実験では、子ども・ギャル・外国人がうまく使いこなしている一方で、多くの人が歩道しか歩かない(歩けない)という結果も出ました。車道に出てはいけない、という強烈な固定観念が根付いている事に気づいたとか。実験的に行っていること=非日常を日常に落とし込む事は、個人の力からまちの自由度をいかに設計できるか?というShibuya Hack Projectの大きな問いに繋がります。

ビジュアルデザイナー 河ノ 剛史

横浜を拠点に活動しているビジュアルデザイナーの河ノさんは、実は渋谷に縁深いというわけでもないんですが・・と話しながらも、地縁や人間関係の解像度が高い「渋谷の中の人」には無い視点で議論に投げかけを行ないつつアートディレクションを担当しています。それぞれの想像力を持ち寄りながら、地域の人達と協同することではじめて形になり、視界がもっと開けていく、そんなサイクルがこの一年を通じて作られ始めました。

長谷川さんがつぶやいた、道玄坂がブロードウェイのように路上で新年のカウントダウンができる場所になったら・・という妄想の余韻を残しながら、地理人 今和泉隆行さんとビジュアルデザイナー 河ノ剛史さんによる、地図ワークショップが始まります。

関連リンク:SHIBUYA HACK PROJECT

Workshop - 都市をプロトタイプする「シブヤ妄想地図をつくる」

地理人の今和泉さんは子どもの頃から空想地図を描きはじめ、現在では実在の地図と見間違うようなクオリティで空想の都市「中村市」の地図を作り出しています。地図だけではなく、観光ガイド、バス路線図、地元企業のロゴ、バスの外装、ショッピングセンターフロアガイド、賃貸間取り図・・等々、空想地図から想起される案内図やデザインはすべて地理人の活動の範疇です。普通の地図はまじまじと見ない人でも、空想地図は食い入るように見るそうで、そのリアリティからまちの様子を想像して楽しむことができます。都市は存在せず地図だけがあることで、答えは見る人の心の中にしか生まれない・・妄想に現実が引っ張られる、という宣言からワークショップが始まりました。

4〜5人のチームに分かれ、それぞれお題に取り組みます。

【車椅子の小4男の子と渋谷ツアーをするなら??】チーム

大きな地図にツアールートを描き込みます。すり鉢状の地形になっている渋谷のまちはどこに向かうにも坂があります。できるだけ緩い坂道を歩きながら、人混みをさけるか?渋谷らしい楽しい道をいくか?を考えながらルートのデザインを行ないました。
立ち寄るポイントとして人気だったNHKスタジオパーク。JR渋谷駅行きの直行バスが出ていることを発見したチームからは、車窓から渋谷を楽しみつつツアーを終えるという秀逸な提案も。

【渋谷の奇祭を考える】チーム

面白かったのは、ドローンを世界中から(+地球外からも!?)操作してレースを行うというアイディア。スター・ウォーズのポッドレースのように観ている人も楽しい、観客が盛り上がっているのを見ても楽しい、渋谷のまちを舞台にしたコース設定を考えました。

【渋谷を移植/渋谷に移植】チーム

世界の都市に渋谷を切り取って移植したら?世界の都市を渋谷に移植したら?という妄想を広げる移植チーム。例えば北京の大きな街区割り=歩行者には優しくないまちに渋谷を移植すると・・徒歩でもっと都市を楽しめるようになるかもしれない。というアイディアや、代々木公園にギリシャのパルテノン神殿を移植したら京都に負けない歴史性が獲得できたり、待ち合わせしにくい代々木公園のアイコンになるかも・・といった突拍子はないけれど、とても楽しい思考の時間でした。

ワークショップを通じて参加者同士で話し合うことで、いま現在渋谷にあるリソースと足りていない物を俯瞰的に捉えることができました。ビジュアルデザイナーの河ノさんからのコメント「それぞれの渋谷像は全然共有されていない」とはまさにその通りで、渋谷で働く人、何かを作る人、遊びに来る人、、それぞれの目的が異なると見える風景も全く違ったものになります。無理に一つの夢を共有するのではなく、個人それぞれの渋谷感を土壌としてこそ、多様で創発的なアクティビティが生まれるのだと再認識する機会となりました。

コメント

blog comments powered by Disqus

次回セミナーのご案内

  • 31
    5月

安田有吾 みんなの「書楽家時間」ワークショップ

※本ページはOpenCUで開催予定イベントの転載です。OpenCUのイベントページはこちらからご確認いただけます。 大きな紙に思いっきり筆を走らせる快感書いて感じて“書の楽しさ”を存分に味わおう! ...

このイベントに申し込む

お申し込みを受け付けております。