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『未来をつくるこれからのR&D ─ 産学連携の新しいアプローチ』 イベントレポート
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100BANCH

『未来をつくるこれからのR&D ─ 産学連携の新しいアプローチ』 イベントレポート

『未来をつくるこれからのR&D ─ 産学連携の新しいアプローチ』 イベントレポート

2017年8月4日、白山市IoT推進ラボ(金沢工業大学)とロフトワークの共催「未来をつくるこれからのR&D−産学連携の新しいアプローチ」イベントを開催。

渋谷の100BANCHを舞台に、定員を大幅に超える100名以上の参加者が訪れたこのイベントには、メディアアーティストの江渡浩一郎さんをはじめ、Laree Inc.の共同代表の大本綾さん、VOLOCITEE Inc.代表の青木竜太さん、金沢工業大学教授の中沢実さん、金沢工業大学産学連携局次長の福田崇之さんなど、多彩な顔ぶれが登壇しました。これからの産学連携の在り方をめぐって、さまざまな意見が飛び交ったイベント当日の様子をレポートします。

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正解なき社会を切り拓くのは正しさベースの“外”にある創造性

棚橋 弘季|ロフトワーク シニアクリエイティブディレクター

すべてのはじまりは「HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE」でした──。

オープニングトークは、ロフトワーク・棚橋弘季の言葉からスタート。「HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE」とは、2018年4月に新設される金沢工業大学 白山麓キャンパスのこと。多彩な才能や技術、アイディアを持った“異能”が集い、里山の自然に滞在しながら“発見”と“実験”を繰り返す場としてデザインされた同キャンパスのオープンに向けて、棚橋は未来の産学連携やイノベーションの在り方について考えてきたと話します。

「イノベーションの作り方として体系づけられている手法はいくつもありますが、どうやら私たちはまだうまく使いこなせていない。それは、既存の正しさや枠組みが障害になっているからかもしれません。これからの“正解なき社会”に必要なのは、既存の正しさの“外”にある未知から学び、創造をはじめること。教育機関や企業、地域などが専門性や組織の枠を越えてつながり、知識を組み合わせることで、誰も見たことがない未来をつくっていくことが大切なのだと思います」

「未来をつくるこれからのR&D−産学連携の新しいアプローチ」と名付けられたこの日のイベント。棚橋は古代や中世、近世における“知”と“人間”の関わりを例に挙げながら、専門性の枠組みを越え、知を追求することの本質的な価値について話します。さらに、R&D(研究と開発)という概念は、大学と産業、あるいはサイエンスとアートとして捉え直すことができる、と続けます。

© Science Museum / Science & Society Picture Library

「かつて18世紀のイギリス・バーミンガムに、『ルナー・ソサエティ』という団体がありました。発明家や詩人、物理学者、企業家などが名を連ね、サイエンスとアートが渾然一体となった議論を交わしたこのグループの活躍によって、それまで小さな村に過ぎなかったバーミンガムは、イギリス第二の都市と呼ばれるまでに発展します。本日のイベントに登壇する方々が関わっている数々のプロジェクトや『HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE』は、現代の『ルナー・ソサエティ』になる可能性がある場所。だからこそ今日は“正解なき社会”を切り拓くための、新しいR&Dのカタチを考えていきたいと思います」

“脱専門性”による共創には爆発的ヒットの可能性がある

オープニングトークに続くキーノートでは、江渡浩一郎さんが登壇。メディアアーティストとして『インターネット物理モデル』や『RemotePiano』などの作品を手掛ける一方、産総研で共創プラットフォームの研究を続ける江渡さんは、自身が立ち上げたユーザー参加型の学会「ニコニコ学会β」などを例に取りながら、“脱専門性”の価値について話します。

江渡 浩一郎

「専門の研究領域をもつ“プロ研究者”と“野生の研究者”がともに切磋琢磨するのが『ニコニコ学会β』の特長です。ユーザーを巻き込んで議論を行うことで、“プロ研究者”だけでは生まれなかったアイディアやイノベーションが生まれていく。それが、共創型イノベーションのメリットだと考えています」

江渡さんの話でひときわ印象的だったのが、“協業”と“共創”の違いについて。

「利益を分け合うことを前提に協調し、作業を分担するのが“協業”。一方、“共創”は事前に単一のアプローチを設定せず、異質な才能がそれぞれ大きな目的に向かって行動します。当然、“共創”では成果にばらつきが生じるので、アウトプットの平均値だけでみると“協業”の方が効率的。けれど、Facebookの『いいね!』ボタンがハッカソンから生まれたように、“共創”からは時に爆発的なヒットや発明が生まれることがあるのです」

オープンであること、異質であること─里山だからできる未来の産学連携

続いてのクロストークでは、VOLOCITEE Inc.代表の青木竜太さん、Laere共同代表の大本綾さん、金沢工業大学の教授 中沢実さん、金沢工業大学産学連携局次長の福田崇之さんが登場。

『学問とビジネスを融合させるこれからのアプローチ』をテーマに行われたクロストークで、まず話題になったのが「オープンであること」の大切さでした。

青木 竜太|VOLOCITEE Inc.代表、「TEDxKids」や「Art Hack Day」などコミュニティづくりと共創を手がけている

青木:『新しいことをやりたいけれど、うまくいかない』。そう考えている企業や組織の多くは、外部に対して十分に開かれていないように感じます。企業というのは“強いつながり”なので、どうしても自分たちの行動規範に縛られてしまう。変化を望むなら、異質な人々との“弱いつながり”に対してもっとオープンであるべきですよね。たとえばその方法論を体系化しているのが、大本さんが学んだデンマークのビジネススクール『KAOSPILOT』ですよね

大本:『KAOSPILOT』では、プロジェクトの関係者すべてが最初から参加していることが重要だと考えられています。その上で、『Friends before Business』、つまり、ビジネスをはじめる前に友だちとして本音で話し合える関係性を築くことに力が注がれています。もちろん友だちになるためには時間がかかりますが、一度関係性ができてしまえば『それって違うよね』ということを正しいタイミングでお互いに言える。結果、生産的にプロジェクトを進められるようになるのです

中沢 実|脳波を用いた車椅子ロボット制御システムの開発・実証実験を中心に産学連携のプロジェクトを手がけている。さまざまなバックグランドを持った参加者が集いものづくりに取り組む「KITハッカソン」を主催。

中沢:大学でハッカソンなどをやっても、“弱いつながり”の大切さは感じますね。たとえば里山をテーマにしたハッカソンを企画する場合、学生や教員だけでは里山の問題点は把握できない。だからこそ、里山に根ざした地域の人々の視点が重要になるんです

血縁や地縁、社縁ではなく、知的好奇心を刺激する“知縁”のコミュニティをつくること。1日10分でも、プロジェクトメンバーが本音を話せる機会をつくること。「聞き上手」のような一見“弱いスキル”の持ち主こそが実はチームの生命線であること。

その後のクロストークでは、立場や専門分野が異なる人々がオープンなコミュニケーションを実現するための、さまざまなヒントが飛び交いました。そして話題はやがて、里山を舞台にした新たな産学連携の場「HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE」へと移っていきました。

福田 崇之|産学連携局次長として「HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE」など数々の産学連携プロジェクトに携わっている

福田:『HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE』は、山の中にある一風変わったキャンパスです。この場所が生まれた背景には、都会で効率性を重視してアイディアを出すよりも、山の中で思考を深めることの方が実はイノベーションに近いのではないか、という思いがあります。里山という“異質性”を価値にした秘密基地のような場所で、大学と企業が一体になって新しい価値をつくっていければと考えています

中沢:「大学生と日々向き合うなかで実感しているのは、教員にできる範囲には限りがあるということです。だからこそ、企業や地域、大学が連携し、好奇心を追求していける環境が必要。昼は研究に没頭し、夜は静かに美しい星空を眺める……。『HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE』では、都会で行う研究開発とは全く異なるものが生まれるのではないでしょうか

大本 綾|デンマークのビジネスデザインスクール「KAOSPILOT」で学び、現在は企業や教育機関に向けたクリエイティブな人材育成・組織開発プログラムを展開している

大本:環境を変えることは、とても大切ですよね。たとえば『KAOSPILOT』には、冬の山に食料もなしに放り込まれて、リーダーシップを試されるというカリキュラムがあります。自然ってとても混沌としていて、何が起こるかわからない。そんな環境のなかで、他人と協力しながらチームで解決する方法を考えていくんです。教室や会議室から抜け出した場所でこそ見えてくる、創造性やリーダーシップがあるのだと思います

青木:今後10年のうちに“創造性格差”は、どんどん広がっていくと思っています。そんな時代のなかで、新しいものをつくっていくためのマインドやスキル、コミュニティ、サポート環境はとても重要になってくるはず。その意味で、『HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE』が果たす役割は大きいはず。実はうちには中3の息子がいるのですが、彼が『HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE』に新設される国際高専に行きたいと言っているんです。

福田:『HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE』には宿泊施設もありますし、里山で遊びながら学ぶキャンプ型ハッカソンなども企画しています、もし都会でアイデアが出なくなったときには、ぜひご家族でゆっくりお越しください(笑)

新たな価値を育むためにコミュニティをデザインする

イベントの後半では、HCBプロジェクトメンバーのひとり、ロフトワークのクリエイティブディレクター山田麗音がファシリテーションを務めワークショップも実施。

教育関係者や企業関係者、クリエイターなどさまざまなメンバーがテーブルを囲み、「学び」をテーマにしたシンプルなワークに参加。立場や専門性の異なる人々が交流し、お互いの価値観や好奇心にふれる楽しさを体験しました。

諏訪 光洋|ロフトワーク CEO

イベントを締めくくったのは、ロフトワーク・共同創業者の諏訪光洋によるクロージングトーク。ロフトワークが手がけてきたプロジェクト事例を交えて企業のR&Dが抱える課題や産学連携の難しさを分析した諏訪は、これからの産学連携にはクローズドとオープンを上手に組み合わせた「コミュニティのデザイン」が不可欠だと話します。

「大学、企業、地域、クリエイター、ユーザー。さまざまな人々を巻き込みながらイノベーションを生むためには、どのようなコミュニティをつくっていくのかがとても重要です。ただし、ビジネスの成功を目標とする企業もあれば、アワードを通じて名誉や名声を得たいクリエイターもいる。また、企業が半年や1年のスパンで成果を求めるのに対して、大学の研究はもっと長期的なものであることも多いし、学生には3日間盛り上がれるハッカソンのような“祭り”が魅力的かもしれません。」

「つまり、コミュニティに対するモチベーションや時間軸は、それぞれに異なっているのです。このような違いを考慮した上で、面白いことが起こりそうなコミュニティをデザインしていくことが『HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE』の役割。里山という特異な環境から生まれる新たな成果を、どうぞ楽しみにしていてください」

3時間以上に及んだイベント「未来をつくるこれからのR&D−産学連携の新しいアプローチ」は、こうして幕を閉じました。年齢も職業も立場も異なる100名以上の参加者が訪れた会場には、静かな、しかし不思議な一体感が生まれていました。これからの産学連携は、どんなイノベーションを生み出していくのか。来春オープンする『HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE』の取り組みを、今後も追いかけていきたいと思います。

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