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従来の枠に捉われない大企業の挑戦・ 地方だからこそできる新しい学びの場
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    10月
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レポート掲載中

ロフトワーク京都 MTRL KYOTO

従来の枠に捉われない大企業の挑戦・ 地方だからこそできる新しい学びの場

従来の枠に捉われない大企業の挑戦・地方だからこそできる新しい学びの場

さまざまな共創のアプローチ ──新しい価値創造の場づくりと活動のデザイン

文:田原奈央子

はじめまして。フリーランスで企画やPRをしている田原です。

ひとくちに共創といっても、そのプロセスやアウトプットは多種多様。以前わたしは異業種が集まり活動するクリエイティブユニット"graf"に属していました。専門分野が違う人がチームとなって一つの案件に取り組むことは、新しい発見や楽しさはもちろんあります。しかし、ひとつとして同じ案件はなく壁にぶつかることもあり、共創することの難しさも合わせて痛感しました。

10月27日に開催したイベント『さまざまな共創のアプローチ ─ 新しい価値創造の場づくりと活動のデザイン』では、パナソニック社、金沢工業大学それぞれの共創の取り組みを事例を通じて紹介。コンセプト作りやハードだけでなくソフト面でのプログラムやコンテンツの設計に、持続的な活動につながる成功の鍵があるように感じました。

今回はトークの内容をレポートにして整理しながら、みなさんにもお伝えしたいと思います。いざ自分が”共創”の現場に直面した際のヒントになれば幸いです。

CASE1 研究拠点内の共創空間「Wonder LAB Osaka」

これまでの企業側のルールにとらわれない新しいものづくりの現場をつくりたい

まずは、パナソニック株式会社の「Wonder LAB Osaka」。プロジェクトの立ち上げから、運営・サポートを担当したロフトワーク京都のシニアクリエイティブディレクター 川上直記さんのセッションから始まりました。

シニアディレクター 川上 直記

「Wonder LAB Osaka」は、パナソニックのイノベーターたちが、社外パートナーも含めた多様な人々と一緒にものづくりを進める新しい共創空間です。なぜ、パナソニック社がこの共創空間を作ったのか、そこには大きく以下の背景がありました。

・2012年ごろからBtoBビジネスへと大きく舵をきり、パートナーやクライアントなど多様なステークホルダーと情報を共有しながら研究開発を進める必要性が高まってきた
・MITメディアラボなど先端研究の現場を見て、研究開発の進め方を変える必要性を強く実感した

研究開発環境のあり方の変革、大企業のセキュリティやルールにとらわれない新しいものづくりの場所を作りたいという思いが、現場から強くなっていったと言います。

またパナソニックのプロジェクトメンバーが強く影響を受けたのがロフトワークのCOOOP10。COOOP10は社内のミーティングに利用するだけでなく、ワークショップ、勉強会、OpenCUのイベント、パーティなど様々な用途に使われるラウンジスペースです。一般的な会議室にはないオープンな空間と可変性があり、そこに集まる人やアイデアが自由に交わり合う空間──そんなものづくりの開発環境をパナソニックの社内にもつくれないかと相談を受けたことからこのプロジェクトがスタートしました。

グランドコンセプトの策定 / コラボレーションを生み出す活動のデザイン

まずはプロジェクトを推進するために欠かせないグランドコンセプトを作ります。グランドコンセプトとは核となるようなコンセプトや活動の指針となるステートメントをまとめたものです。どういった方向へすすめていくのか、またプロジェクトメンバーが考えに迷った時に立ち返る道標となります。

グランドコンセプトをもとに空間設計がはじまりますが場作りと並行して「Wonder LAB Osaka」が一体どんな場所なのかを利用者に知っていただく必要があります。「共創ってなんだろう?」「ここではなにができるの?」など利用者の疑問に答えるためのプロモーション活動として、コンセプトブックの制作、オープン前には社内メンバー向けにアイデアソンイベントを開催しました。

利用する方へむけて言語化しコンセプトを伝えること、そして使い方や共創という仕組みを体感していただきながら、プロジェクトスタートからおよそ1年かけて「Wonder LAB Osaka」はオープンしました。詳しいプロセスについては事例ページで丁寧に紹介されているので合わせてご覧ください。

共創活動を促進するための仕掛けづくり

次のステップとして本当の意味の「Wonder LAB」になるための共創活動を促進させるために、ロフトワークからは”ROAD TO THE WONDER LAB”をテーマにした2つのイベントを提案。

Wonder SEVEN Pitch

まず1つめは「Wonder SEVEN Pitch」。構想しているアイデアを知ってもらいたい、突破口のヒントを掴みたいなど、いろんな思いをもった7人が集まりプレゼンを行います7人のうち、5人はパナソニック社員、1人はOB、1人はロフトワークのネットワークからお呼びした社外のクリエイターという構成で実施。

社外の方を招くことで、いつもとは違う視点が加わり、これまでになかった発見やアイデアのヒントにつながります。ロフトワークが支援したのは企画立案と運営実行だけでなく、楽しんでもらうためのTシャツやステッカーの制作、ケータリングなども用意し、コミュニケーションの促進を促します。

さらに、最も重視したのがアンケートの実施です。参加者の生の声を聞くこと、例えば、「もう少し参加者同士が交流できるようにしてほしい」という声に対しては「次のレイアウトを変えてみようか」などの改善につながります。参加者の声に耳を傾けることで、よりよいイベントとなり空間になっていくのです。このイベントは4回目以降は運営スキームを移管し、現在15回目まで行われています。

東京や九州などへの中継や、ゲストとの事業発展、観客がプレゼンターになるなど回を重ねるごとに新たな発展が生まれるイベントとなり、根付いて行きました。

WONDER SUMMER HACK

もう一つが「WONDER SUMMER HACK」。実際にここで何ができるのかを体感するために、パナソニックのエンジニアたちが、社外パートナーを含めた多様な人と一緒に新たな価値を発想・試作・検証するイベントを実施しました。

まず最初に、ロフトワークが招いた外部のクリエイターの方々にプレゼンしてもらいながら、参加者のパナソニックの方々のアイデアの幅を広げてもらい、その後2ヶ月かけて、制作フェーズにはいります。

一つのものづくりに対して多くの人と関わりながら、新しいテクノロジーやアイデアに触れる機会となったこのイベント。就業時間外の活動にも関わらず意欲的な参加者が多く、ここで生まれたアイデアや今までつかってことのない思考のプロセスは、ビジネスの発展や、他の企業との共創など新しいビジネスへとつながるきっかけとなりました。共創するという一つの行為があったからこそ、どんどんクリエイティブが繋がっていくこともひとつのおもしろさかもしれません。

CASE2 新しい産学連携プロジェクト HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE

「里山に都市をつくる」新しい産学連携の取り組み

続いては、金沢工業大学の産学連携局次長 福田崇之さんとロフトワークの棚橋弘季さんによるクロストークでプロジェクトを振り返りながら、金沢工大と挑戦する"学び"を軸にした新しい共創の形について考えていきました。

執行役員 兼 イノベーションメーカー 棚橋 弘季

HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE」とは、2018年春に新設される金沢工業大学の新キャンパスで行う活動のこと。産学官民が連携し、多彩な才能・技術・知識・アイデアが集い、自由な発想で発見と実験を繰り返す活動を構想しています。

金沢工業大学は、共創やイノベーションを促すような教育へシフトしていくことを目指しており、白山という里山ににキャンパスをつくることが決まったことから、里山にある課題を取り入れた「スマート里山都市」づくりを構想。

新時代の豊かなライフスタイルを創造し、それぞれの学びにより既存の価値観をアップデートしながら、イノベーティブな社会実験を繰り返す都市──このプロジェクトには大学や企業に加え、地域の方々やクリエイターなど多くの方に参画していただくことが不可欠です。そこで広くコンセプトや活動を伝えるためにロフトワークに相談することとなりました。

プロジェクトがスタートしてグランドコンセプトを描くプロセスや、Webサイトなどコミュニケーション設計の詳細については下記事例をご覧ください。

従来型の教育をアップデート。里山でつくる新しい学びの場とは?

金沢工業大学 福田崇之氏(写真左)

棚橋(ロフトワーク):福田さんから相談をもらったときに、大学ということもあって先入観で”学び”というキーワードが浮かびました。ただ、学びと言ってしまうと、日本だとどうしても学生特有のものをイメージしてしまいますよね。

この固定観念としてある「学び」を、まずは学生だけのものじゃないものにしていきたいと考えました。実際に福田さんも産学連携部で働きつつ、大学に通っていますよね?

福田(金沢工業大学):はい、我々職員も常に学び続けることが大切だと感じていて。大学の理事長からもそういった趣旨のことを言われていたので、私自身、率先して学ぶ場に身をおくことにしました。

棚橋:従来の大学の学びは、学生それぞれに合わせることなく画一的なカリキュラムで授業が進められているのが実情でした。今ではEduTechなどのテクノロジーの発展にあわせて、学ぶ人に合わせた学びのプロセスが得られるような流れもあり、大学の学びのあり方を大きく変える可能性を持っていますよね。

福田:高校から進学してくる子たちは、自分の偏差値にみあった大学を選び、なんとなく関心を持っている学科を選び、学科を選んだ時には就職する企業にもある程度線引きがされてしまう。でもさきほど紹介のあったパナソニックさんの事例のようにもっと自由にチャレジンジしてもいいという時代がきている中で、このままでいいのかなと課題を感じています。しかしいざ地元の企業に話を聞いてみると、他の企業やクリエイターとの交流や共創することには、まだまだ難しいという状況でした。

やはり、昔からの慣習や常識というのは簡単に変えられるものではありませんし、新しいことに挑戦することに対する不安やリスクもありますよね。それならばいっそ里山のようなこれまでと全く違う環境に身を置くことで、これまでのルールに捉われず人々の”学び”が自由に解放できるんじゃないかなと思ったんです。そこにキャンパスのような学ぶための環境が整うことで、よりいっそう多くの方々の学びが解決されるかもしれません。

新しい学びの場は、なぜ里山につくられたのか?

新しい社会的・文化的価値を生みだすための「構想・実験・実装」という3つの特徴と空間的機能を持ったHAKUSAN CREATIVE BIOTOPE

棚橋:そういう理由で、"里山"というキーワードが出てきたのではないでしょうか。最初白山の現場にいったとき、ここで一体どんなチャレンジができるのだろうと考えました。

白山にある農業、林業などの産業はこれまで家業で成り立っていましたが、ロボット技術やICTを活用したスマート化やバイオテクノロジーの利用により誰もが担えるものとして標準化されつつあります。リサーチを進めていくなかで、もしかしたら今後もう一度、産業としての大きな転換の可能性があるのではないかと感じました。

福田:わたしたち金沢工大が所在する石川県の各自治体が取り組んでいる施策をみてみると、個々の特色はあるもののそのほとんどに東京のようになりたいというメッセージが伝わってきます。やはり地方都市といわれながらも、最終は大都市のようになりたいなぁと考えてるのだと思います。

しかし、里山という都市にはない広大な土地と環境があれば、また違った世界も作れるのではないかと考えました。地方、そして里山の持つスケール感はかなり可能性を持っていると思います。

棚橋:複数の地方を結んでいたヨーロッパ中世のハンザ同盟のように、地方都市でも、一つ一つ結ぶことで情報や人の流通が起こっていくとまた経済状況は変わって行きそうですよね。

福田:そのうち国内外を転々と移動する、場所や国に捉われないエンジニアが現れそうですね。

棚橋:クラウドソーシングのような匿名の人同士が集まって仕事をし、仮想通貨でフィーを支払うというような時代にはいってきているので、そういった社会実験も里山でできそうですね。

”HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE”はどこに向かうのか?

棚橋:来春オープン後の展開として、里山では実験の場としての可能性も進めていきたいと思っています。ワーキンググループを使いながら、"HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE"という場所を使って、実証実験を行い安全性や有効性を確かめながら、社会実装を目指す活動をしていくこと。

また同時にそのような共創の活動を実施できる人材を育てるプログラムを実行しながら東京や大都市ではできなかった新しい学びを考えています。

福田:そのためには大学の事務職員もテクノロジーについても理解を深め、利用者に対してファシリテーションできるスキルをもたなければいけませんね。

棚橋:これまでのように前に立って教えるというよりは、隣にいて一緒に何かを作るためのファシリテーションをすることが必要になってくるでしょうね。そのような新たな学びの最先端が金沢工大さんなんだなぁと思って僕らも楽しんでいます。

福田:しかしこれは金沢工大だけに限られたことではなく、全国に里山がありその可能性をもっています。 多くの市民の方々が暮らす場所を、これまでのようにただ税金を使った施策を投じるのではなく、住民のみなさんとも積極的に関わりながら自立できる仕組みをもっともっと考えたいと思っています。ぜひ多くの方がこの活動に参加していただければ幸いです。

企業での共創、産学官民を巻き込んでの共創

2つの事例を通じて、それぞれアウトプットや課題の解決方法は多種多様ですが、他の企業やクリエイターというこれまでになかったリソースを組み込んで作り上げていくプロセスの面白さやプロジェクトの仕組みについてより理解が深まった会になったのではないでしょうか。

このあと、参加者のみなさんには実際に知らない人同士が共創するというのはどういったことなのか体感してもらうワークショップが開かれました。

なかなか初めて会う方とアイデアを出し合い、ディスカッションするという行為は慣れないものですが、参加者のみなさん真剣に取り組まれていました。

ひとえに、”共創”といっても、その事例はそれぞれが抱えている課題や環境によりさまざまあります。その課題と向き合い、「何がしたいのか」と向き合い、考えることはもしかしたら大変な作業かもしれませんが、”共創”にはこれまでになかった新しい価値や物事を生み出す可能性に満ち溢れています。自社だけではない、コミュニティや企業、クリエイターと関わることで、価値観や視野が広がり、思考のプロセスもより変化していくことでしょう。そうして生まれたものは、さらに広がりをみせより多くの課題を解決できるかもしれません。(取材:田原奈央子)

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