Home > セミナー・イベント > Web広告研究会 10周年記念特別セミナー: 変わる日本のIT活用で林千晶が講演
2009年11月24日、コートヤード・マリオット銀座東武ホテルにて、「Web広告研究会 10周年記念特別セミナー」が開催されました。テーマは「変わる日本のIT活用」。政治が変わり、日本の情報通信政策が大きな変革を迎えようとしている今、民主党議員と有識者が日本のIT戦略について解説するとともに、これからのWeb系ビジネスを展望しました。米国NPO クリエイティブ・コモンズ アジア・プロジェクト・コーディネーターとして登壇した林千晶のセッションを中心にセミナーのレポートをお送りします。

2009年10月30日に発足した新政権の情報通信政策「原口総務相タスクフォース」(正式名称「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」)。第1部では、東洋大学経済学部教授の山田肇氏が、4つの部会を通じて具体的な活動が始まろうとしているこの政策について解説。山田氏はまず、タスクフォースの基本的な考え方に関する原口総務相の発言の中で、特に印象的だった点を次にように語りました。
「まず1点目は、国民が主体であるということ。与えるから使いなさいという姿勢ではなく、これからは国民のニーズに基づいて政策が展開されるということ。180度の方向転換が行われたことが大事なポイントです。2点目は、障害者を含む国民のICT利活用の促進を目指すとして、わざわざ“障害者”という言葉が使われたこと。これまでは隅っこにあった政策が、一丁目一番地に掲げられたことに意味があります。そして3点目。部会には政務三役(大臣、副大臣、政務官)が参加し、よい提言は一年を待たずに実行されるということ。政務三役がやれといったらやらざるを得ない。実際にそういうことが起こり得るということです。」
たとえば、山田氏が参加する「地球的課題検討部会」の検討事項は、国民生活のあらゆる分野において人間中心のICT政策を実現するとともに、環境問題や医療問題など、世界各国が直面している地域的・地球的課題の克服に向けて、日本の優れたICTを活用し、日本が世界の「架け橋」となるための解決策を探ること。この地球的規模での貢献を考えるにあたり、山田氏は「みなさんと一緒にできることはないか考えていきたい」と語り、次の3つの観点から自身の考えに基づく提言を行いました。
1.ICTによる地域の絆づくり
・デジタルテレビ帯の空きチャンネルを利用したコミュニティテレビなど、地域メディアにこそ可能性がある
・年商数億円のコミュニティテレビも数百集まればテレビ東京並みになる
「地方の人々に表参道の高級レストラン情報は必要でしょうか。隣接県のイベント情報が提供されないのはなぜでしょうか。遠隔医療などもそうですが、まさに地域の、自分の周辺にある場所の情報が提供されれば、地域の絆づくりに役に立ちます。そのためには、エリアワンセグ以外にも、もっと多様な新技術を使える可能性があるはずです。また、今までのマスメディアのあり方についても、再考する機会があってもよいのではないでしょうか」(山田氏)。
2.障害者によるICT利活用
・高齢化大国である日本では、高齢者・障害者は巨大な市場である
・先行する日本市場での成功によって、世界進出の第一歩が踏み出せる
・障害者配慮はまず政府からだが、すぐに民間に波及する
「なぜ、山手線車内で流す字幕付き広告をテレビには載せないのでしょうか。先週(2009年11月20日)、YouTubeが動画に自動で字幕をつける機能を導入することを発表しました。たとえ字幕が間違いだらけだったとしても、どんどんやろうじゃないかという姿勢はとても立派なことです。原口総務相が高齢者や障害者を意識した政策に言及したことで、こうした取り組みが、民間に一気に広がっていくことが期待されます」(山田氏)。
3.コンテンツの豊かな流通
・流通してもよいコンテンツといけないコンテンツの見極めが必要である
・特に、消費者が作るCGMに適した見分け方を考えていく必要がある
山田氏は、以上の3つの観点でICT利活用の可能性を追求し、国民主体、さらには全員参加社会の実現を目指すべきであると強調。「3つ目のコンテンツ流通については次のセッションに譲りたい」として、第2部へバトンを渡しました。

山田氏に促される形で登壇したのは、米国NPOクリエイティブ・コモンズ アジア・プロジェクト・コーディネーターの林千晶です。林はまず、著作権の歴史を振り返り、活版印刷の発明を機に著作権の概念が生まれ、出版する側の権利から、やがてモノを書く人の権利へと変化し、1886年のスイスベルヌ条約によって世界の著作権法の基盤が出来たことを説明。
米国NPOクリエイティブ・コモンズ
アジア・プロジェクト・コーディネーター 林千晶
さらに著作権の難しさに言及し、「他の知的財産権と混同しやすく、著作権と著作者人格権の関係も難しい上に、そもそも著作物の定義自体が曖昧でグレーゾーンが大きい。そこにインターネットの普及が追い打ちをかけ、ますます著作権が機能しなくなってきています。理由は明らかで、著作権のステークホルダーがインターネットを利用するすべての人、すなわち国民全体に広がってきたからです」と指摘。
しかも、世界の中でも著作者の権利が強く守られている著作権法を持つ日本には、多くのコンテンツは膨大な数の権利者の承認を得ないとネット配信ができないという現実があります。「アメリカではこの問題をクリアするために、デジタルミレニアム著作権法のもとで運用しています。そのベースはビジネスメリットを優先させ、Webサイトに載せてしまいクレームが来たら取り下げればいい(Notice and Takedown)という考え方です。この法律自体の善し悪しはさておき、インターネット時代に新たな課題が生まれていることは確かです。」と林。
こうしたインターネットにおける著作権問題を解決するために生まれたのが、クリエイティブ・コモンズという新しい著作権のルールです。二次利用をデフォルトで“禁止”するのではなく“自由”にすることで、コンテンツ流通を促進するクリエイティブ・コモンズは、シンプルな4つの要素を組み合わせた6つのライセンス形態になっており、現在の批准国は世界52ヵ国、年間1億以上もの著作物がクリエイティブ・コモンズのライセンス付きで発表されています。
林は、世界におけるクリエイティブコモンズの活用例として、Wikipedia(ウィキペディア)」や、Yahoo!、Google、ホワイトハウス、アルジャジーラなどを例に挙げ、さらに自身が代表取締役を務める株式会社ロフトワークでも、オープンな公募や、クリエイティブなコラボレーション活動に活用し、大きな成果を上げていると説明。最後に、クリエイティブコモンズの活用がもたらす可能性について次のように語りました。
「企業が持っている情報とWebサイトに載せられる情報がイコールになりつつある中で、これからは、その情報を利用している人たち(ソーシャル)を巻き込むことが必要になってきます。情報を自社のWebサイトの中に閉じ込めてしまうのでなく、どんどん活用してもらうことで、ファンやサポーターなど外部との関係も取り込んだ新しいWebサイトの在り方が見えてくるのではないでしょうか。
ギブアンドテイク。提供がないと得られるものも限られてきます。逆に自分のノウハウを提供することによって、想像しなかった可能性を教えてもらうこともあるでしょう。しかも、世界はつながっています。私たちには日本の中で共有できる知識やノウハウがたくさんあるし、日本だけではなく、世界のために、地球のために何ができるのかを考えていくべきでしょう」。

第3部のパネルディスカッションでは、第2部に登壇した林がモデレーターを務め、民主党衆議院議員の高井崇志氏、月刊「ニューメディア」発行人の天野昭氏、東洋大学経済学部教授の山田肇氏、Web広告研究会幹事(サイトマネジメント委員長)の高橋宏祐氏をパネリストに迎えて、「政治が変わって生まれる新しいインターネットビジネス」について議論しました。
民主党衆議院議員 高井崇志氏
最初に、民主党の情報通信政策について説明を求められた高井氏は、いよいよ現実味を帯びてきたインターネット選挙に触れ、「インターネットは、政策をダイレクトに伝えるには非常にいいツール。ホームページでの情報発信にとどまらず、電子メールも解禁にし、どんなインターネットサービスでも利用を許可しようというのが民主党の考えです。ネットを使った有料広告を候補者本人に限定せず、第三者にまで解禁すべきかどうかといった議論も残っていますが、来年の参議院選挙に間に合わせるべく、公職選挙法の一部改正に向けた準備を進めています」と説明。
Web広告研究会幹事 高橋宏祐氏(左)
月刊「ニューメディア」発行人 天野昭氏(右)
これを受けて、「民主党が天下を取って政治が面白くなってきた。政治記事にも広がりが生まれ、マーケティングや広報活動にも影響を与えるようになってきています。テレビ広告の場合は瞬間芸ですが、インターネットが解禁されると、情報空間がものすごく広がっていく。公職選挙法の一部改正案にしても、インパクトがあるのは国会議員だけではありません。地方の権力にも影響を与えるし、企業にもビジネスチャンスが生まれます。私は、政治をタブーにしないということを可能にするのは、政治運動解禁法ではないかと考えています」と語ったのは天野氏です。
さらに山田氏が、「原口タスクフォースも事業仕分けもそうですが、インターネット中継され、過去の映像を見ることもできます。テレビだとある瞬間だけが切り取られて一人歩きしてしまいますが、どういう経緯でどういう結論が導き出されたのかを知ることができます。政党が考えていることをWebサイトなどで明らかにできるということは、文化形成にも役立つことです」と続けます。
しかし、ビジネスチャンスとはいえ、政治がからむと企業は引いてしまうのも事実。富士通グループのWebマスターとしての顔を持つ高橋氏は、このことをどう考えるかと問われ、「20年、30年前はインターネットによって科学技術が進化し、現在は企業経営の変革に貢献しています。これからのIT企業は、政治という領域でもサポートできるかもしれませんね。
インターネット選挙にせよ、コミュニケーション手法にせよ、ITを活用することでやりやすくなる、わかりやすくなる部分があるでしょう。障害者や高齢者など、これまでなかなか行動できなかった人、情報が届かなかった人に対して、可能性を広げることにもなるのではないでしょうか」と回答しました。
一様に新政権への期待を寄せるパネリストに、「アメリカではチェンジが起こりました。でも、日本はどうでしょう。今までにもいい流れはありながら、結局は骨抜きで終わってきた経緯があります。今回は骨抜きじゃないと言えるのでしょうか?」と鋭く斬り込む林に対し、「コンテンツの二次利用にせよ、障害者の利用にせよ、政務三役に声が届く体制ができましたし、インターネット中継などを通じて、国民が自分で判断できるチャンスは間違いなく増えてくるでしょう。何かが変わる気はしています」と山田氏。
さらに会場の注目も集まる中で、最後に高井氏が次のようにまとめました。
「一番変わったのは官僚主導ではないこと。発想そのものがガラっと変わったことが大きい。橋や道路を作るための何兆円という予算を、しっかりお金をかけるべき重要な領域に振り向けていきます。ICTは日本の産業を引っ張っていくための重要なキーワードです。インターネット選挙は必ず実現しますし、政治におけるICT活用もますます重要になります。これからも、みなさんのご提案に耳を傾け、私のような新人議員が国民の声を政務官につなぐ役割を果たしていきたいと考えています」。
何かが動き始めた日本。政治にせよ、ビジネスにせよ、多少荒っぽいことでもやらないと変わらない。そんな決意が会場に漂っていました。
日本ユニシス主催「Web戦略ソリューションセミナー」で諏訪光洋が講演
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